時代劇レヴュー㊳:義経(2005年)

タイトル:義経

放送時期:2005年1月~12月(全四十九回)

放送局など:NHK

主演(役名):滝沢秀明(源義経)

原作:宮尾登美子

脚本:金子成人


NHKの所謂「大河ドラマ」の第四十四作目に当たる作品で、源義経の生誕から死までを描いた義経一代記である。

最初に言ってしまうと、正直色々な面で出来の悪い作品である。

設定や人物の描き方もへんてこであるし、ストーリーも中途半端で面白みに欠けていた。

序盤から、義経が平清盛(演・渡哲也)の子として育てられ、平家の公達とも顔見知りと言う無理のある設定で始まり、義経は清盛の影響を大きく受けていると言う設定が終始貫かれた。

また従来のドラマでは、冷徹な独裁者として描かれることの多かった頼朝(演・中井貴一)を、一応弟を討つことに苦悩する人物として描き、上述の平家との絡みも含めて全体的に「家族愛」がクローズアップされているが、清盛との関係にせよ、頼朝との関係にせよ、当時の「家族」や「兄弟」と言うものをあまりにも現代的な視点で捉え過ぎており、その点が無理のある設定・展開の原因であろう。

そもそも、原作の宮尾登美子が放送前のインタビューか何かで語っていたのを見るのと、義経と頼朝の関係を現代の兄弟と同じ感覚でしか捉えていなかったので、このあたりのへんてこさは原作から続いているものなのかも知れない(私は原作は未読なので確言は出来ないが)。

他にも、従来通り単なる「嫌な奴」で終わってしまった梶原景時(演・中尾彬)や、清盛を必要以上に先進的政治家として持ち上げることなど、人物の描き方には個人的には不満が残る。

後、「家族愛」をテーマに挙げていた割には、義経にとって最も親しい身内と言うべき同母兄達(阿野全成や義円)は全く登場せず、その点でも中途半端さが目立った(個人的には平家一門との変な関係を創作するくらいなら、全成くらいは登場させて欲しい所であるが)。

申し訳程度に、異父妹(父親は清盛)である廊御方は出てきたが、それもさしたる登場意義もないまま終盤ではフェードアウトしてしまっている。

本作で唯一評価すべき(?)点は、主演の「タッキー」ことが滝沢秀明が、個人の好き嫌いはあるとしても、日本人好みの伝統的義経像には見事にはまっていたことで、個人的には過去の映像化作品で義経を演じた俳優の中では一番好感が持てる人物像で、一番悲劇のヒーローの雰囲気が出ていて、英雄叙事詩の主人公としては申し分ないと感じた。

とまれ、この作品の「失敗」は、繰り返しになるが全体的な「中途半端さ」にあり、これだったらTBSの「源義経」くらいぶっ飛んでいる方がまだ面白いような気がしないでもない(笑)。

なお、宮尾登美子の原作と銘打ってはいるが、村上元三の『源義経』において創作した人物がそのままの名称で登場している(村上元三は「資料提供」としてクレジット)。


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