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文化と食と、そして未来と。 〜クリームソーダを飲みながらKLでJ-POPと文化伝承について考える〜


文化って色々な形で引き継がれていくべきだと思うのです。


東南アジア生活が長くなり、手抜き自炊の腕も上がり、コロナ禍故「調理家電爆買い」を誰からも止められなかった私。食に関しては元々少食でもあったけど、1つ、どうしても譲れない願いがあった。それは


クリームソーダが飲みたい!!!


東南アジアには気がつけば2014年から生息しているが、いわゆる「クリームソーダ」になかなか巡りあえなかった。別に難しいものを求めているのではない。いわゆる日本のレトロな喫茶店で出会うようなクリームソーダ。これをお店でどうしても飲みたかったのだ。


対して甘党でもない私がなぜ「お店の」クリームソーダを欲したのか。それは


クリームソーダは「J-POP文化の象徴の1つじゃね?」と思ったから。


そう、私は文化に飢えていたのだ。


日本から拠点を移し、コロナ禍で日本に帰れない日々が続くといきなり強い郷愁が後頭部を殴られる様な「衝撃」でやってくることがある。私の場合は「クリームソーダ」だった。


コロナ禍が予想以上に長期化になり、家に強制的に滞在させられる期間が増えた。家から出てよくなった状況になっても行動制限があり、行動のためにワクチン接種があり、と色々な状況の変化があった。正直、めっちゃしんどかった(そして今でも正直しんどい)。


そのような状況が続くと私自身が意識が時々「飛ぶ」ようになった。あ、薬もやってないし飲酒もしていないので心配ご無用。この「飛ぶ」というのは「急に昔の風景を思い出す」状況のことだ。


ここで急に思い出される昔の風景というのは「全く特徴のない風景」。観光で、とかイベントで、とかそういうものはなく子供の時の登校風景とか、どこかに遊びに行った時の帰り道で歩いた住宅街とか、本当に何気ない風景だ。


そういう風景を思い出すと、一緒に曲が流れてくる。私の場合、大抵はJ-Popだ。それはそうだろう。それは私が幼少時代、友人が少なくラジオをよく聴いていたから。流れていた曲は日本のラジオでかかっていた様な曲だ。


その時に流れていた曲は、何十年も後になって自分の中で再生されるのだ。コロナ禍になって知った。私だけかもしれないけど。


KLで1年前にオープンしたSakana Japanese Diningさん。私が以前親子でシンガポールで展示をお手伝いした経験がある建築家である佐野文彦さんがお店の内装をデザインされている。その関係でお店に早々に足を運ばせて頂いた。


おいしい食事にとてもびっくりした。同時に私が強く衝撃を受けたのがこのクリームソーダだった。


ちなみにクリームソーダはロックダウンの最中も生き残り、現在も人気メニューである。



Sakana Japanese Diningさんのクリームソーダを飲んだ時の衝撃は凄まじかった。それは山手のドルフィン強烈に思い出させるものだったからだ。


若い人は知ってるだろうか。


このとても上品な洋食レストラン「ドルフィン」。ここは私のようなバブル世代の聖地であった。まずはこの曲を聴いてほしい。



松任谷由実さんの「海を見ていた午後」。荒井由実時代の2枚目のアルバム「MISSLIM」に収録されている。

注釈:ちなみに「タイトルは「MISS SLIM」の造語。「Muslim」とは何も関係ない様です。


この曲の歌詞にこんな一節がある。


ソーダ水の中を
貨物船がとおる
小さなアワも
恋のように
消えていった


この一節を聞きながら恋に憧れ、そして恋に敗れ、そして新たな恋を探す文化に浸る。ソーダ水の中には宇宙があった。


松任谷由実さんはバブル世代からするとまさにその時代を表す語り部だった。彼女の紡ぐ歌詞に出てくるような女性になりたい、と多くの女性が思ったものだ(と思われる、全員じゃないと思うけど)。

そう、まさに日本がほんまに元気だった時代。

私は(今もそうだけど)当時、女子学生の割には相当変わった音楽の趣味で「ポッパーズMTVをこよなく愛し、ロッキンオンを一生懸命読むような子だった。当然音楽の趣味がが合うような同級生は、もちろんいない。同時に自分の信念を公に貫くほどの意思の強さもなかった。よって皆が聞く曲も一通り抑えていた。松任谷由実さんはよく聴くアーティストの一人。その中でとてもよく覚えていたのが荒井由実さんの「海を見ていた午後」だった。


松任谷由実さんの世界観は「日本が経済的に元気だった頃の女性感」を分かりやすく表現してると個人的に感じている。この時代の「女性が女性自身で女性を押し出す」文化。これはとても特徴的だったと思う。いわゆる「月9」ドラマの文化だ。

話は脱線するけど、息子が大人になる頃には(以前はタバコのCMがかっこいいと思われていたけど放送されなくなったように)アルコールのCMも見れなくなる可能性がありますね。無くなる可能性があるからこそ「こういう文化があった」と伝えていきたいですね。。。



このユーミンの表現する文化は当時圧倒的に支持された。同時に今振り返ってみると、現在のフェミニズム思考と相反する部分が多い。だから日本では欧米スタイルのフェミニズムが穿った見方で受け入れられる傾向が強いのかもしれない。興味を感じてくださったらぜひ下記の酒井順子さん著の「ユーミンの罪」をお勧めしたい。特に若い人。上の世代の女性の感覚の由来が少し見えてくるかも。


クリームソーダは別に女性だけが飲むものではない。鈴木雅之さんだってクリームソーダを飲んで菊池桃子さんを「渋谷」で待っていた。



この時の渋谷駅は、もうこの世に存在しない。あの時の日本が存在しないように。


食と音楽、そしてそこから連想する文化、これは古典的な文化とは別に「今生きてる文化」としてどんどん体感すべきだと思う。体感すべき文化は素晴らしい。だって食べるってまさに五感で感じることでしょ。文化を五感で感じるって最高の贅沢。最高に豊かであると私は考えている。


私には15歳の息子がいる。彼は2014年から東南アジア生活。気がつくと東南アジアでの生活の方が長くなろうとしている。彼の中の文化的アイデンティティがどのような形で形成されているのか、正直私には完璧にはわからない。

ただ言語に関しては英日、ほぼ完璧に使い分けられるようだ。英語とほぼ同じように日本語での本も映画もドラマもアニメも音楽も理解できているように見える。だから私は彼に「日式の食事(和食も洋食も含む)」の良さを伝え続ける。なぜなら文化で出てきた食を実体験することで彼の中の文化がより深まると思うから。


もちろん自分でも食事は作る。同時に「食べにいく食事は五感を感じる文化」であると感じている。これから海外で生活する日本人は益々増え、そしてその日本人の子供たちは日本に行かずに日本文化に触れることが増える。もちろん現地に溶け込んだ日本食文化もとても重要ではある。同時に「これだよこれ」という日本の洋食文化を前世代が大事に伝承していくのも大事な文化伝承だ。


いつの日か、彼は母親である私ではなく別の友人、彼女、恋人、そして家族と食事に行く様になるだろう。その時に何を選ぶか、体感してる文化(食べたことがある食事)が多ければ多いほど選択肢が、文化が広がる。楽しいじゃないですか。


なので私は海外で日本人が日本食を食べに行くことをとても推奨したい。海外で食べる日本食最高。なぜならその行為は「文化伝承」だから。


次は何の文化を伝承していこうかと考えてた結果ターゲットは「日式パフェ」になった。そう、80年台のJ-POPでガンガン出てくるような喫茶店、「ハートカクテル」で恋人同士が食べる様な「パフェ」だ。



パフェに関しては一度自作を試みたが、「日式パフェは少しづつ多くの材料がいる」ことがわかった。そしてパフェは家では食べた後急いで食べないと原型を留めないことはわかり自作は早々に諦めた。



パフェはどこにあるの。。って思ったら。


Sakana Japanese Diningさんで12月から1周年記念のイベントの一環としてなんとパフェが始まった。Sakanaだからたい焼きが乗ってる。

今日は急遽行ったのでパフェには出会えなかった😅。けどわらび餅を頂くことが出来た。とってもおいしかった。


また、新しい文化伝承の機会が見えてきた。私はこのパフェに出会えた夜に、息子にこの曲を聴かせようと思っている。