アメリカン・スクール

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村上春樹さんの「若い読者のための短編小説案内」で紹介され、最近だとブルータスの「村上春樹の私的読書案内。51 BOOK GUIDE」でも紹介されていた小島信夫さんの短篇集。1967年発表。

「馬」という短篇が飛び抜けて奇妙でおもしろかった。
表題作「アメリカン・スクール」は最後がカーヴァーみたいに突然おわる感じ。ちょいとコントみたいに笑える感じもあり。
「微笑」は、小児麻痺の子どもと父親の話で、今では物議を醸しそうな表現も一部あるけど、それもまた一つの家族のシーン。

なぜそれが起こるかが説明されない、という点でカフカ的だと感じたし、主人公の男性が弱々しく、強い女性から言いくるめられる的なところは「夜中のパン屋を襲うのよ」を思い起こさせる。

今一度、春樹さんの解説を読んでみた。
「若い読者のための短編小説案内」は、一般的な書評や文芸批評とはかけ離れていて、これはさすがと思いつつ、そこに春樹さんの個人的な視点が多分に入っていることには少し驚いた。特に「夫婦関係」ということに関しては、河合隼雄さんとの対談でも随分語られたし、おそらく、ねじまき鳥クロニクルなんかともつながっている(人間だものね)。

【著書紹介文(出版社Webより)】
アメリカン・スクールの見学に訪れた日本人英語教師たちの不条理で滑稽な体験を通して、終戦後の日米関係を鋭利に諷刺する、芥川賞受賞の表題作のほか、若き兵士の揺れ動く心情を鮮烈に抉り取った文壇デビュー作「小銃」や、ユーモアと不安が共存する執拗なドタバタ劇「汽車の中」など全八編を収録。一見無造作な文体から底知れぬ闇を感じさせる、特異な魅力を放つ鬼才の初期作品集。

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いろいろなことがカチリカチリと歯車のように組み合わさって行くこの令和の時代において、やっぱり一人になりたいときがあって、前よりはずいぶん時間は減ったのだけど、静かに本を読む時間というのはこれからも大切にしたい。

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