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セイタロウ
2024年8月30日 15:14
なにが悪かったんだろう。わからない。どこに行きたかったんだろう。わからない。どうなりたかったんだろう。…わからない。恋人は去った。 家に荷物を取りに来た日、「今だって──」「電話──」「──ったから」と別れる理由を滔々と話していた、はず。わからない。わからない。わからない。 わからないは、どうでもいい。と一緒だ。 …どうでもよかったのかな。わからない。 今日は最高気温39度の超猛暑日ら
2023年7月19日 06:51
たばこを吸うその人の、肩に向かって柔らかな黒い髪はまっすぐ伸びきるかと思うと、肩に着地寸前にぷわぷわっ、と少しウェーブ掛かる。こちらを少しからかうような、その少しいじわるな髪を、二人掛けのソファに座りながら指を通すのが好きだった。 初めて見たのは、しながわ水族館の「クラゲたちの世界」て名のクラゲの展示スペースでだった。閉館寸前の16時55分、まだそこに立ってミズクラゲを眺めている。ポピュラー
2023年8月4日 04:44
あ、と目をそらす。そっと視線を向けると、もういなかった。 変に思われただろうか。どうにもならないことをぼーっと考えてると、別のコーナーで魚を眺めていた恋人が遅れて横に並ぶ。 「帰ろっか」と言う微笑みに、 「そうしよっか」と返す。 次に会ったのは、ペタペタとサンダルを鳴らしコンビニから帰ってる途中だった。スイカバーをシャクシャクと食べながらLINEを返していると、溶けた緑の部分が足の指に
2023年10月3日 23:42
「わ!……あ」前を見ると半袖の黒いシャツについた赤い粒が目に入る。 「ごめんなさい」拭くものを探そうとするが、何も持ってないことに気づく。 もたもたしていると、すっと長い手が背中側に伸びてきて指先で赤を拭うと、 「あ。これくらい平気ですよ」と声が聴こえる。 水の中の空気だ、と思った。水の中の空気のように、しとやかに包む柔らかな声。 「いや、でもあの、Tシャ」 ツ。その声の主が振り返る