「木内節」はもう聞けないのか。取手二、常総で甲子園3度制覇の元指揮官、木内幸男さん死去。89歳

高校野球の楽しみに、監督インタビューがある。それに気づかせてくれたのは、木内幸男さんの巧みな話術があったから。その木内さんが24日に89歳で亡くなった。肺がんだったという。もう、「木内節」が聞けないのか。寂しさが募る。

取手二の監督時代、第66回全国選手権大会で初優勝。その時の相手が、桑田真澄、清原和博のKKコンビを擁するPL学園だった。それでも、高校野球には何が起きるか分からない。取手二が桑田を攻略して、初の栄冠に輝いたのは、番狂わせと言ってよいかもしれない。

そして「木内マジック」とも言われる名采配とともに、木内さんが魅了したのは、試合後の監督インタビューだった。

2003年に常総が夏の甲子園で初優勝した年。控え投手の飯島秀明投手が好投した試合後に、「神様、仏様、飯島様」と持ち上げたのだ。「神様、仏様、稲尾様」と言われたのは、プロ投手の話。それを、監督が高校球児をたたえて言うなんて、後にも先にも聞いたことがない。

そして、ダルビッシュがエースだった東北を下して、真紅の大優勝旗を手にする。「木内マジック」と言わしめるのは、準決勝での采配だ。

次戦の決勝はダルビッシュを打ち込まないと勝てない。それならばと、準決勝で「スクイズ封印」という作戦を取ったのだ。「明日の東北さんは投手がいいんで、打撃に磨きをかけないと勝てないということで」

湿度が高いとボールの飛距離は落ちる。その関係にも触れた。
「湿度がね、大阪はいつでも高いスけど、それでも今日は少ないほうだと。ボールが飛ぶなあ、という判断をしたもんですから」

実際に湿度の数値を見ていたかどうかは分からない。ただ肌感覚で思ったことを采配にしたのだろう。

監督を退いてからも、解説などで、木内さんの話が楽しみだった。彼の一家言は、野球に新たな見方を伝えていた。

それをもう聞けないというのはあまりに寂しい。木内さん、あなたの「マジック」は、いつまでも、私たち高校野球ファンの心から消えることはありません。ありがとうございました。

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