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14.4.5 ソ連の5カ年計画とスターリン体制 世界史の教科書を最初から最後まで

世界恐慌の影響を受けなかったソ連

1922年に成立したソ連は、究極の目標である「国を廃止し、共産主義の社会をつくること」を達成するため、まずは急ピッチで工業化を進めて生産力を上げ、欧米や日本に追いつこうとする政策をとった。

だから、お金が廃止されたわけではないし、国有の企業もある。

国が国内の生産や金融のみならず貿易を管理下に置き、トップダウンで開発を進めようとしたのだ。
民間の企業活動が制限されている以上、欧米や日本など国外との取引も限定的。
食糧や鉱業原料も、広大なソ連の加盟国・地域から調達すれば済むしね。


当時ソ連の一部だったアゼルバイジャンには、世界最大の油田であるバクー油田もあった。


そういうわけで、1929年に世界恐慌が勃発したときにも、ソ連は大きな影響を受けずに済んだ。

「資本主義がぶっこわれている最中に、ビクともしないソ連は、何かとてつもなく “すごいこと” をしているんじゃないか?」と、かえってソ連への “あこがれ”や “期待” が集まったくらいだ。


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ニューディール政策と同じように、巨大な水力発電用ダムも建設された。



国際社会で存在感を高めるソ連


対外的には、ソ連は国際社会への参加を進めていく。
たとえば1934年には国際連盟に加盟することに。
アメリカ合衆国のフランクリン・ルーズヴェルト大統領の「善隣外交」政策の影響だ。


その後ソ連は、アメリカ合衆国への接近を背景として、ソ連の西側に位置するドイツ、東側に位置する日本との対決姿勢を強めていく。

たとえば、1935年7〜8月に開かれた国際的な革命推進組織であるコミンテルンの大会では、「ファシズムに対抗する方針」(反ファシズム人民戦線)が打ち出され、共産主義以外のグループとも柔軟に手を結ぶことが可能に。

1935年末以降、ソ連とソ連の友好国であるモンゴル(1924年に社会主義国になっていた)は、日本・満洲国との間に武力衝突を繰り返すようになっていく(もっとも有名なものは、この後1939年に起きることになるノモンハン事件だ)。

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アメリカにとっては、ソ連は日本の大陸への拡大をおさえてくれる重要な存在。国の「思想」(イデオロギー)の違いよりも、現実的な “地政学” を優先させた形だ。

国際的な経済危機とファシズムの台頭という情勢を背景として、ソ連は国際社会における存在感をアップさせていったのだ。


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スターリンの個人崇拝の進むソ連

しかし、国際社会の見えないところで進んでいたのは、指導者スターリンによる過酷な「個人独裁」だった。


スターリンは反対派とみなした人々に根拠なき罪をきせ、大量に投獄。容赦なく処刑した。
スターリン時代(1953年まで)に処刑された人数は、のちに(ゴルバチョフ時代になって)公式に認めたものだけでも約78万人にのぼる。

みずからを「社会主義」と、その先にある「共産主義」建設のための “聖なる指導者” として崇拝させ(個人崇拝)、スターリンに盾突く者は、早かれ遅かれ “消される” 体制が出来上がったのだ。


この体制を「スターリン体制」(スターリニズム)という。

1933年にスタートした第2次五カ年計画では、国民に日用品などの消費財がじゅうぶんに行き届くように配慮され、1936年に制定された憲法(スターリン憲法には、国民の新教の自由も規定されるなど、ソ連国民の支持を集める政策をおこなったスターリン。

しかし、実際にはその規定はほとんど守られず、ソ連の領域内のさまざまな民族の権利もないがしろにされた(ロシア語を押し付けられた)。



その背景には、国が経済活動のすべてをコントロールすることができる計画経済の仕組みがあった。
生産・流通・管理が中央政府の指令でおこなわれる以上、その命令ひとつで、誰かが得をし、誰かに損をさせることは、たやすい。

その命令の頂点にあったのが共産党(ボリシェヴィキ)だ。



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イデオロギーの時代へ

人々の“平等”を守るためとうたいながら、“自由”を奪っていたソ連。

一方、欧米や日本など、同時期の資本主義国も、 さまざまな形で“自由” にブレーキをかけ、“平等”を重視する方向に傾きつつあった。

両者の大元に共通するのは、“発展” こそが人類にとっての正義だという信念。

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「より良い暮らし」「より豊かな生活」を望まない人なんていないから、“発展”はそれ自体、確固たる信念になっていく。


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“発展”を正当化するために、「資本主義」「社会民主主義」「共産主義」「人種主義」など、さまざまな世界観や思想(イデオロギー)が導入されていく。


その背景にあるのは、科学(サイエンス)と技術(テクノロジー)の結合と巨大化だ。

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これらの体制は、科学=軍事技術を駆使して「危機」を乗り越えようと競い合い、世界の “遅れた”(発展できていない)地域を、あの手この手を使って導こうとした。

“発展”できないのは、われわれの“発展”理論を受け入れないからだ。
“発展”できないのは、敵が別の “発展”理論を、世界に感染拡大させているからだ。

人類は、「国」と「国」の争いを超え、より大きな「思想」(イデオロギー)と「思想」の争いという新しい次元に突入していくことに。

敵の「思想」そのものを抹殺するために、敵の「絶滅」が正当化される時代の到来だ。


こうして国と国との交流が冷え込む中、事態は急転。
「第二次世界大戦の勃発(1939年)」に向かって突き進むことになるよ。




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