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書評#5)トヨタ生産方式~脱規模の経営をめざして~

こんにちは。本日ご紹介させていただく本はこちら↓↓

当方の主観に基づく感想のため、一部誤った記載などもあるかと思いますが、ご理解いただけますと幸いです。

① きっかけ

製造業に勤める人間として、学んでおかないといけないと、今更ながらに思いまして、手に取りました。「ジャストインタイム」、「自働化」など、有名な言葉は知っていたものの、それが実際にどういう意味なのか、何を目指したのか、知ってみれれば、という気持ちでした。

② あらすじ

トヨタ生産方式の基本的な考え方が、どのように生まれたのか、そしてどのように発展していったのか、という流れが本書の大筋です。「生産方式」なので、もちろん製造現場の実例が多くなっていますが、ホワイトカラーに通じる考え方も述べられているので、製造業にお勤めでない人にも学んでいただけるように感じます。

一方で、書かれたのが、1978年なので、今の時代に沿わないと感じる部分があるのも事実です。その辺りは、我々が今生きている時代の状況を踏まえ、取捨選択をしながら読み解く必要があると感じます。

③ 所感

細かい考え方や仕組みは、書くことはせず、本を通じで、自分が考えさせられた点のみ、ピックアップさせていただきます。

詳細を学びたい方は、ぜひ本書を手に取り読んでみてください。


- トヨタ生産方式が目指したのは「多種少量生産」

いきなり、バカな話ですが、ここの考え方について、私自身、誤った認識をしてしまっていました。「どれだけ効率的に車を生産できるか」⇒「大量生産できるか」が至上命題の中、生まれた考えとしか思っていませんでした。

戦後、欧米ですでに確立していた、大量生産に対抗し、なんとか試行錯誤の中で見出したのが、この「トヨタ生産方式」というのです。

この考え方は、「作れば作る分だけ売れる」高度経済成長下においては、「逆行」する考え方であり、受け入れられずらいものでしたが、オイルショック後、低成長時代に突入したタイミングで、トヨタ自動車はそれでも成長を続けており、その根幹をなすこの生産システムが脚光を浴びるようになりました。


- 効率とは、けっして量とスピードの関数ではない

ヘンリーフォードの言葉ではありますが、この本の中で最もぐさりと来た言葉です。

効率を、追い求めるばかりに、人生の豊かさを失っているのではないか?とフォードは伝えています。例えば、移動についても、4時間かかって辛抱強く歩いていたのと、自動車で20分で行くの、どっちが楽でとっちがつらいか。その場所に、到着した時に、どっちがなお元気でいられるか。やや哲学的でありますが、わかる気もします。彼は、「効率とは、まずい方法を辞めて、我々が知りえる限りでの最も酔う方法で仕事をするということ」と言っています。それは、トヨタ生産方式にも通ずるものです。

上述の通り、高度成長時代には、市場ニーズが旺盛のため、作りすぎても売れる状態、すなはち、ムダが表面化しなかったのですが、低成長時代に入ると、つくりすぎを否が応でも露呈されてきます。トヨタ生産方式では、「かんばん方式」を代表とする、後工程引き取りの考え方をベースとし、市場ニーズ、すなはち、必要数に応じた生産がなされるため、作りすぎのムダが発生しないという仕組みになっています。

トヨタ生産方式は、当時、量とスピードを追い求める、大量生産の考え方のいわば、『アンチテーゼ』なんですね。

④ まとめ

全体を通して、内容そのものももちろん素晴らしいですが、高度成長期の中にありながら、「トヨタ生産方式」を確立した、ということに、学びがあったと感じます。時代の流れには、一見合わないような、考え方も、その本質をしっかり考え、認識することにより、高度なシステムを完成させたのです。

大野耐一さんはこう言います。「ただ時流に乗ることばかり考えていると、いったん量の経済が頓挫するとどういうことになるか。途端に採算が合わなくなったと、あわてふためくのは目に見えていたのである」

我々も、この変化が激しい時代だからこそ、物事の本質が何か、考え続けることを求められているのだな、と感じました。

《参考》「単語集」

■ トヨタ生産方式:「流れ作業」を基本とする「トヨタ式の作り方」と「ジャストインタイム」生産を可能にする「かんばん方式」で成り立つ。

■ ジャスト・イン・タイム:必要な品物を、必要なときに、必要な量だけ手に入れることができれば、生産現場のムダ・ムラ・ムリをなくし、生産効率を向上させることができる。という考え方。豊田喜一郎が発想。

■ 自働化:機会に人間の知恵を付与すること。機会に良しあしを判断させ、直ちに停止する仕組みを組み込んでいる。これにより、不良品の発生を防止し、作りすぎを抑制でき、また、異常を自動的にチェックすることができる。

■ 目で見る管理:前述の自働化の基本は、何が正常で何が異常化を明確にすることにある。品質で言えば、不良を表面化させ、量で言えば計画に対して、進んでいるのか、目で見てすぐわかるようにする。

■ 「原因」より「真因」:「原因」の中に、「真因」が隠れている。なぜなぜを繰り返し、真因をつかんで対策をしないと有効なアクションにはならない。

■ 生産の平準化:製品の流れ方がばらつくほど、無駄は多くなる。生産に必要な諸要素が、必ずピークに合わせて準備しなければならなくなるためである。

■ 必要数=生産量:トヨタ生産方式において、生産量とはすなわち市場の必要数である。したがって、必要数とは売行きである。


以上です。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。





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