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日本酒専門誌「酒蔵萬流」2023年夏号 第37号 揺るがぬ覚悟(7月20日発行)

日本酒専門誌『酒蔵萬流』2023年夏号 第37号が、醸造用精米機メーカーの新中野工業さんから出版されました。

●高嶋酒造
●簸上清酒
●小林酒造
●小西酒造
●久家本店
●常山酒造
●両関酒造

今回わたしは「酒蔵紀行」コーナーで「常山」の常山酒造 (福井県)を取材担当しました。

「常山」常山酒造 (福井県)

右側が、常山酒造 社長の常山晋平くん。なぜこのポーズになったのかはよく覚えていない。。

わたしと同い年の常山晋平くん。父を19の時に亡くし、酒蔵の経営は母が中継ぎをし、晋平くんの帰りを待ちました。大関の東京営業所で営業をしていたという彼は、東日本大震災のとき、渋谷で商談中だったらしい。世の中が変わっていくのを目の当たりにして、福井に帰ることを決意しました。

リニューアルした「常山」のラベル

2011年3月11日だったので、わたしたちは26,7の年。わたしは青山一丁目で経理をしている頃でした。電車や地下鉄が止まり、3月なのにあの日はめちゃくちゃ寒くて、ハイヒールで足を痛めながら帰宅難民となり、家まで震えながら徒歩で帰ったのは今でも鮮明に覚えています。帰り道、見かけるすべてのコンビニから電池やカイロや弁当やパンが消え、棚が空っぽになっていました。余震もあり、警報が鳴り続け、テレビでは東北の津波の様子が映し出され、まるで映画みたいで、でも明らかに現実のもので。脳は受け止め切れないまま、津波警報が出続ける道南のおばあちゃんに何度も電話をするも何時間も繋がらなかったのでした。

震災後、同い年の福島の「廣戸川」や「天明」「大和川」は被災地の最前線で各々の戦いの中にいました。彼らが懸命に立ち向かう姿を見て、晋平くんもまた決意をして、蔵に入ったのです。
社会人……というかオトナになりきれない未熟で不安定な頃に震災が重なり、世界の変化とともに、自分の価値観がぐらぐら揺らぎ、なんとか踏ん張って居場所を確保してきた世代。記事を書きながら、そんなことを思い出しながら、彼の気持ちに想いを馳せました。

ところで晋平くんはなかなか笑いません。試飲会でもちょっと怖かったんだけど、取材をしてみてよくわかりました。思慮深いから、相手の言葉をよく聞いて、すごく真摯に答えようとするんです。それっぽい言葉で自分を騙したり、場をごまかしたりしない。シンプルに「かっこいい人だなぁ」と思いました。

記事を読んでもらっても、きっと彼の芯の強さが伝わると思います。一方で、最初から強かったわけじゃなくて、ここまで来るのにとっても悩み、迷ったこともわかると思います。みんなに「常山」を飲んで欲しいです。そして、この記事を読んで彼のことをもっと知って欲しいです。

ミズナラの樽に日本酒を熟成させている。
蔵のリフォーム時、2階はイベントや商談ができるスペースにした。

取材にご協力くださった皆さま、出版元の方々、制作に関わる皆さま、本当にありがとうございました。興味を持った方はぜひ一度、読んでみてくださいね。

●酒蔵萬流について

●37号のページ

●「酒蔵萬流」購入ページ
※専門誌のため誌面/web版ともにネット購入のみ


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