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世界遺産登録がもたらす地域振興の可能性 (1/5)

2018年7月、『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』が世界文化遺産として登録されることが決定した。これで日本国内の世界遺産は、18件の文化遺産と4件の自然遺産を合わせて計22件となった。
 
世界遺産とは、人類共通の財産として後世に伝えていく価値があると認められた文化財や自然環境のことだ。1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)の中で定義され、193の条約締結国(2018年2月現在)の中から毎年新たな遺跡や景観、自然がリストに登録されている。
 
世界遺産の本来の目的は、国際的な協力体制によってそれらの遺産を保護し、後世に受け継いでいくことだ。しかし、世界遺産登録の影響は、遺産に対する保護意識を高めるだけではなく、その存在を世に知らしめ、観光資源としての価値を高めることにもつながる。

 例えば、2013年に世界文化遺産に登録された『富岡製糸場と絹産業遺産群』のある群馬県では、観光客増加による宿泊業や土産品販売などへの経済効果が年間34億円と推計された(群馬経済研究所による)。

 このように、世界遺産への登録は遺産を有する地域全体にも大きな経済効果をもたらし、地域振興の可能性を広げる側面を持っている。しかし、全人類の財産として世界遺産に登録されることは、決して容易なことではない。

 今回は、外務省で世界遺産登録に携わった経験を元に、世界に価値を認められるストーリー戦略について考察したいと思う。

高橋政司
ORIGINAL Inc. 執行役員 シニアコンサルタント
1989年 外務省入省。パプアニューギニア、ドイツ連邦共和国などの日本大使館、総領事館において、主に日本を海外に紹介する文化・広報、日系企業支援などを担当。2009年以降、定住外国人との協働政策や訪日観光客を含むインバウンド政策を担当し、訪日ビザの要件緩和、医療ツーリズムなど外国人観光客誘致に関する制度設計に携わる。2014年以降、UNESCO業務を担当。「世界文化遺産」「世界自然遺産」「世界無形文化遺産」など様々な遺産の登録に携わる。
テキスト:庄司里紗






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