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デジタル教科書を活用した対面・遠隔併用型反転授業:西口智美先生(武庫川女子大学)

就職活動を控えた大学3年生は、グループワーク、面接などに必要とされるコミュニケーション力を高めたいというニーズがあります。西口先生は、学生が大学に求めている様々なニーズを分析した上で、対面授業と遠隔授業を併用する授業をデザインしました。グループでの発表などを通じてコミュニケーション能力が高まったと学生の評判も高いです。どのような仕組みで授業を進めたのかを教えてもらいます。


 皆さん、こんにちは、武庫川女子大学経営学部の西口です。私は『1からのブランド経営』を2年連続で経営学部3年生向けた講義に採用しております。このテキストを活用する経験と感想を皆さんと共有させていただきます。

碩学舎デジタル教育研究会で得られたノウハウの活用

 私は2022年に初めて『1からのブランド経営』を武庫川女子大学経営学部3年生の講義に導入しました。3年生に対して、このテキストをどのように活用できるのかを考える時期に、碩学舎デジタル教育研究会で、福岡大学の明神先生のデジタル教科書活用事例の発表からヒントを得ました(「対面講義でも、デジタル教科書を活用した反転学習」)。明神先生は反転授業とデジタル教科書を組み合わせたスタイルを実践し、学生主体の学びに顕著な効果を得られたことに大変関心を持ちました。明神先生の取り組みを参考しつつ、私は履修生が置かれた状況と求める学習効果を分析し、学生ニーズに合わせた対面講義のデザインを工夫しました。

大学3年生の悩み・関心事から考える

 まず、私が担当する「ブランド戦略論」が後期木曜1限目9:00から始まるという履修状況に着目しました。本学部の学生は、関西エリアの実家から通う人が多く、2時間以上通学する学生が少なくありません。夜遅くまで起きている大学生に、寒い冬の朝に早起きしてもらい、意欲的に勉強に取り組んでもらうために、学生が心から良いと感じる学習でなければいけないと考えました。
 次に、履修生が3年生であることに着目しました。3年生の後期は就職活動など大変忙しいです。インターンシップや企業説明会などに参加するため、やむを得ずに講義を休む場合もあります。この時期の大学生の特有の悩みは、就職活動と単位履修の両立です。また、就活時のグループワーク、面接などに必要とされるコミュニケーション力が主な関心事だと気づきました。さらに、秋冬の季節にインフルエンザ・コロナなどで体調を崩す学生が少なくない状況に対して、公欠や病欠などの理由で対面授業に参加できない学生も学びやすいオンデマンド式を対面授業に併用しようと考えました。

履修生のニーズに答える対面・遠隔併用型授業

 後期15回の授業を対面8回と遠隔7回に分けました。初回の対面授業では履修登録を検討する学生に対するガイダンスを中心に講義をしました。対面ガイダンスでは、反転授業とはなにか、学生がどう学んでいくのかについて、具体例を挙げて解説しました。1回目で履修確定した学生をまずチームに編成し、2回目から反転授業が実施できるように指導しました。履修検討中、履修を追加登録した学生を2回目からチームに編成し、対面・遠隔併用型授業を実践しました(表)。
 対面の反転授業では、事前に編成したチームで、担当する章の要点を学習し、講義時に発表してもらいました。同じ章を毎回2チームに15分ずつ発表するデザインをしています。同じ知識を学習しても、チームによって捉え方、解釈や説明のスタイルが異なるため、要点の反復学習と比較学習ができると考えたからです。
 一方、遠隔の反転授業では、発表チームと参加できる学生だけ講義時にオンラインで集まることにしました。発表後には教員のフィードバックと学生の質疑を行います。また、講義録画をクラスルームに掲載することで、時間制限から解放されたオンデマンド学習ができるようになりました。

表:対面授業と遠隔授業の進め方

デジタル教科書を活用した反転授業を実践した感想

 学生はデジタル教科書を活用した反転授業を通じて、自ら学ぶことのメリットに気づきやすいため、意欲的に取り組みます。教員も学生発表から学習効果を確認できます(図1)。さらに、学生はグループワークを通して、毎回学んだ理論概念を身近な実例に応用しながら考えることで、理解力を深めることができ、ブランド理論の面白さを実感できます。この授業に参加すると、聞く、考える、話す、書くなど色々な場面があり、朝1限でも退屈にならないような楽しい授業が実現できています(図2)。また、発表やグループワークで鍛えられた自分の考えを言葉にするコミュニケーション力は就職活動にも役に立つことがこの授業の魅力です。

図1:チーム発表分担メモ
図2:履修者の感想


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