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しあわせについて考えるとき、しあわせが何にハマるか考えてみることから始めてみるのはどうだろうー『魂の色は青』を感じるために黒部まで行ってきたー


自分のしあわせの形が見えないのなら、自分のしあわせがハマる体験から始めたらいい。


子供が大学生になって家を出ると、母親というのは気持ちが自由になる。今回、ずっと作品を拝見してきたキュンチョメが黒部市美術館で初めての公立美術館での個展を行うと聞いて、「オープニング行くわ」と即決。北陸新幹線でホイホイ富山に出かけた。


お散歩本当に気持ちよかったです

そしてオープニング当日、前泊した私は気持ち良い天気だったので黒部駅から歩くことにした。都会産まれ都会育ち、外国生活もちょい長めの私にはこのような散歩は気持ちの良いウォーミングアップになる。

気づいたらこの歌を歌っていた。

しあわせですか しあわせですか あなた今
何よりそれが 何より一番気がかり
みんなみんな しあわせになれたらいいのに
悲しみなんて なくなればいいのに

1982年のひめゆりの塔の映画の主題歌であるこの歌。今回のキュンチョメの展覧会の主要テーマが「しあわせ」と聞いていたから出てきたのかもしれない。


黒部市市長さん、途中から観光案内になっていて参考になりました

というわけで展示に到着。思った以上に人が続々集まってくる。そしてセレモニーには黒部市市長さんもいらっしゃっていた。


ナオナカムラ、新宿眼科画廊の時から彼らの作品を追いかけてきた。今回の個展に関しては大きな変化を感じる。今回は海、自然の中で産まれた新作でまとめられている。
自然の強さと強引さと残酷さを全て受け入れたから出てきたマインドなのかなとマレーシア生活経験者である私は想像する。
自然に身を任せる。自分は祈ることしかできないことを受け入れる。ほんまに自然に叩きのめされると、もう祈るしかなくなるんですよ。私のような東南アジアの都会に住んでた人でも、そう思うんですもの。


オープニングセレモニーの後はキュンチョメのホンマエリさんの作品に関するトーク。これがとても優しく、熱いトークでありました。

『海の中に祈りを溶かす(2022-2023)』

自然に圧倒された後に産まれる「祈り」。これは根本的な部分に降りる。幸せになれますようにって。


それにしても、この展覧会の場、本当に気持ちがいい。なぜなんだろう。と展示室を数週してる際に私は最初の作品のキャプションを読み直した。


『ヘソに合う石(2023)』

へそにはまった石。ハマる、という行為に対する1つの回答。これがもしかして、しあわせの具現化なのでは。
こうなったらいいのに、こうしたらいいのにという本当かどうかわからない情報と無責任な助言が飛び交うこの現代社会。何を投げられても自分の中でハマらない。そしてハマらない自分を責めてしまう。

そんなこと、ないのに。

でもそこでやたらめったら飛び交う情報ではなく、自分で石(意思)を拾って自分の小さな窪み(へそ)に自分でハメてみる。ピッタリハマった時に感じる小さな満足感に生きるを感じる。


これが「しあわせなのかも」。


『ためいきでうかぶ(2022)』

でも、このような方向性を明確に出すことは今の日本の展覧会である意味勇気がいることではないかと想像する。自然と共に呼吸して感じる小さな幸せ。そこから発せられる作品のメッセージはとても自然的だ。コンテンポラリーだから求められる強いメッセージ性とは違う分野。かつてのこの二人の作品にはそのような強いメッセージ性が存在していた。そして自然に叩きのめされ、それでも自然に身を委ねて、そして自然とハマった時に「ここで生きる」という道が見えてきたのかなと想像した。それをPoetryとかSpiritualと呼ぶ人もいるかもしれない。でもそれを「詩的」とか言えるって根本的に叩きのめされてない恵まれた立場だから言えるんだと思うよ。


その人が生きる場所。


彼らは生きる場所を見つけた安心感に満ち溢れているように見えた。今、そこにいないけど我々が生きるべき場所がここなんだ!としっかり宣言できる安心感。それは生きる方向を提示することにもつながる。


どうしても、どうしても今ここにいるべきなんだ。私はここで生きるべきなんだ。人には時々、そういう場所がある。「自分はここにいるべき」という判断に出会えるのって本当に少ない。とても幸せであるのだけどなかなか出来ることではない。


『いま、すべての生き物が呼吸している(2023)』この作品の横に特別ゲストの蜘蛛🕷️さんがいらっしゃいました
『洗濯物美術館(2022-2023)』は黒部駅から歩くと美術館に行く前に遭遇できます。天気がいい日は本当に気持ちがいいのでオススメです(この時は風が強かった😂)


そしてその表現を表す場としてこの黒部市美術館が選ばれたのも納得である。ここでなら表現できるというアーティストと、ここで表現してほしいとの美術館側がピッタリハマったのではないだろうか。


ここでこの表現を伝える意味と意義に関してより踏み込んだこの展覧会。一度では彼らの想いに届かないかもしれない。正直私自身も理解に届いている自信がない。でも、すごく気持ちいい空間なので、ぜひ足を運んでほしい。
同時に私は彼らがこの場所を選び、この場所でこの表現を出す場を整えたことに敬意を表したいし、その活動を支えた人々に賞賛を贈りたい。みんなしあわせになれたらいい。という祈りを堂々とするといい。


この展覧会に足を運ぶ全ての人に伝えたい。私たちは様々な生き方がある。その様々な生き方を歩んでる全ての生き物に敬意を。と。


みんなみんな しあわせになれたらいいのに
悲しみなんて なくなればいいのに


突発的に行われる「記憶のアイスクリーム」。アイスって気持ちいい思い出になるのでオススメ。

アイスの思い出とアイスを交換する「記憶のアイスクリーム」は突発的に登場するそうです。

もし、思い出がないのなら北陸新幹線乗るときにアイス買うといいよ。めっちゃカチカチなので時間に余裕を持ってね。



キュンチョメ個展 魂の色は青 2023年10月7日(土)-12月17日(日)
休館日などは美術館のWEBをご確認ください。