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ドキュメント72時間「長崎・五島列島 男2人のマラソン挑戦」


2019年12月末日。
職員室での林の何気ない一言がすべての始まりだった。

「平澤先生、2月に五島列島(長崎)でマラソン大会がありますよ」

面白いことは「やっちゃえ!」の我が八王子学習センター。

「どこのマラソンでも良いから、とにかく日本一取って来てー!」


の平澤センター長の一言で、ほどなく、日本全国勇者プロジェクトを立ち上げ、42.195kmを4人でつなぐリレーマラソンにエントリー。

生徒3人と林の4人が出場する―はずだった。
ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、生徒の出場が不可に。
しかし、大会は開催されるということで、同僚のH先生とともに私は一路長崎へ向かった。

ここからは、男2人が過ごした3日間の記憶である。


〇2020年2月21日

昼間の羽田→長崎便が満席だったため、福岡空港から高速バスに乗車。
長崎駅に着き、ホテルのシャトルバスに乗ろうとしところ、林が荷物を車内に忘れる失態に気づき、営業所まで走って取りに行くことに。
H先生に「当日のウォーミングアップは万全ですね」と言われてしまいました。

〇2月22日

長崎港からジェットフォイルに乗船し、福江島に上陸。
船上での2時間はあっという間でした。レンタカー屋に行くと、翌日大会に出場しそうな団体に遭遇。
「戦いはもう始まっている」とお互い合図を送るも、「ガチの陸上部出身者には太刀打ちできないよね」とH先生。せっかく車を借りたので、福江島のグルメ&自然を満喫することに。何といってもおススメは大瀬埼灯台。断崖の上に建てられており、眼下に東シナ海の絶景が広がります。都会の空気に汚された2人の心が一気に洗われたような、そんな気がしました。

その日の夜。昼食もホテルも同じ場所だった例の団体とファミレスで4度目の遭遇。そして、2人は重大な決断を下さなければなりませんでした。
そう、林が4区間すべて走るのか、2人で2区間ずつ走るのか。
話し合った結果は、「林が全区間走った方が速い」。
「ごめん」と言いつつ部屋で晩酌を始めたH先生を横目に、明日の作戦を立てます。
出した結論は「棄権覚悟で行けるところまで突っ込む」—。

〇2月23日

迎えた当日。
前日は9時過ぎに寝たため、3時30分起床でもすんなり目が覚めました。
朝シャワーを浴び、臨戦態勢はばっちりです。受付のおばちゃんには「え、おひとりで走られるんですか」。そりゃそうだ。

招集がかかり、2列目を確保すると、胸に手を当て興奮を鎮める。
そして、午前9時。
勢いよく飛びだし、50m地点ではトップでした。
(ちなみに長崎の民放ニュースにばっちり映りました笑)

序盤は面白いように足が動いた。8kmまでしか練習で走っていないのに、後先考えずとにかく飛ばす。そして、1区(9.4km)を39分40秒で走り、区間賞獲得! 
人生初の余韻に浸りたかったが、あと30km以上もあると自分に言い聞かす。

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2区(11.5km)では後半ペースが落ちたものの、沿道で声援を送るH先生にガッツポーズをする余裕もあった。後から聞いたが、中継所では襷を渡さずに爆走する林の姿を見て、「あいつやばい」とどよめきが起きていたらしい。

マラソンの女神は林に試練を与える。

25km、上り坂で足が止まった。
走ることを諦め、歩くことを選択。一人、二人と次々と抜かされていく。
さらに、ふくらはぎも吊りはじめ、痛みも出てきた。

30km過ぎ、五島つばきマラソンの最大の魅力である海沿いのコースにようやくたどり着いた。しかし、強い海風で汗が冷えてしまい、低体温症に。
警備のバイクが心配そうに、自分の横にぴったりと付く。「ここで棄権すれば楽になるかな…」と何度も思った。それでも、ゴールで待つH先生や走れなかった生徒たちを思い出し、誰も繋ぐことのない襷を握りしめて力を貰う。何度も気が遠くなりそうだったが、自分を奮い立たせ、まだ遠いゴールを目指していく。

気がつけば12km歩いていた。

ようやく、マラソンの女神が微笑み始める。

37kmあたりから足が急に動き出したのだ。
上り坂でも臆することなく突っ込み、次々とランナーを抜かしていった。ついに、ゴールの遣唐使ふるさと館が見えてきた。フィニッシュラインがどこか分からなかったため、ここまでいけば大丈夫だろうと思うところまで走った。最後の力を振りしぼり、地面に倒れた。H先生に抱え込まれ、ようやく挑戦が終わったと実感する。

タイムは3時間52分53秒。
約4時間の挑戦が幕を閉じた。

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ゴールから10時間後、羽田空港に到着した。東京に戻ってきた2人は「寒い。空気汚い。五島は良かった」と口を揃えた―。

五島の方々は本当に温かく、何度も声援に力を貰えました。
エイドでいただいた名物のかんころ餅はとても美味しく、10個以上食べたと思います。ゴール後の食事もボリューム満点で最高でした。

疲労感よりも充実感・達成感が味わえた五島つばきマラソン。
来年開催されれば、必ず参加し、あの美しい風景を生徒たちにも見せてあげたいです! 

待ってろ福江島!

そして、次こそはH先生も走ってね。

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星槎国際八王子 自称五島観光大使                                                    林 航輝


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