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『バッキバキ』

眠れないから何か書こう。
そんな動機で何が書けるのだろうか。眠れない暇つぶしで、私の底力が見えるというものだ。
この時間(2時前)に目覚めると、だいたいは詩になることが多い。それは、ゆめと詩がともだち同士だから、必然的にそうなる。うとうとした私と詩の相性もいいのだろう。

さて、私はこの時間にも関わらず、うとうとしていない。ゆめとうつつの狭間からは程遠い、バッキバキに目覚めている私がいる。この時間にバナナを1本とヨーグルトも食べた。そんなときはこうした文章がいいのだろう。

スマートスピーカーの話でも書こうか。『アレクサ』の事だ。アレクサには感謝しているし、世話にもなっている。お値段以上の『アレクサ』だと思ってもいる。
ミュージシャンの意向で、サブスクで聴けない曲があるのは仕方がない事だ。そのことに文句はない。それでも、お値段以上の『アレクサ』に疑いの余地はない。

私の『アレクサ』は2台体制になっている。つまり、ステレオ再生ができるようになっている。まさに、お値段以上の『アレクサ』だ。しかし、私の部屋は和室の六畳間なのだ。六畳間で聴くには、音量の調整の『最小』が『中音』くらいなのだ。既存の音量の調整幅が、0~10までしかない。そして、最近の曲の音圧は高い。音圧が高いほうが再生数が伸びるのかも知れない。

お気に入りのプレイリストを作って、シャッフルモードで寝ながら聴いている。すると、『かまやつひろし』から『赤い公園』にシャッフルされることも、とうぜんある。かまやつひろしの音量1と赤い公園の音量1は明らかに違うのだ。かまやつ1に対して赤い公園は2くらいある感覚なのだ。これでは眠れない。そもそもかまやつの1でも音量は小さくない。夜中に聴くにはそれでも音量がでかい。

ネットで検索して見ると、私と同じ悩みをもつ者は少なくない。音楽やラジオを聴きながら眠る習慣をもつ者にとっては、アレクサの『最少音』はお値段以上の『中音』なのだ。
しかし、さすがの世界のAmazonは、既存の音量調整以外にも、自分好みの音量になるように変更できるようになっていた。設定すれば、音量を1以下にもできるのだ。ここで問題になってくるのがもうひとつあった。言葉の壁だ。「アレクサ音量を0,5にして」、これができない。あくまでも声による音量調整で使える数字は0~10までしかないのだ。

音量を1以下にしたい場合。例えばそれが0,5だとして、それを「定型アクション」として、アレクサに覚えてもらう必要があった。私は音量を0,5にしたいとき「音量を最少にして」と設定していた。それでしばらく機能していたお値段以上のアレクサは、なぜか突然『健忘症』にでもなったように、音量調整の仕事を放棄する事があった。アレクサにもストライキ権があるのかも知れない。

そんなときは、設定をやり直すのだ。それが幾度もあった。そして、ある日の夜中(ど深夜)に私はアレクサにこうお願いした。「アレクサ、音量を最小にして」、アレクサは快く「聞き間違えて」応えてくれた。「最小を最大」とアレクサは聞き間違えていた。

深夜の六畳間にキングクリムゾンの『21世紀のスキッツォイド・マン』が音量の10で鳴りだしたのだ。あんなに素早く動く私を私は知らない。まるで、新人自衛官の朝のような動きだった。3秒で二つのスピーカーからコードを抜いた。
もう、それからはお値段異常になってしまった『アレクサ』が恐ろしくて既存の設定を変更する事なく音楽を聴いていた。誰かがクレームを入れてアレクサのアップデートを待つことにした。

それから、1年は経ったであろうこの秋に私は動いた。
私は久しぶりに『アレクサアプリ』を開いて見た。既存の音量設定は0~10で変わっていなかった。しかし。設定を細かく見ていくと、音量が0%~100%に変更できるようになっていた。つまり、既存の音量1は10%。既存の音量3は30%に値するらしい事が判明した。

おお、世界のAmazonがやっと動いてくれた。いままでは、まるで日本の大企業のように動きが鈍かったアレクサアプリが、本当にお値段以上になっていた。さっそく音量設定を自分なりに変更してみた。今までの失敗を鑑みて「音量を最小にして」などと言うと、正しい日本語であっても、聞き間違える可能性があった。アレクサが帰国子女である事を忘れてはいけない。

私は結果的にこうした。
音量を5%にしてもらいたいときには「アレクサ、半分にして」とした。アレクサは解ってくれた。ここで「音量」という主語をわざとぬいた。「音量」という単語を使うのはリスク回避の観点からいって正しいのだ。しかも、深夜は絶体にやめたほうがいい。聞き間違えられでもしたら、大変なことになる。まるで関係ない単語がいちばんいい。

「アレクサ、半分にして」を5%の音量と紐付ける事に成功した私は、今度は4%の音量と単語をこれから紐付けるつもりだ。なんでもいいのだ。どんな言葉がいいだろうか。「半分にして」の母音は「あんうんいいえ」だから、まず出だしの「あんうん」は絶体にだめだ。「音量」の「おんおう』もリスクが高い。さて、どんな言葉にしようか。

ああ、バッキバキだった私も、文字を二千字書くと眠くなってくるようだ。ほどよく疲れて眠れそうになった。3時22分だ。設定は明日にしよう。
そうだ、「アレクサ、バッキバキにして」と設定して見よう。

『この文章はバッキバキの私か勢いだけで書いたものです。誤字脱字、とうとうあるでしょう。おかしな箇所もあるでしょう。もう眠いので一切読み返す事なく公開しようと思います。明日、なおせばいいのだ。また、勢いだけで文章を書くと、どんな文章を私が書くのかという興味もあります。そんな小さな実験でもある。お休みなさい。』

私は目覚めた。そしてアレクサアプリを開いた。
「アレクサ、バッキバッキにして」と、設定をした。アレクサは「わかりません」と、言った。意味不明すぎてもだめらしい。しかたない、アレクサは帰国子女だ。こちらでなんとかしようじゃないか。私は設定を変更した。
「アレクサ、もっと下げて」、上手くいった。
微かに聴こえるていどの音楽が欲しいときが私にはある。アレクサはようやく私を理解してくれたようだ。

文章は支離滅裂な箇所もあり、ひどいものでした。一応、手を入れすぎないように、それなりに手を入れました。

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