時代劇レヴュー㉛:国盗り物語(2005年)

タイトル:国盗り物語

放送時期:2005年1月2日

放送局など:テレビ東京

主演(役名):北大路欣也(斎藤道三)、伊藤英明(織田信長)、

       渡部篤郎(明智光秀)

原作:司馬遼太郎

脚本:宮川一郎、大石静


テレビ東京が毎年正月に放送していた12時間超ワイドドラマ、この当時の名称「新春ワイド時代劇」の第二十七作目(オリジナル作品としては二十五作目)で、テレビ東京の開局四十周年企画も兼ねている作品である。

司馬遼太郎の同名小説を原作に、このシリーズでは初登場の宮川一郎がメインライターを務め、一部大石静も脚本を担当している。

著名な原作をベテランの脚本家が手掛けただけあって、原作の雰囲気を十分に伝えた良質の作品であった。

過去に同じ作品を原作とする大河ドラマが1973年に放送されたが(道三役は平幹二朗、信長役は高橋英樹)、そちらは現在総集編以外の映像がほとんど残っていないため、2020年3月現在、『国盗り物語』唯一の完全映像化作品である。

原作が長編であるため、10時間を費やしてもなお全体的にやや簡潔にまとめすぎた印象はあるものの、テレビドラマとしての制約を考慮すれば完成度は高いと言える。

後、沢田完の音楽が頗る良い。

なお、原作が発表からかなり年月の経った小説であるため、現在の歴史認識とは異なる部分も多いが(例えば、現在は斎藤道三の「国盗り」は親子二代によるものと言う見解が一般的である)、概ねストーリーは史実に沿っている(細かい部分では時系列の乱れなどがあるが、そもそも司馬遼の原作自体に史実と異なる所が多いため、ここでは一々言及しない)。

キャストも概ねよく合っており、特に渡部篤郎は原作の光秀のイメージ通りで、伊藤英明演じる信長も、時間を追うごとにだんだん信長にはまって行く感じであった。

主役以外で特に印象に残っているのは、足利義昭役の相島一之と、斎藤利三役の大鷹明良で、特に相島の義昭は小心者で狡猾と言う原作のキャラクタをよく表現しておりはまり役であった。

これは本編とは関係ないことであるが、歴史ドラマとしてのクオリティはそれなりに高く、原作のイメージも損なっていないので『国盗り物語』の映像化としては成功していると思うものの、現在この作品を改めて見ると、やはり信長・光秀のイメージは、司馬遼のそれに倣っているために今となってはいささかステレオタイプで、その点では見ていて少し物足りない感は否めない(無いものねだりは承知であるが)。

もちろん、作品の価値を下げるものではないし、繰り返すがドラマ自体はよく出来ている。

もう十年以上も前の作品であるが、民放の時代劇がこのスケールの時代劇をまだ維持出来た最末期の作品であり、現状大河ドラマ以外ではもうこれを超える規模の作品が生まれる余地がほとんどないかと思うといささかさびしい。


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