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キュンチョメ「完璧なドーナツをつくる」&Deep South 沖縄/タイ深南部映画祭トークイベントを拝聴して感じたこと。


「行動を起こすこと」の重要さを改めて感じた2時間半でした。


「Deep South 沖縄/タイ深南部映画祭」というオンライン映画祭が開催されました。



私の目的はただ1つ。キュンチョメの「完璧なドーナツをつくる」を観ること!



キュンチョメ。それはホンマエリさんとナブチの2人によるアートユニット。


彼らとの付き合いは実はとっても長くて。2013年くらいから展示を拝見しています。彼らは作品作り合間によく私の住む東南アジアに寄ってくれました。そこでいきなり旅行に連れて行ったり、東京で会ったら一緒に釣り堀居酒屋に行ったりしてました。彼らと食事しながら作品制作の話を聞くのが本当に楽しいんです。


私が東南アジアに転居した故、会うのは東南アジアのほうが多くなってしまったのですが、私は彼らのうみ出す作品の表現の素晴らしさ、とんがりさが大好きなんですね。



彼女たちの代表作の1つである「完璧なドーナツをつくる」は私は機会を逃して観ることがなかなか出来なかったのです。新型肺炎がなかったらマレーシアに呼んで見たい!ってガチで思ってた作品でした。しかし新型肺炎によって実際に作品を観る機会がなかなか訪れず😭。そして、この様な映画祭が「オンラインで起こり」私が観ることが出来ました。本当に人生ってすごいなっ。


作品は本当に見応えがありました。彼らの作品は本当にたくさん拝見していますが彼らはマイクを向ける相手に全力で「寄り添う」んですよね。なので話す人たちの言葉に生きてる感をすごく感じる。この作品はもっと色々な場所で上映して、色々な場所で話し合われるべき作品なんだよなと改めて思いました。


そして、作品を拝見した後にトークイベント。絶対英語だと思って身構えてたらタイ語と日本語だった(FBに書いてありましたね。。読めよって感じですね。。。)


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今回のトークイベントでは沖縄とタイ深南部に関しての映像表現を通じて表現者としてその土地をどう思うか、その土地で暮らす人をどう思うか、そしてどう表現するかという意見交換が活発に行われていました。



さて、深南部とは。タイの深南部(しんなんぶ)とは、マレーシアとの国境付近、南部のパッターニー県を中心とする地域を指しています。

マレーシアでタイのイスラム教徒のアーティストの作品を拝見したことがあります。異なる宗教の中で起こる様々な衝突や思いを表現した作品に強く感銘を受けたことを思い出しました。



ちなみに今回のシンポジウムでは「日本の映像アーティストが自己紹介の後にタイの映像アーティストに聞きたい質問をする」と言う流れでした。今回キュンチョメはタイ側で参加映像作家のなかで一番若い Ameenaさんに質問していました。質問内容は


「今、深南部で生活する若い人が考える「完璧なタイ深南部」はどんなものですか?」


 

Ameenaさんは現役女子高生。彼女の意見はとても社会を見据えた前向きなものでした。

ローカルな伝統が残っていてほしい、多様なカルチャー(宗教)が平和的に共存する、お互いを差別をしない、お互いの存在に疑問を持たない。お互いが理解することは出来ることが「完璧な場所である」と思います。



そしてAmeenaさんからキュンチョメに質問。

「映画のテーマが民主化に関わるものが多いですがそれはなぜですか?」


キュンチョメの答えの要旨はこんな感じ。

日本でおきた東日本大震災が大きなきっかけ。原子力発電所の爆発によって多くの避難民が生まれた。(難民って言ってたけどシリア等の難民と福島の原発からの避難民はニュアンスが違うと私は感じたのでここでは避難民と書きました)。放射能に対する各方面の発想が違ったことに衝撃を受けました。そして当時働いていた自分は仕事を失うことが怖くて逃げられなかった。同時に「なぜ自分が逃げられないのか」ということに深い疑問を感じたんです。「逃げる」「避難する」「難民」は重要なテーマ。
そして地震は「明日全てが壊れるかもしれない」と言う体験となって自分に降りかかってきた。この体験により社会運動も含めて全ての体験が「明日私に起こること」と思って作品を作っている。


タイも軍事クーデターやテロなどもありますよね。おそらくだけどタイの視線で観ると日本は平和度が高い印象があると思うんですよね。ちなみに自分も感じるけど東南アジアでは「東日本大震災」はとても印象深い出来事。地震が制作に大きな影響を与えたという事実をこう言う場所で明確に伝えられてよかった。


政治的な視点、政治的な風潮の中での表現者としての視点をどう保つかについての議論は面白かったです。

先ほど仏教とイスラム教の共存についての理想について話があったのに「ヒジャブをつけてる女性について感じられるステレオタイプについてどう思うか」という」質問が視聴者からあったり(そしてファシリテーターがそれをピックアップしたり)していたのには攻め感を感じました。

そしてAmeenaさんは「ネガティブなステレオタイプにより嫌な想いをしたことは当然ある。でも自分はムスリム。スカーフででアイデンティティの表明が出来るのでいいと思っている」。

やはりどこの国でも「多様性とは言うけど違う人は気になる」と言うのが本音なのかもしれません。



そしてファシリテーターから 「沖縄と沖縄以外の関係性」をどう捉えていくかというど直球の質問。沖縄が対立しているのはアメリカ軍なのか、それともアメリカ軍を沖縄に集中させている日本政府なのか。この対立のトライアングルをどう捉えていくか。そして沖縄の人としても基地に関わるスタンスにより問題は日々変わっていく。

問題は日々変わっていく。沖縄生まれなのか、沖縄育ちなのか、沖縄に今住んでいるか。沖縄の対立をどの様に定義するかは個人的な立場で随時変わっていくのでは。というファシリテーターのIHARADA Harukaさんのまとめは深く考えさせられました。


ちなみにタイ側視点では深南部は住民に違った宗教がある故違ったアイデンティティを常に感じる、沖縄にはそれがないという指摘には「宗教が常に身近にある生活をしている」私としては深く頷いてしまいます。


そう、宗教ってなんか根本性があるんですよね。議論が宗教が中心になるとタイのディレクターの発言が多くなっていきます。ここはちょっと残念でした。


宗教になると日本人が話し辛くなるのは正直わかる。だからこそ宗教を文化として学ぶって今、日本人がやらなきゃいけないことなんだなと改めて思います。私は特定の宗教を信仰してないんですが、宗教にとても親密な国に暮らす様になって「宗教について学ぼう」と思う様になりました。なので現在仏教学をオンラインで学んでいます。


総合的には素晴らしいシンポジウムでした(日本側の監督さんの発言がもっとあったら嬉しかった!)。ぜひ第二回に続いてほしいと思います。


っていうかここで通訳を行った方!あなたすごいよ!マジですごいよ!感動しました。お名前とかわかんないけどでもあなたすごいよ!がどこかで伝わるといいなとしみじみ思いました。


そして今回なんですが全部の作品観れてないんですよ。。。このシンポジウムを拝聴して改めて「みておけばよかったあああ!」と思ったので、シンポジウム後3日くらい上映を延長してほしい😭と思いました。

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