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8年間のインタビュー仕事のなかで生まれた「初対面の緊張をのりこえ共に言語化する」ための22個の工夫

「今空いてる?電話していい?😭」

「いやー、なんかすごい仕事でモヤモヤしてて。これを話すなら彼氏じゃないし、オタ友じゃないし、関ちゃんしかいないと思ったんだよね🙏」

学生時代からの友人からそんなメッセージをもらい、「もちろん喜んで!💪」と、すぐに30分ほど電話したのが昨日。
話の最後に「聞いてもらえてなんだか楽になれた」と言ってもらえて、信頼に応えられた嬉しさを感じました。

私が彼女の話をじっくり聞けたのは、これまでやってきたインタビューの仕事でやってきた「うまく言えないをともに過ごすために気をつけてきたこと」が関係あるかもしれないと思い、改めて言語化すべくこのnoteを書いています。

挙げてみたら22個もあってびっくり。
自分のために書き出してみたけど、仕事で初対面の人と話す機会がある人のヒントとして役立てていただけるかもしれません。

目次から気になるものだけ読んでいただけたら嬉しいです。


ポイントを紹介する前に、まず私がどんなことをしてきたか、どうインタビューに向き合ってきたかについて書きます。
よかったらお付き合いください。

一対一の視覚化で言葉を紡ぐ「可視カフェ」

話してすっきり、思考ととのう。私の好きな言葉です。

2016年の秋から始めて、今年で8年目。
可視カフェという、一対一で2時間相手の話を聞いてリアルタイムで視覚化するインタビューのサービスをライフワークとしています。
これまで約300人の思考の整理をお手伝いしてきました。

2時間でだいたいA4コピー用紙に6-10枚くらい描いています

「うまく言えない」を歓迎したい

インタビューの事後アンケートで、お客様からこんなメッセージをいただいたことがあります。

関さんの「聴きながら・場をまわしながら・描く」というスキルもめちゃくちゃすごいんだけど、私が最も「ありがたいな」と思ったのは、「うまく言葉にできない」「なんかわかんないけどちょっと気になる」といった、「自分の中で答えが出ていない状態」を常に歓迎し続けてくれたことでした。

「折角聴いてくれているのにちゃんと伝えられなくて申し訳ないな」という想いから、何度も私は「すみません」という言葉を口にしたけれど、その度に関さんが「いいんですよ、そこに重要なことが隠れてそうですね!」「可視カフェはモヤモヤしていることをそのまま伝えるところですよ!」と言ってくれて、めちゃくちゃ心がラクになりました。

「可視カフェ×Purpose Carving」

あぁ、嬉しいなぁ。
私が大切にしている「ここでは答えを急がないで大丈夫、まずは安心してうまく言えないままでいてください」という姿勢がちゃんと出来ていた、伝わっていたと言葉でもらえて、本当に嬉しかったです。

これまでのアンケートも、振り返ってみたら特に「うまく言えない」に対する姿勢が好評だったっけ。

◾️関さんが海のように広くて深い心でどしっと構えてくれてたのもよかった…ちゃんと言葉にできないの全然ウェルカムだぜ~!って感じなのすごいよかった…。

◾️自分の中でまとまらないところやイメージの浮かびにくいところも、せきこちゃんのやんわりと的確なリードのおかげで、たくさんの言葉やイメージを引き出していただきました🎶

◾️関さんとお話しているのがシンプルに楽しかったです。ずっと私の言葉を待って寄り添ってくれていたので、「全部話せた!」という気持ちになれました。いつもなら「もっとこう話せばよかった」「ここ話忘れた」と後で反省するのですが、それが無かったのが、自分でも驚きでした。

事後アンケートより

冒頭のお客様の声にあった、この部分。

「折角聴いてくれているのにちゃんと伝えられなくて申し訳ないな」という想いから、何度も私は「すみません」という言葉を口にした

たしかに、「うまく言えない」って、居心地が悪くなりますよね。

特にビジネスなど効率を重視するコミュニケーションでは、相手にうまく言葉で伝えられない時には焦りや申し訳なさを感じるし、すぐに答えが出ない曖昧な状態は自分自身も居心地が悪く、はやく答えが欲しくなります。

でも、だからこそ、私と話をする時間では心置きなく「うまく言えない」ままでいてもらいたい。

「うまく言えない」あいまいでグチャグチャな状態をじっくり向き合うことで生まれることがあるのだと、8年間インタビューでお客様の様子を見てきた実体験から確信しています。

とはいえ絡まったネックレスを焦ってほどこうとして、
かえって硬くこんがらがること、私もよくあります。

急がずほぐして、言葉の形にしていく。
「話してすっきり、思考ととのう」というキャッチコピーをつけている可視カフェはそんなサービスでありたいと思っています。

さて、ここからは私が対話のなかでやってきた、相手に「うまく言えない」ままでいて良いよ!そのまま進めましょう!と伝えるためにやってきたことを書いてみます。

◾️はじめに

1.「人間っぽい生活感のある話」をはじめに少し挟む

今日の天気、共通の知人と行ったランチの話、注文したコーヒーの感想、相手と自分が同じ色の服を着ている偶然の嬉しさ。
まずはそうした、自分の「人間っぽい生活感のある話」を最初に少しするようにしています。

ただでさえ初対面の人と話すのは緊張しやすい、そのうえ「自分の話を聞いて、絵にしてもらう」なんて、どう過ごして良いか戸惑ったりする方も多いだろうと始めました。

はじめたきっかけは以前、私がこんな経験をしたから。

・インタビュー取材での「私がなんか面白い話しなきゃ!」と、引き出される素材として力む感覚
・コーチングでの「ちょっと違うけど口を挟めないな…」という口出しができない、まな板の上の鯉な感覚

私のサービスも「話す側・描く側」と「聞く側・描かれる側」と、こちらが権威を持ってしまいがちな構造をもった行為です。

「聞き手」としての信頼感は損なわないようにしつつ、聞いてくれる人という「役割の存在」から一対一の人間同士でフラットな関係を築ける「一人の人間」になろうと努力中です。

2.(オンライン)バーチャル背景は使わないようにする

上と同じ理由で、ZoomやTeamsといったオンライン会議サービスで実施するときには、背景をぼかして使っています。

3. 違和感のフィードバック大歓迎です!と伝える

「なんかちょっと違ったけど、描かれたらそう見えてきた…」という事態を避けたいので、私が描くものの色や表情、言い換えたり要約した言葉などに少しでも違和感があったら教えてください。と最初にご案内しています。
これも、一対一の人間同士でフラットな関係を築けるようにしている努力の一つです。

4. 「グイグイリードしない/されない場だ」という認識をあわせる

相手がどれくらい引っ張ってもらいたいかの期待値をうかがいつつ、あまりこちらからリードはせず話したいことを話してもらう場であることをウェブサイトに掲載しつつ、当日も伝えています。

5. 余裕を持って時間をとる

インタビューを始めたころは、30分や3時間などいろいろな所要時間を試していましたが、不思議とみなさん2時間経った頃にだいたい「整いポイント」が訪れるので、今は2時間で設定しています。

6. 時計を見やすい位置に置く

話しているのに、めっちゃ時計をチラチラ見られたら「急がなきゃ」と思わせてしまう気がして、あまり顔を動かさないでみられる位置に腕時計を置いて使っています。

7. カジュアルな服装で

・シャツやカットソーなどのきれいめビジュアルカジュアル
・パーカーなどのカジュアル
あたりを、なんとなく相手の方の普段していることからみて選んでいます。

8.きちんと費用をいただく

少し話題は変わりますが、しっかり費用をいただいて実施することも、安心してサービスを心置きなく「うまく言えない」ままでいてもらうために大切だと思っています。
2023年から、費用はスライディングスケール制にして、受けたあとに任意の額を自由にお支払いしてもらっています。

▼スライディングスケール制にしたきっかけなど
【お知らせ】可視カフェの金額を3段階に見直しました

◾️まず、何を言いたいか自体が「うまく言えない」人には

「何について言いたいか自体もうまく言えない」という人には、まずは「急いでいないよ、ゆっくり考えてください」を、言葉や態度で伝えます。

「この話題は大事そうだ」という、相手のダウジングマシーンが反応している様子の人


そして大事なのは、それをしつつ相手が「いや、違ったな。やっぱりこれ以上は考えなくてよいな」という思った時の姿勢や目線、動きなどのサインを見逃さないこと。
サインが出ていなくても3分くらいしたら「次の話題にいきますか?なにか違う角度からもうちょっと考えてみますか?」と声かけをすることもあります。

9. 沈黙を歓迎する言葉をかける

「うまく言えなくてすみません」と言われたら、「今日はそういう日ですので!」と、沈黙を全力ウェルカムする言葉をかけます。
「そうだった、いつもとは違うんだ」「関さんのことは気にせず、自分本位でいいんだ!私はサービスを受けるお客様だった」と思ってもらえたら良いなと思っています。

10. 席を立つ(お水を取りにいく、飲み物の注文、トイレなど用事を作る)

プロ野球選手が打つ姿勢をとる間に、バッターボックスから少し離れるタイミング。あんな感じで「その場から一度離れる」ことを私がすることで、相手のモードが切り替わり、私がいないことで気が楽になってもらったら良いなと思っています。

(おまけ)
しゃべったら喉が渇くので、おかわりの水を注ぎにいくのもちょうど良いタイミングです。

11. 体の向きを少しずらす

肩と足をずらして「急かしていませんので、ゆっくり考えてくださいね」が伝わるようにしています。

あまりドーンと身体をずらしすぎると「もう知らないです、どうぞ好きなだけ」という見放しメッセージに誤解されるかも。
通路など少し空間が開けている側に5度ほど、ほんの少しだけ、というのがこだわりポイントです。

12. ペンを置く

お話をしているあいだ、私は相手の話を描くためにペンを持っています。
ただ、まったりした姿勢でも、こちらがそうやってペンを持っていると「あなたの言葉を書き留めるべく!いつでもあなたのことをI'm readlyな状態で待っています!」のというやる気満々なメッセージが誤って伝わってしまいそうなので、そんな時はペンを置きます。

13. コップを持つ

そうしてペンを置いたはいいが、両手を机の上に置いて待つのもそれはそれで圧が出る。
対面だとちょうどよく飲み物が入ったコップがあるので、特に喉が渇いていなくてもそっと手を添えることで、リラックスしてお待ちしています、というメッセージを非言語で伝えようとしています。

14. 相手を見ないで、紙を見る

「私は今までの流れをちょっと振り返っていますねー。」のような感じで、視線を机の上にある紙に持っていきます。
こちらもなにかやっている様子で安心して考えてもらえたらな、と思って始めました。

◾️そして、言いたいことはあるんだけど「うまく言えない」状態になったら

次は「何について言いたいかはわかったけど、何を言いたいか分からない」という人の時。
例えるならこんな感じでしょうか。

今後のキャリアの選択肢が
1)ここでずっと働く
2)今の仕事を続けながら、いろんな転職先を探す
3)今すぐ転職する
と3つあるのは分かった!
そのなかで私は2)みたいなんだけど、なんだか…なんかうまく言えない、言葉にしておきたいことがある気がする…

15. オノマトペや形容詞、色や形などでの表現で提案する

そんな状態の人に
「今より働きやすい職場があるか不安なんですか?」
「今の職場の方に後ろめたい気持ちですか?」
と言葉で提案すると、無理に思考を引っ張ってしまうことがあります。

そういう時にオススメなのが、言葉より解釈の幅が広いオノマトペや形容詞、色や形やイラストを使って提案すること。
相手の「うまく言えない」の核の部分を大切にしながら、ともに言葉にしたいことを探せる感じがしています。

▼こちらもオススメ
意味をひろげる「イラスト」、意味を絞る「ことば」|伝わるビジュアライゼーションのコツ(くぼみ)

16. 語尾をゴニョゴニョしながら提案する

特に言葉を提案する時には、私が発する言葉が頼もしすぎると「なんか違うような気がしたけどそれっぽい気がする」と引っ張ってしまうことがあります。
語尾を文字に起こすと、こんな感じでしょうか。
「それって⚫︎⚫︎です…か…ねぇ〜、ぅ〜ん」
なんだか伝わりづらいな…。

▼お知り合いの方へ
お会いしたら上記のゴニョゴニョをデモンストレーションするので、ぜひ言ってください。

◾️あとは最後!ぴったりくる言葉がみつからず「うまく言えない」人には

なんとなくのニュアンスまで掴めたので、あとはしっくりくる言葉を見つけるだけ!の人

17. ノリを「ちょい寄せ」して、話に着いていく

カジュアル、ハキハキ、キビキビ、まったり、しっとり。
相手の話の仕方に、なんとなく自分の声色やスピードといった話のノリを「ちょい寄せ」することで、相手が話しやすい話のリズムになったら良いなと思っています。

相手に似せる、ではく「ちょい寄せ」としたのは、あくまでも普段の自分から少し寄せる程度にしたいから。

話を聞く研修などで「信頼関係(ラポール)を築くために、話す速度や声の高さ、あいづちやうなづきのタイミングなどをあわせる(ペーシング・ミラーリング)」と言われることがあるんですが、以前すっごい「あー…めっちゃ真似してくるわ、この人…ラポール築こうとされてるわ」と気味が悪くなったので、あからさまに似せるのはしないようにしています。

18. ペンと紙を渡す

「本当は私が描くサービスなんですが、今は⚫︎⚫︎さんに書いてもらったほうがよい気がしますので、どうですか?」とご自身で書いてもらうことを提案します。

書きながら気づく、自分で紙にペンで書く身体感覚から引き出される思考ってあるんですよね。
オンラインの場合は「代筆するので言ってください!」と言葉をかけて、できるだけ自分で書いているような感覚を持ってもらえるようにします。

19. ニコニコうなずき、見守る

ペンと紙を渡したら、笑顔で見守ります。
あふれる思考を零さないようにモーレツにガリガリ書いている人にも、少しずつ確かめるように書いている人にも、「そうですそうです!良い感じです!」と全力肯定&応援メッセージが届くと良いなと思いながら、ニコニコうなずいています。

20. 抽象・具体のレベルを上げ下げする

話がもう一つ進むと良さそうだ、という状況では相手がしっくりくる抽象度、具体度のちょうどよい塩梅を探りつつ、不足している部分を補う促しをします。
イラストやイメージで可視化するというサービスの特徴が一番活きるところの1つかもしれません。まだ見ぬ未来の具体的なシーンを代わりに写真で撮ってきたかのように描いたり、表情や色や形から感情を表現したり、関係性や生態系などの図を描いたりして思考を促すお手伝いをしています。

言葉だと、
・抽象化では「つまり?」
・具体化では「たとえば?」
と問いかけるのもオススメです。

21. ふりかえりタイムを差し込み、これまでの流れを読み合わせ

て感想を聞く

上記の抽象・具体だけでなく、展開と俯瞰を加えた櫻井将さんの「まず、ちゃんと聴く」の「聴く時に有効な4つの質問」がとても良いなと思い、最近意識して会話に挟んでいます。

・展開では「他には?」
・俯瞰では「言ってみてどうですか?」

櫻井将「まず、ちゃんと聴く」P117より

私がやっているインタビューセッションだと、ちょうど途中で描いたものを見ながら「これまでのふりかえりタイム」を挟んで感想を話すので、それが話の内容を客観視して俯瞰の役割になっています。

22. 自分や知人の「ちょっと違う」具体例を挙げる

なんだか近いけれどニアピン、という時にはこちら。
ここまできたら相手から出た「言葉の種」はある状態なので、こちらから言葉の提案をしても無闇に引っ張ることはありません。

自分や知人の「ちょっと違う」ズレの具体例をいくつか出してみて、それとの違和感から、自分が考えていることの特徴を考え、しっくりくる言葉を見つけます。

「うまく言えない話」は、大切な話。

正直、フリーランスとしての売上の割合でいうと可視カフェは5%以下。
でも私にとってのライフワークで、何年たっても、おばあちゃんになっても続けていきたい、一番大切な仕事です。

「一生『可視カフェ』していたいんですよねー」と、毎月どこかで言っている気がする。

なんでこんなに好きなのか。
それはたぶんこれまで書いてきたような、「うまく言えない話」から、本人が「これだ!!」と自分でも驚くようなしっくり来て自分を力づけてくれる言葉と出会う瞬間が好きなんだと思います。

プロジェクトに入るクライアントワークと並行しつつ、この営みをもっと根拠があり説得力を持つ説明をできるように、これからも探求していきたいなぁ。

そしてこのnoteのどこかが、ここまで読んでくださったあなたの、誰かの「うまく言えない」話を聞くヒントになりますように。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
ではまた!


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