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箔画を間近で見たことがありますか


伝統工芸は古くて新しい。だから受け継がれ、そして未来に進んでいくのですね。


やっと憧れの場所に行くことができました。それは「箔屋野口」さんです。


さて、「箔屋」とはなんぞや?と思う方も少なくないのでしょうか?箔屋とは何をしている場所かお分かりになる方、どのくらいいらっしゃるのでしょうか?


失礼ながら私、全く分かってませんでした。西陣織と関係してるのはなんとなく分かっていたけど。。箔ってのが金箔とかの箔っていうのもなんとなるわかるけど。。金箔を作る職人さん?それと西陣織ってどう関係してるの???


では、、私がなぜ「箔屋野口」さんを訪問できたのか。それはこちらの5代目でアーティストである野口琢郎さんにシンガポール時代にお会いしたことがあったからです。


野口琢郎さん(引用:箔屋野口公式サイトより)

野口さんには「京都に来たときはぜひ箔屋野口へ」とお声掛けを頂いていたのです。ちょうど色々なタイミングがあい、伺うことができました。


ちなみに琢郎さんの作品《Landscape#35 −洛中洛外図》は京都岡崎蔦屋書店で鑑賞することができます。


せっかく訪問させてい事前に予習せねば!と思い少し早目に西陣へ。近くの西陣織会館で西陣織のお勉強をしました。

こちらの西陣織会館では西陣織の歴史、技法を展示で学ぶことができます。そのほかにも販売やイベントなども行われる場所の様です。

わかりやすいパネル(英語表記が充実)

この展示はとてもわかりやすかったです。いわゆる「機織り」のシステムなわけですが、なんとまあ複雑なことをやっておられるのか。。そして現在の機械化、システム化でこんなに複雑だってのにこれが全て手作業で行われていた時代の職人さんってのは、、とため息が止まりませんでした。

そして最後には西陣織のゆるキャラ「ニシジンくん」。この破壊力にはやられた。。。

インスタグラムもありました!


勉強した後に早速「箔屋野口」さんへ。琢郎さんと久しぶりにご挨拶。日本で会うのは実は初めてなのです。

箔屋さんの入口はとても美しい町家さん仕様でございました。ご自宅でもあると伺っていたのでどこまで写真を撮っていいのかわからなかったので写真が少ないのですが、本当に美しいお庭もありました。

西陣織で使われた金や銀の糸に箔を貼るわけですがその箔を作るのが箔屋さん。




そして琢朗さんのお父様でもあり4代目の職人、野口康先生にご挨拶させて頂き。早速「箔画」についてのレクチャーを伺いました。
階段を上がり作業場でお話を伺います。

箔屋野口については公式サイトの説明を引用します。英語の方が説明がわかりやすいのでこちらを引用。

Since its founding in 1877, Hakuya Noguchi Studio has been producing specialty yarns for kimono sashes (obi) in Kyoto’s legendary Nishijin weaving district. These yarns include such items as gold yarn as well as highly refined hikihaku weft yarn. Hikihaku is a world-renowned process that begins with large complex graphic designs made from precious metal leaf (gold, silver or platinum) affixed to Japanese washi paper with lacquer which is sliced into very narrow strips to be later woven into silk, resulting in luxurious metallic fabrics.

https://hakunoguchi.theshop.jp/about

以下:意訳
1877年の創業以来、京都・西陣で帯地用の特殊糸を作り続けてきた箔屋野口工房。その糸には、金糸や精巧な引箔などがある。引箔とは、貴金属の箔(金、銀、プラチナ)を和紙に漆で貼り付け、その箔を細長くスライスして絹に織り込み、豪華なメタリック織物を作る世界的に有名な技法である。


数々の文献や実際の箔を見ながらのお話は時間を忘れる面白さでした

今回は箔についての様々な技法を実物を交えて伺いました。尾形光琳や俵原宗達の作品の背景に使われる金箔。これって単なる背景では済まされない技術と計算が含まれていることを事例を交えて教えて頂きました。そして糸がどれだけ美しく仕上がるのか。その手順を実物を交えながら伺い学びの宝庫でした。今までなら、ああ、綺麗だなあ程度にしか思っていなかった箔でしたが、箔に視点を絞って初めて見えてくる数々の視点。これは凄い体験でした。
そして長い歴史のある京都で伝統的な手法の歴史や美意識を伺う経験はまさに特別な時間でした。このような技術を職人さんに直接伺えるのって本当に得難い体験です。

そして康先生は話すだけではなく時々ユーモア溢れる話し方で問いを投げかけて下さいます。これがまた深い。西陣織会館での直前予習が効いたのか、問いかけもクリアすることができました。(ありがとう西陣織会館!)おかげさまで話が盛り上がりまくりました。(ありがとうニシジンくん!!)、友人である琢郎さんとも楽しくお話しが出来て本当に楽しい時間でした。

間近で作品拝見が可能です

そして階下に降り、作品を拝見するスペースで過ごす時間のなんと尊いことよ。お話を伺う前は「綺麗だなあ」しか感じることができなかった作品が、どの様な技法で作られていったかを己で感じられるってすごく刺激されます。

階下で拝見できるのは箔を使って描かれた箔画です。箔画に関しては公式サイトではこのようなキャプションがついています。

In addition to their work in traditional textiles, both metal leaf masters Yasushi Noguchi (4th generation) and his son Takuro apply their centuries-old skills to creating hakuga, contemporary art works combining metal leaf with natural lacquer (tree sap).

https://hakunoguchi.theshop.jp/about

以下:意訳
伝統的なテキスタイルの仕事に加え、金箔の巨匠である野口康(4代目)とその息子の琢郎は、何世紀にもわたって培われてきた技術を生かし、金箔と天然の漆(木の樹液)を組み合わせた現代アート作品「箔画(はくが)」を制作している。

箔画は近くで拝見すると生き物のように毎回表情が変化していきます。まさに技が吹きこまれて生きているかの様でした。

大きな作品はもちろん高額ですが、高額すぎない作品ももちろんあります。
オンラインショップもあります。

でも、オンラインショップの作品は一部なんですよ。。
実際に拝見するとちょっと頑張れば手が届く作品もあります!


4代目、5代目の作品が数多く並んでいます。もちろん解説もして頂けます。素敵な時間!


伝統工芸を自分のコレクションにできるって素敵ですよね。そして伝統工芸もこのように自分の作風を自分の場所で自分のプロデュースで販売する。このシステムもとても素晴らしいですよね。こうやって技術が次の世代に渡っていくのは素晴らしいなあと感じました。

訪問はほとんど外国のお客様だそうです。正直、一見さんではちょと行きにくい(要予約、有料)かもしれません。基本1日午前午後1組受付なので希望の日に行けるかどうかは問い合わせてみないとわかりません。
しかし、伺うチャンスの扉が開いたら絶対に行くべき場所です。
もし、心が動いたらぜひ、サイトでまず問い合わせをして頂きたいと思います。(個人の運営なので時間に余裕を持ってお問い合わせをお願い致します)。


あまりに楽しくて、行きに使っていた傘を忘れました😅。次回は傘を取りに行く!を理由に再訪する予定です。ありがとうございました。