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アメリカ往復日記 #10|旅の折り返し、ニューオーリンズ

ワシントンDCからの長旅

目を覚ましたのは8時頃かと思う。朝食は、昨日購入したカレーの残りで済ませる。残りをさらに昼食へと回せるほどの十分なボリューム。右の窓際に座っていたことは覚えているのだが、それ以外は本当に記憶がない。

外の景色は、次第に南部のそれになってくる。沼が広がったり、それらしき植物が茂っていたりする。気温は確実に上がっている。やることが無いため、というわけでもないが、忘れないうちにと、ここまでの旅程の執筆活動に勤しむ。

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Virginia、North Carolina、South Carolinaを経由して、Georgia州のAtlanta駅は知らぬ間に通り過ぎてしまっていたみたいだ。12時過ぎにAlabama州のBirminghamで小休止をとる。空気は土っぽく、駅の目の前の建物の窓ガラスは割れて廃墟になっているなど、治安が良くない雰囲気が漂っている。その後も特に大きな出来事はなく、って書くのが面倒くさくなっているわけでは決してないのだよ、ここのところは本当に記憶があまりない。

行き着いたニューオーリンズ

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19時20分、New Orleans駅着。駅に掲示されたポスターにも音符が彩られており、音楽の街であることが伺える。どこで遅れを取り戻したのか分からないが、予想に反して時間通りに到着したものだから、ホステルには20:00着予定と伝えていたけれども、チェックインは後にして、そのままFrench Quarterへ向かうことにする。

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駅前にある地図で現在地を確認し、Loyola St.を東へ進む。地球の歩き方ではタクシーの利用が強く勧められていたが、その通り、なかなか危ない臭いを醸し出している街で、どこか遠くの方ではパトカーのサイレンの音が鳴り響いている。

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明日の朝、食糧の買出しを行えるスーパーを見つけた後、Canal St.にぶつかると左折。この通りには路面バスが通っているため、多少は安心して歩くことができる。

ジャンバラヤを目指す

そして早速、昨日からの楽しみであったジャンバラヤを目指して、Royal St.を奥へ入っていく。さすがは夜のNew Orleansの中心。路上にミュージシャンがいたり、音楽が漏れてくると思えば、ガラス張りになった店内で歌い踊る人々、これは何かのパーティー会場だったのだろう、スーツとドレスに身を包んだ男女が騒いでいたり。

少し奥の方まで行き、Peter St.を右に折れるとすぐ右手に見えるのが、今回の目的地、Gumbo Shop。南部料理のレストランである。店外に続くほどの行列で大盛況の様子。世界各地から人が集まっているお店だった。

列に並ぶと、しばらくして一人か二人の客なら先に案内できると言うから、自分の前に並んでいた客は皆それ以上の人数だったので、ラッキーなことに早めに席に着くことに成功。店内も賑わっていて、良い雰囲気である。

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注文はもうずっと前から心に決めていたため、迷うことなくジャンバラヤを選択。レモン入りの水とともに、長めのパンを持ってきてくれたので、バターとともにいただく。そしてメインのジャンバラヤが、長い間を置かずに出てくる。

お皿の上に二つの球状の塊として盛り付けられたジャンバラヤは、日本で見るものと同じ色をしている。山を崩してみると、ソーセージよりかはむしろエビが目立っている。脇に添えられたミニトマト、上に散りばめられたネギとともに、スプーンで山を崩して頬張る。

本当は、隣の客が食べていた、よりカレーっぽいものも、ものすごく美味しそうに見えて、これが本場のジャンバラヤなのか、と思っていたのだけれどもどうやら違ったらしく、そちらに対する未練は捨て切れなかったものの、今度は隣のテーブルに5人ほどで入ってきた家族連れの娘さんが、(彼女たちはもともとの列で私より前に並んでいた)

「君が頼んだのがジャンバラヤか、味はどうか」


と聞いてくるもんだから、本当はまだ一口くらいしか食べていない状態だったんだけれど、正直にまだあんま食べてないと言うことはせず、自信を持って

「そうだ、おいしいぞ」

と答えてやったのは良いのだが、あとあと彼女らのテーブルに運ばれてきた単品の太いソーセージが、これまた美味しそうに見えた。

さらには、斜め前のテーブルに座った男性二人がメインのほかに注文したサラダでさえも、目を向けると欲しくなってしまうものだから、自分の目の前にあるジャンバラヤに集中するのだった。もちろん味とお店の雰囲気、店員さんの態度には満足。これまた気が大きくなって、多少のチップを積んでしまう。

夜の巷を徘徊する

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それから、夜の街は危ないと分かっていながらも、せっかくここまで来たのだからと、St. Luis大聖堂へ。その周りには、まさに占い師らしき占い師たちが幾人か座っていて、怪しげな空気を漂わせる。さらにもう何本か奥へ進むと、ミシシッピ川にたどり着き、遠くに見える橋を写真におさめる。

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さすがにそろそろ引き返そうということで、大聖堂の反対側を回り、夜に最も栄える通り、Bourbon St.へいよいよ繰り出す。目に飛び込んでくるのは、Royal St.とは比べ物にならないくらいの熱気。通りのいたるところにライブハウスやクラブが軒を連ねて、音楽が外まで溢れ出ている。ただし、路地を行き交う人々にはあやしい雰囲気がつきまとう。気を抜けないなと思いながらも、余裕をかました振りをして、彼らの間を歩く。

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その中で足を止めたのは、皆40代くらいだっただろうか、男女のボーカルのほかにベース、ギター、ギター兼キーボード、ドラムの6人編成のバンドが演奏している店。チャージが無料ということもあり、立ち寄って演奏を聴くことにする。これだけ歳を重ねても、きっともちろんメジャーデビューなんかのためではなく、自分たちが楽しむことを目的として音を重ねる、そんな姿が格好よく目に映る。

と思いきや、私の立ち位置から見て一番手前、つまりはステージ下手に立つギタリストは、曲の途中だと言うのに自分のパートが無いとなるとタバコに火を付け出す。何口か吸っては、それをペグから突き出す弦の先っぽに突き刺し、再び自分のパートを演奏し始める。キーボードのソロから始まる曲では、男性ボーカル以外が皆ステージを降り、談笑しながらやはりタバコを取り出す。いくらか吸ったところで、まずはドラムが、次にギターが、と2番から演奏に参加していく。

結局、パスポートを警備員に提示して店内へ入り込み、椅子に腰掛けて演奏に耳を傾ける。まわりの客はおとなしくしながらも、瓶を手に持つのはもちろん、というかむしろ演奏を聴いているのかどうかわからないけど、曲に合わせてフロア前方で踊り始めたりする。音楽を愛する者が、やはりこの街には集まっているのだと感じた。

そして、New Orleansといえばなんといってもジャズ。これを聴かずには帰れないと思って、これまた『地球の歩き方』にて紹介されている伝統のジャズスポット、プレデンシャルホールへ向かったのだけれど、思ったのと違って予約が必要だったのか、多くの人が軒下に並んでいた。案内の女性が、なかなかきれいな人だったけれども、次から次へと押しかける客に何度も説明をしていて、そういうことなら、と仕方なくあきらめて帰ることに。

ホステルへの帰り道

帰りのBourbon St.がこれまた時間も遅くなってきたせいでより危ない雰囲気を強くさせているものだから、途中で人にぶつかったときは少しびびったな、早歩きのままCanal St.へ抜ける。そこから路線バスに乗るのだけれど、30分に1本と聞いていたバスが5分も待たないうちに来たものだからそれに乗り込み、ホステル近くのLopez St.まで行くことを運転手に確認するも、一緒のタイミングで乗ってきたおそらく韓国人の女の子(少し、綾瀬はるかさんに似ていた。New Balanceのスニーカーを履いていた。)の隣に腰掛けながら、降りる場所を逃してはいけないと標識に目をこらしつつ、意外と早くLopez St.に着いたもので、降車を知らせるためのケーブルを引っ張る。

降りると同時に、その韓国人の女の子も着いてくるもんだから、おそらく彼女も同じホステル(その名をIndian Hostelという)へ向かうのだろうと思うも、到着してチェックインの手続きをしている際に彼女のほうは2階へ上がっていくもんだから、なんだ、もともとここに泊まっていたのであれば、彼女のほうもあんなに降りるタイミングを気にする必要も無かったんじゃないかと思う。

部屋代と鍵のデポジットを払うと、受付の男性は、裸足のままシーツや布団を持って冷蔵庫やシャワーや洗濯機の場所を紹介しながら、部屋までの道のりを案内してくれる。あえて小汚さを演出しているそのホステルは、それはそれでこだわりがあるのだろうと感じた。部屋まで導かれた後は、しばしベッドに横になる。

とりあえずはシャワーだ、3日ぶりなのだから(!)と思い、同じ建物内にある個別の3つのシャワーを物色した後、そのうちの一つで汗を流す。も、乾燥のせいか、それともよく体を洗えていなかったせいか、風呂を出た後に体に痛みのような痒みがあったものだから、翌朝、時間があれば再度シャワーを浴びることを決める。ドライヤーはどうやら置いてみたいなので、髪の水分をタオルで拭き取った後は自然乾燥を待つこととし、パソコンを抱えてラウンジへ繰り出す。久々のネットにて情報を収集した後、といっても本当に必要なことって案外少ないんだなと気づかされ、しばらくの後に寝床に入り、今日も終わりを迎えた。

今日の一曲

これもニューオーリンズからストレートに連想する曲ですね。当時、ある程度は復興しているようは見えましたが。
中島美嘉 - ALL HANDS TOGETHER


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