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A confession and new threat④

6

 ゴードン、これを君が聞いていることを願う。君がこれを聞いている時私はもういない。もう私はバットマンでいることはできない。私は罪を犯した。ここではそれについて話したい。私はリドラーを追い詰めた。ゴッサムの外れの工場でだ。後は彼を気絶させるなりして、警察に引き渡せば終わりだった。君も知っているだろうが、リドラーは街中に私が自分の正体を明かさない限り、人を殺し続けると宣言して実際にその通りになった。私はそれを終わらせるためにあそこへ向かった。リドラーと対峙して、私はすぐに気づいた。彼がすでに私の正体を知っていると。そう彼はバットマンの正体に気づいたのだ。彼は、私の名前を呼んだ。そして笑った。彼は「俺がつかまって、アーカム精神病院にいくことは分かっている。でもその頃には、お前の正体は街中に知れ渡っているだろう」と言った。私はその時二つの可能性を考えた。一つは予定通り彼を警察に引き渡し、自分の正体を晒すというもの。そしてもう一つは自分の正体を守るため、リドラーをこの場で殺すことだ。奴は常に単独で動いており、誰にもこの発見を言っていないことは明らかだった。奴はそんな人物ではない。私の中には激しい葛藤があっただろうか? そう言いたいとこだが実際は一瞬だった。迷いはなかった。リドラーが私の正体を明かす気でいることに疑いはなかった。彼は勝ち誇っていて、武器さえ取り出そうとしなかった。ゴードン、私は奴のゲームに負けたのだ。私は躊躇わず彼の首に腕を回し奴を絞め殺した。奴の顔が今でも目に浮かぶ。恐怖に怯えながら、私の本名を言おうと口を動かすが言葉は出てこない。私は事を終えると、彼の遺体をその場に残したまま、次の戦い、ペンギンとスケアクロウを倒しに向かった。これが私の話だ。私は二十年間悪と戦ってきた。多くの敵との戦いにおいても私は一線を超えなかった。悪党の命を奪うことはしなかったのだ。それがこんな形で終わってしまった。私は自分の正体が暴かれる事を恐れるあまり、人を殺したのだ。ゴードン、恐怖とは常に私の中にあったのだ。それは仮面の下でずっと蠢いていた。私はもはやケープを身につけて、仮面をつけ、街のために戦うことはできない。私はヒーローでもなければ、闇の騎士でもない。ただ己の弱い心から目を背け、力を利己的な目的で使う人間だったのだ。街の中の一番下っ端の悪党でさえ、私に比べたら遥かに立派なものだ。彼らは生きるために必死だからだ。
 ゴードン、私はもういない。これから街を守るのは君のような人々だ。私のようなものは必要ない。またいつか新しい悪が現れるであろう。そしてヒーローも。その時は君が彼を導け。私のようにならせるな。街には正しいヒーローが必要だ。そして秩序が、平和が保たれる事を願う。常に弱き物たちのために。時間が迫っている。私はもう行かなければならない。行き先は誰にも言わないつもりだ。このテープはブルース・ウェインに預けておく。しかるべき時がきたら彼が君にこれを聞かせるだろう。これで終わりだ。ゴードン。これまでの友情に感謝している。私はこれからも君を見守り続ける。例え私がこの世からいなくなろうとも。


7

 部屋の中では誰も話さなかった。外の雨が激しい音を立てている。ゴードンはブルースとアルフレッドの顔を見た。ブルースは無表情だが何か懸命に堪えているようだった。

「そんな、こんなことがあるだろうか。私は、私たちは今また彼が必要かもしれないのに。誰が街を守るんだ。ヒーローはどこにいる? 悪がまた生まれようとしているんだぞ」ゴードンは叫んだ。アルフレッドはゴードンの肩に手を置き静かに言った。
「彼は勤めを果たしたのです。ゴードンさん、あなたこそが街を守らなければいけないのです。夜の闇に隠れた者ではなく、日の中でその姿を偽ることのない光の騎士が。それに新しいヒーローはいつの時代も現れます。もし彼あるいは、彼女が現れた時、私たちはそれを導いてあげなければいけません」

bブルースは静かに立ち上がり、窓の側に立った。遠くから一台の車がこちらに向かってきているようだった。雨の中に黄色のライトがきらりと反射した。それは彼が初めて、バットマンとして活動した日、高層ビルの屋上から見た、ゴッサムシティの夜の光の筋を思い起こさせた。

 突然部屋のドアを叩く音が聞こえ、ロビンとバーバラが慌てて入ってきた。「皆さん急いでテレビをつけてください。大変なことになっています」


8

 テレビの画面でニュースキャスターが喋っていた。「これは今朝われわれの元に送りつけられた映像です。ショッキングな物も含むので注意してみてください」そしてその映像が再生された。

 映像は夕方のゴッサムシティの空撮から始まった。夕焼けのもとあるビルの屋上が映し出された。そのビルのへさきには五人の人間が目隠しして立たされている。しばらくして彼らの前にある人物が歩いてきた。全身を中世の甲冑のような鎧で覆い、オレンジと黒のがっしりしたマスクをつけている。背中には長い日本刀のようなものを差している。カメラがズームアップし、その男の顔を大きく映し出した。日の光でマスクのオレンジ色の部分が燃えるように煌く。彼は刀を抜き目の前の五人の人間のうちの一人の首を切った。その首は、崩れ落ちる体から解放され、空をまった。同じことが他の四人にも続き、処刑は終わった。カメラはまたその処刑人のクローズアっプになった。そして彼が雲ぐった声で語り出した。

「これははじまりに過ぎない。私はこの街を救いにきた、私は全ての悪、不正を憎む。さっき処刑されたものは、不正を働いた議員と警察の人間だ。この映像を見ているすべての者に言う。君たちが好き放題できる時間は終わった。正しく生きろ。それが私が君たちに求めることだ。それさい守れば、私は何もしない。しかしもし君たちが何か罪を犯せば罰せられるであろう。私は悪人ではない。私は街を救いに来たのだ。私の名前は、デスストローク。今日がその始まりとなる」


9

 屋敷の呼び鈴を鳴らす音が聞こえた。ブルースは外を見ると、先程見た車が止まっていた。アルフレッドがドアを開けると、そこには一人の女が立っていた。「突然すみません。どうしてもお聞きしたいことがあって」女は早口でそう言った。「ゴードン本部長がここにいると伺いまして。いくつかお聞きしたいことがあるんです」

ブルースとゴードンも戸口に来て、女の姿を見た。ブルースとその女の目があった。
「あなたの名前は?」ブルースが尋ねた。女は目をそらさずに小さく微笑みながら答えた。
「あなたは、ブルース・ウェインね。私はゴッサムシティ新聞の記者です」そして少し間を置き名前を名乗った。

「私の名前は、セリーナ・カイル」


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