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"教育系" note まとめ

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"教育系" noteのまとめです。
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2023年12月の記事一覧

【書評】現代アメリカ貧困地域の市民性教育改革

どんな内容の本?これまでの日本での市民性教育研究では「どんな社会科の授業を行えばよい市民を育成できるか」といった研究が比較的多くなされてきました。 しかも、そこで提案される授業は、学力の高い層に向けた授業が多くありました。 この本は、「社会科の授業に限らず、教室内外での様々な教育活動や生活経験も含めて、子どもの市民性はどのように形成されているか・どのように形成されるべきか」、「特に社会経済的に低い階層にいる子どもの市民性はどのように形成されているか・どのように形成されるべ

これまでの「かぶふら」

「歌舞伎町のフランクフルト学派」もはじめてしばらく経ち、そこそこの蓄積が出てきました。そうすると、前提が増えてきて、「名前は見たことけど一体何なの??」と思う方も出てくるはずです。名前を見てすぐ何をやってるかわからない。そう感じる方もたくさんいるでしょう(ごもっともです)。というわけで、2022年5月に始まった歌舞伎町のフランクフルト学派、通称「かぶふら」の今までの経緯をこちらに書き残していきます。「かぶふら」の文脈とか雰囲気が少しでも伝わると嬉しい! 歌舞伎町のフランクフ

「日本語は動詞中心の言語」という言説は外山滋比古のオリジナルではない(たぶん)

初稿だの明日のnoteの準備だのであまり時間が取れないので簡単になっちゃいますが(と言いながら2800字…)。結論はタイトルのとおりです。 出典の整理「日本語は動詞中心の言語で,英語は名詞中心の言語だ」という言説があります。よく引用されるのが外山滋比古(1970)『日本語の論理』です。 少し具体的にどう書かれているのかを引用します。 具体例をあげているのでそちらも。 『日本語の論理』は書き下ろしではなく,論文集で,引用部分は『言語』1972年5月号,『ちえ」1971年

2023年 親と子の間で考えたこと その1

ポップスやヒップホップを聞いている子供への悪影響を心配する親なんてほんとに余計な存在。そんなのほっといてください。子供への悪影響を心配しすぎる親は、自分自身の悪を見る目が曇っていないか疑ったほうがいいです。 「むしろ、クソみたいな、吐き気をもよおすような、残酷な世界の中にも、優しさや喜びはあるのだという矛盾そのものを子どもに見せるのが、大人の務めではないでしょうか」[親子の手帖](1/6) 子供の調子が悪い時にはどんな場所に行っても本人との特性が合わないように感じて、いろん

『進化思考[増補改訂版]』─増補改訂版の協力にあたって 監修者 公開

増補改訂版の協力にあたって 監修者 河田雅圭(東北大学 総長特命教授) 『進化思考』は、自然選択による生物進化のプロセスからヒントを得て、太刀川さんが考案した「創造性」を生み出す思考法の体系である。あくまで思考法であり、生物進化の解説書ではない。著書の生物進化に関する一部をとりあげて批判するのではなく、生物進化を理解し、応用しようとしている著者の誤解を解いてもらい、正しい理解の普及に努めるのが専門家の役割だと思う。今回は、進化に関してできるだけ間違いのない記載にしたいとい

東大理Ⅲを蹴って京大へ? 天才たちは、なぜ「西」を目指すのか|『京大合格高校盛衰史』

京都伝統校の凋落①(1991~1993年)【1991年】 1990年代前半は大学受験もバブル期を迎えた。大学、短大志望者は119万9000人、入学者は77万1000人、どの大学にも合格できなかった受験生は42万8000人となる(旺文社調べ)。団塊ジュニアが大学を受験。バブル経済絶頂期で、1人で何校も受験という状況が生まれている。優秀な受験生は競争の激化を見越してさまざまな大学を受ける。それによって難易度が低かった大学も高くなって、入りにくくなる現象がおこった。週刊誌はこう伝

「宇宙×教育」に注目! ~VUCAやSDGs、これからの時代に必要なアントレプレナーシップ

お疲れ様です。メタバースクリエイターズ若宮です。 今日は「宇宙×教育」のポテンシャルについて書きます。 宇宙商社・Space BDさんを訪問先日、Space BDという宇宙ベンチャーに訪問し、代表の永崎さんとお話ししてきました。 Space BDさんは「宇宙商社」を称するベンチャーで、宇宙に関するさまざまな事業を展開されています。 事業は3本の柱があり、ロケットで宇宙に衛星を打ち上げたり、ISSに荷物を届けたりする「宇宙インフラ事業」、宇宙でライフサイエンス製品を開発

学術書の書評を書くということ

『日本語の研究』に出した書評が公刊されました。 オンラインに出るのは刊行の1年後なのでしばらくは紙媒体のみになります。 学術書の書評を書いたのは2度目になります。慣れたわけではありませんが,どうやって書評を書く仕事をしたのか少し記録を取っておきます。 依頼を頂いてから締切までは6か月でした。当たり前ですが、本を入手して通読します。読むときのスタイルは色々でしょうが、書評を書くことが決まっていたので、適宜付箋を貼り付け、鉛筆でメモを書き込みました。 今回の本は直接メモを

ニッポンの世界史【第4回】東洋史の「再発見」 : 宮崎市定・古代文明・トインビー

宮崎市定 「ヨーロッパは後進国だ!」  戦前の日本における東洋史は、中国史のウエイトが多くの割合を占めていました。  しかし、いわゆる京都学派の宮崎市定のように、アジアが世界史に果たした役割を重視し、アジアを射程にいれた世界史を描こうとする試みも、すでに戦前からありました。  たとえば、文部省の要請により宮崎も編纂委員として関わった『大東亜史』(未完)の冒頭部分をもとに戦後刊行された『アジア史概説』は、東洋史の学習指導要領(試案)でも参考図書に挙げられています。  オリエント

ニッポンの世界史【第3回】世界史の「氾濫」

「教科世界史」は、なぜ暗記地獄化したか?  前回みたように、「科目」としての世界史は、戦後まもなくの混乱期に、学問的に深い議論が交わされることなく誕生したものでした。  そもそも学問としての世界史自体、未確立だったこともありますが、その輪郭が不確かであったからこそ、文部省の教科書調査官や歴史学者、教員、予備校講師、それに作家に至るまで、さまざまな人々の手が加わり変化し続ける余地ができた面というもあるでしょう(注1)。  とくに戦後まもなくは、教員がみずから世界史という科目

【第2回】ニッポンの世界史:日本人にとって世界史とはなにか?

「世界史」という科目は、どのようにして生まれたのか?  前回、1949年に「世界史」という科目がつくられたと述べました。  どのような経緯で「世界史」という科目が置かれたのでしょうか?  今回はちょっとお堅い内容にはなりますが、「科目世界史」がどんなふうに誕生したのか、その秘話をきちんと確認しておかねばなりません。  まずは戦後まもなくの状況を確認しておくことからはじめましょう。 戦後の新科目「社会科」  1945(昭和20)年9月2日、1945(昭和20)年9月2日、東

目標、一つ。

これからの目標。 何かしらの言葉を知っている/知らない、ということを、その人を評価する基準とするのはやめようと思う。 大切なのは、知ろうとする意志だ。 ただし、自分が知らなかったことについては、素直に恥じること。とくに、知らないくせに知っているかのように語ってしまったときには。あるいは、自分の無知が、誰か──とりわけ、社会的に弱い立場にある人たちを傷つけ、虐げてしまっていた場合には。 【自著の宣伝】 『14歳からの文章術』(笠間書院) 『深読みの技法』(笠間書院)

【はじめに】ニッポンの世界史:日本人にとって世界史とはなにか?

2010年代の世界史ブーム—疫病・戦争・生成AI  まもなく22世紀を迎える2100年の人々が21世紀初頭の世界をふりかえったとしよう。そこではどのような出来事がとりあげられるだろう?  「まもなく終わる21世紀」の幕開けにふさわしい出来事として選ばれるのは、いったい何になるのだろうか?  疫病の流行、大国による戦争、それとも生成AIに代表されるイノベーションか。あるいは気候変動、難民危機、持続可能な開発目標、新興国の台頭、あるいは権威主義やポピュリズムの拡大か—。  こう

デザイン教育と個性の尊重には、その多様性と創造性に焦点を当てるべき。

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