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2024年3月の記事一覧

#41 『本屋』と『本業』

2024年3月某日 息つく暇もない年度末、体調などを崩さないように乗り切りたいものである。忙しない状況だと、趣味である読書の時間が減ってしまい、本の手触りが恋しくなる。 … さて、全国的に書店が減少していることは周知の事実であるが、その背景にある要因としては「出版不況」が挙げられることが多い。すなわち、「紙の本が売れないから、その小売店も厳しい」という単純な話である。一方、本が読まれていないかと言われるとそうではない。実際、ビジネス賢者のみなさんは揃って読書習慣の重要性

日本人こそ見るべき映画『オッペンハイマー』に見る「21世紀の名作の条件」

海外では既に配信やブルーレイディスクが販売されてる今になってついに日本公開された映画『オッペンハイマー』を見てきました。 すごい作品だった!というかめっちゃ考えさせられる映画で。名作と言っていいと思います。 ちょっと「アメリカ人にしかわからないだろう部分」も結構あった映画ではありましたけどね。多分日本人が「関ヶ原の戦い」とか「幕末歴史劇」を見ていて、「今作は石田三成を誰が演じるのかな?」とか「なるほど今作では一部の幕臣側の影の働きかけの影響に光を当てる展開なんですね」とか

3/23(土) | 『センス・オブ・ワンダー』(筑摩書房)刊行記念ライブ

《オンライントークイベント》 『センス・オブ・ワンダー』刊行記念ライブ【出演】 森田真生 【日時】 3/23(土)19:00-21:00(開場 18:45 予定) 【参加費】 3500円(税込) (申し込み方法はページ下部に記載) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -  翻訳することは、生まれ変わっていくこと。初めて一冊の本を翻訳するという経験をして、僕はいま、そのように感じています。自

自己紹介など

はじめまして。篠原雅武と申します。 1975年生まれ。神奈川県出身。京都大学総合人間学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。著書『複数性のエコロジー』『人新世の哲学』『人間以後の哲学』など7冊刊行。翻訳書として『自然なきエコロジー』(ティモシー・モートン著)など4冊刊行。 学問研究を生業にしています。哲学を勉強し、写真や建築にも関心をもって勉強し、本を書いたり翻訳もしています。哲学的な問いをたて、それをめぐって考え、文章を書くというのが基本です。自分の問い

【2024年版】世界史教科書 消えた用語、増えた用語:山川出版社・東京書籍の比較編

これまで山川出版社の『詳説世界史:世界史探究』(ややこしいタイトルだ…)の索引をベースにして、ほかの教科書の索引の比較を試みてきた。 帝国書院の索引と比べる https://note.com/sekaishi/n/neeb8e1b5eae4 山川出版社『新世界史』の索引と比べる https://note.com/sekaishi/n/nf81a976401fb 実教出版の索引と比べる https://note.com/sekaishi/n/ned12e0c4dfbf

『にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史』レビュー

こんにちは。 私このnoteでも散々書いているように筋金入りの洋楽好きでございます。 洋楽が好きな理由は沢山あるのですが、そのうちの一つに批評的に聴くという営みがあるのです。 どういうことか?ということなのですけれど。 芸術の鑑賞には当然純粋な審美眼が必要です。 キレイな絵を見たらキレイだなと思う心や、美しい曲を聴いたら美しいなと思える心。 しかし、これ単体では芸術は絶対に成立しません。 例えばピカソの絵というのは、それ単体で見ても意味が分からないですよね。 ただキ

歯車たちのマザー・グース(1)──予兆・レトロスペクティヴ・『MGS2』について

writer:城輪アズサ はじめに:トゥルースの位相  2016年12月19日、アメリカ合衆国。その日、対立候補を破り、一人の男が第45代アメリカ大統領に当選した。ドナルド・トランプ。不動産王として知られた実業家であり、傲岸不遜で、こう言ってよければアナクロな発言によってしばしば物議を醸してきた彼の当選は後に「トランプ現象」と呼ばれ、時を同じくして出現した「ポスト・トゥルース」という言説の、主要なトピックとして分析の対象となった。  多くの識者が指摘するように、件の選

独立開業の「師匠」である、栗原哲也さんの著書『神保町有情―日本経済評論社私史―』をいただく

日本経済評論社の前・社長の栗原哲也さんから著書『神保町有情―日本経済評論社私史』(一葉社)をご恵贈いただいた。 突然に送られてきたので、本当にびっくりしたが、読み始めて、一日で半分くらいを読んでしまった。それほど面白い。 この本は栗原さんの編集者・出版経営者としての自伝であると同時に、自らが創業に参画した日本経済評論社(略称:日経評)の歴史を描いたものだ。 そして、栗原さんは私にとって、有志舎を独立開業していくにあたっての恩人であり、「師匠」だ。 私が栗原さんと出会ったのは

トラベルライター・中村洋太流 企業・メディアに喜ばれる旅行記事の書き方

「旅をして、その体験を文章にする」 一見 自由で楽しそうに聞こえるものの、実際にはどのように書けばいいのか悩むことも多いのではないでしょうか。とくに、個人の趣味で書く文章とは異なり、仕事として依頼された旅行記事となると、なおさら頭を悩ませてしまうかもしれません。 そこで今回は、旅行レポートの執筆を依頼された際に、企業やメディアから喜んでいただける視点の持ち方や書き方のコツを、具体例を交えてご紹介します。 ぼくは、旅をしてエッセイを書く「旅エッセイスト」として活動していま

SF小説自動生成GPTsを作成しました

2023年より(前身となったワークショップも含めると2022年より)御縁をいただき、東京大学大学院情報学環「講談社・メディアドゥ 新しい本寄付講座」・渡邉英徳研究室にて客員准教授をさせていただいています。 この講座では「新しい本」の姿を模索し、議論し、ワークショップをしたりプロトタイピングをしたりしているのですが、その一環として(もあって)SF小説自動生成AIをGPTsで作成しました。本稿では以下でそのツールの概要・作成経緯・仕組みの解説をしていきたいと思います。 ツールの

高野秀行さん「そうか!納豆が圧倒的に東日本で食べられている理由は…」【高野秀行×藤井一至スペシャル対談その3】

それは、2023年11月12日のことでした。ノンフィクション作家の高野秀行さんが、旧Twitter(現・X)でヤマケイ文庫『大地の五億年』を絶賛してくださったのです。編集担当が喜び勇んで著者の藤井一至さんに連絡したところ、なんと藤井さんは高野さんの本の長年の愛読者であるとのこと。これは、お二人をおつなぎしなければ……! そのような経緯で、辺境を旅するノンフィクション作家と辺境で土を掘る研究者による、学びあり・笑いありの濃い対談が実現しました。全5回にわたってお届けします。(原

【新学期】社会系授業で使えるかもしれないWebサービス50選

GISを利用したインタラクティブ・マップやウェブ上のアーカイブ、生徒が自ら使えるツールなど、オンライン上で公開されている社会系授業で使えるかもしれないWebサービスをランダムに50個集めました。 「ネタ」としての提示は "打ち上げ花火"的 なものとなりがちですが、計画とアイディア次第で地理総合、地理探究だけでなく、歴史総合、世界史探究、日本史探究、公民科においても効果的に使えるものもありそうです。 *** 1. 文化財総覧WebGIS:身近な場所の文化財の場所を見せたい

【ニッポンの世界史】#32 少女漫画がひろげた世界史の担い手:『ベルサイユのばら』を中心に

 はじめに結論から。  少女漫画『ベルサイユのばら』が、世界史をコンテンツとして楽しむことのできる広汎な読み手を育て、歴史の関わり手を男性だけでなく女性にひろげる役割を果たした。  今回ここで述べるのは、たったそれだけです。 *** 歴史を物語として楽しむカルチャー  歴史を物語として楽しむ行為自体には、口伝えの伝承や軍記物語など、それこそ長い長い歴史があるわけですが、日本ではとりわけ近世以降、商業的な出版や演劇、講談を主要なメディアとして、たとえば『三国志演義』の二

【2024年版】世界史教科書 消えた用語、増えた用語:山川出版社・実教出版の比較編

今回比較するのは、山川出版社『詳説世界史:世界史探究』と、実教出版『世界史探究』の索引です。 実教出版の用語の選び方をみるため、山川にはないが実教の索引にはある用語のうち、気になるものをピックアップしていきます。 実教出版の特徴はウェブサイトによると以下の通り。 あ 愛国啓蒙運動 愛国派  アメリカ独立戦争における愛国派(パトリオット)  アウグスライヒアウスグライヒ(訂正:2024/03/19) アタワルパ  ローラン・ビネ『HHhH』に出てきますね。  実