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アメリカ往復日記 #14|カリフォルニアの海岸を辿る大晦日

サンタモニカビーチの日の出

12月31日、大晦日。やっぱりビーチで日の出を見たかった、ということで、この日は7時に目覚ましをかけていたものの6時30分に自然に目を覚ますことに成功。ジャージ姿でフロントまで降りていくと、例のスタッフの人に驚かれたかな、そのまま朝の街へ繰り出す。

朝食は7時30分から、日の出は7時10分くらいだったから、まずはピアへ向かおうと思うと、これまた朝から道路脇の遊歩道を幾人かのランナーを見かけたり、さらにはビーチ上の舗装された道を走る方々も大勢いたりで、やはりここでも走りたい気分になって桟橋の下り坂を駈ける。

見えるのは西の空だから、海から太陽が昇ってくるというわけではないのだけれど、次第に明るんでくるその空の色は美しく、これが初日の出でないのは少しもったいないな、明日はどう頑張ってもこれ以上の日の出を拝むことはできないなと思いながらも、カメラを構えてはパノラマの写真を撮ってみたりする。ビーチにはシャワーがあって、そこから海へ続く道にかぶった砂を払っているお兄さん方を見送りながら波打ち際へ近寄ると、意外と波が高い、勢いがある。

もちろん水をかぶるわけには行かないので、波の音にしばし耳を済ませた後、来た道を引き返し先ほどの上り坂、つまり来たときには下り坂だったのだけれど、を再び駆け抜ける。ショッピングモールの様子も覗いておきたいと思ったから、とはいえ朝のこの時間だから開いていないのだけれど、といってもNIKEを覗いたくらいで朝食の時間になろうとしていたためホステルへと引き返す。桃とヨーグルトとパン、コーンフレークをたらふく詰め込んだ。

バスは8時20分にホステルの隣の通りから出る10番。これに遅れるわけにはいかないので十分に時間に余裕を持って出たものの、やはり心配になったのでうろちょろしていたが、バナナを食べ歩く日本人の女の子二人組が通り過ぎた直後、時間通りにバスはやってきた。運転手は女性、2ドルを支払い、車両中央部の左側の窓際の席へ。流れる車窓を眺めながら、昨日回った各観光地を復習するかの感じで1時間ほど、ついにUnion Stationへ到着。だいたい24時間前に、ここでちょうど偶然の再会があったわけだ。

Coast Straight号でカリフォルニアを北上

ひとまずの安心から、乗客用の座席にひとまず腰掛け、目の前の座席にスピーカーを持って音楽を流す人がいたのでかかわりたくないなと思いながら、周りを通り行く観光客の方に目をやり、ひょっとしてまた偶然の出会いがあったりして、などと思うが特に何も起こらない。ここで昼食と、ひょっとしたら夕食も買っておいたほうがいいのかなと思いながら、Famima!!へ。バナナ2本とサラダとサンドイッチを購入し、なんと2日間のうちにこのお店で6本ものバナナを買う事になるとは。会計を済ませて先ほどの座席に戻ると、これはAmtrakの乗客専用の座席という事なのだけれど、その証拠としてのチケットを見せてくれと女性係員に言われたものだから、さっきも見せたじゃないかと思いながら再び提示すると、この電車はもう乗車準備が始まっていると教えてくれたのでホームへと向かう。

向かった車両を前で車掌にチケットを見せ、座席を指定されたものだからそれに従ってみると、どうやら前から順に席を詰めさせて座っているらしく、私の右隣の窓際の席とその前の二つの席に、母親と子供たちが座っている。右にいるのは10代後半のお兄さんで、妹の面倒を見るお母さんのことも気にかけているようだ。家族の間ではスペイン語で話す彼らだったのだけれど、列車が走り出した後に、お兄さんが後ろの空いてる席に行くから、ここの二つの座席を広く使っていいよ、と言ってくれたので、これは英語だったけれど、乗務員の方に後からお咎めを受けたくないなと思いながらも、お言葉に甘えることにする。

それからというものは、昨日の短い睡眠時間のせいですぐ眠りについていたのだけれど、このCoast Straight号、海岸線近くを線路が通っていて、海や砂浜が非常にきれいに見える。13時ごろ、Santa Barbalaにて小休止したのだけれど、その後に広がる台地、その中を大きなうねりを描きながら進んでいく列車、その光景は何だか気に入った。それからというものは、どこから乗ってきたのかは分からないけれど、少し後ろのほうの座席に、WashingtonからNew Orleansまで向かうCrescent号で見かけた日本人のおっさんにもんのすごく似た人がいたけど、結局その人はSan Joseまで向かったみたいで、同一の人か真偽のほどは分からない。

San Joseで感じる大晦日への高揚

その後、バナナで空腹を持ちこたえ、20時25分ごろ、San Jose駅に到着。もともと乗ろうとしていたCaltrainは20時30分発で、あれ、ひょっとしたら間に合ったんじゃないか、と思いながらホームを移動すると、乗車券を買おうとしたところ、この時間のSan Francisco方面へ向かう電車は無料だというので、これは年越しをイベントに向けたものなのだな、と思いながら発車のホームへ向かってみると、ホームへは階段ではなく長いスロープが伸びている。駆け上がった先では、ちょうど電車が走り出したところで、同じく他に走っていた数人と、行っちゃったか、みたいな気持ちで顔を見合わせる。いや、実際Amtrakを降りるときとかもっと急いでいれば間に合ったな、という感じ。

次の電車は1時間後の21時30分発なので、その間、これまたやはり走りながらSan Joseの市内観光をすることとする。駅を出て北へ向かい、音楽が流れてくる、とあるナイトクラブ近くの路上にてWi-Fiがつながったもんだから、そこで「San Jose 観光」との検索をかけてみると、結果のトップに出てきた教会が、1時間で行って帰って来られない距離ではないということで行ってみることにする。

駅前はだいぶ何も無いところだと思っていたけれど、ある程度その名が知られたSan Jose、こんなはずではないと思ってさらに北へ向かうと、こちらが市の中心部みたい、イルミネーションやらクリスマスツリーやらスケートリンクやらが並ぶ一画の通り沿いに、目的地の教会が。かといってどうするでもないので、来た道から2ブロック西側の通りを駅の方面へ戻る。

駅に到着ののち、ホームへ向かうスロープを上っていくと、多くの若者たちが集まってきていること。彼らはみんなしてSan Franciscoへ向かい、年越しのカウントダウンなりで騒いで過ごすのだろう。今日一日中、確かに、自分自身もSan Franciscoに向かってしまおうか、という考えは常に頭の中にあったのだけれど、帰りの電車が朝になるまで出ないことから諦めて、というか日本にいるときだって別にどっかに繰り出していたわけでもないので無理するでもないかな、と納得させる。

しばらくの後、電車に乗り込む。Caltrainは意外とごつい車体をしていて、これまた座席が2階建てになっているのだけれど、上に行く気力はなかったので下の座席に腰掛けると、次の駅から乗ってきた男女4人組が反対側の4人が向かいになる座席に座ってきて、もう完全にお酒も入ってテンションも上がっている。その中の一人が、お前もSan Franciscoに向かうのか、と聞いてきたけれど、残念ながらSunnyvaleで降りるのだと答えて、しばらくの後に写真を撮ってくれと頼まれたけど、ここではちゃんと撮ってあげることとして、電車がSunnyvaleに到着してHave a nice yearと声をかけると返してくれたのでまあ悪い気はしない、どうせ向こうは覚えてないのだろうな、と思いながらホームに降り立つと、冷たい空気が顔に吹き付ける。

日本のテレビ番組で心を落ち着ける

ここでとある知人と合流し、車に乗せてもらいながらしばし通り沿いの店を覗いて周ったり旅の話をしたりで、焼肉屋さんというか石の鉄板焼きとでも言おうか、のお店に入る。ここでサーロインステーキをいただいたのだけれど、柔らかく美味しかったなあ。肉のほかにトッピングを2種類選び、ライスが無くなったということでかわりに頼んだマッシュポテトは普通の味だったけれども、フルーツ類も焼いてみるとこれまた違った味わいがあって良かった。そのほか、前菜でサラダもいただいた。

食後、今度は落ち着いてシートに腰をかけると、各所にほどこされた革の肌触りが良い。格好いい車である。HONDAだっただろうか。帰宅後、リビングのソファに腰掛け、テレビで日本語放送チャンネルをつけると、懐かしいこと、NHKのニュースを放送している。とはいっても、この時間、もう日本では1月1日の午後になっているので、初詣で賑わう各地の様子を伝えている。その後、こちらの時間で23時30分頃だっただろう、まさか今年も見ることができるとは思ってもいなかった、『ゆく年くる年』が放送されているではないか。ちょうど年明けの時間に合わせて放送されているみたいで、あ、ひょっとしたら紅白も見られたんじゃないかな、と思って番組表を探してみると、もう少しで天皇杯決勝を放送することを発見。

空気で膨らませるマットレスとIKEAの布団一式グッズで寝床を準備した後、先にシャワーを浴びさせてもらう。足元に置くヒーターがあると無いとで、だいぶ違うと言うものだからつけてみると、確かに温かい。体を洗った後、マットとバスタオルにて体の水分を拭き取り、髪を乾かすためのドライヤーのスイッチ、これは日本製のものでコンセントの先は変圧器に繋がれていたのだけれど、そのスイッチを入れたところでプツン、と電気が消えた。テレビはついていたようなのでブレーカーが落ちたわけではなかったのだけれど、原因はドライヤーとヒーターを同時に使ったことのよう。そしていよいよ天皇杯決勝の放送が始まるのでそれを見ることとして、その後、眠りに着いた。

今日の一曲

折坂悠太 - 平成
なんとなく、年末の荘厳な、けれど落ち着いた空気を感じる曲。


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