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「子供連れで美術館問題」において私たちが向き合わなきゃいけない一番大事なことを子連れ鑑賞歴17年の俺に語らせてくれよ、そして。

本当に、本当にお待ち申し上げていました。
Tokyo Art Beat「子連れ美術鑑賞についてのアンケート」。


 まず結果を公表して下さった事に深く感謝したい。正直、対立構造にせずまとめるの、とてもしんどかったと思う。
まとめにくいコメントもあったと思う。本当にありがとうございます、という気持ち。
 
正直、集計しただけで終わってしまう可能性も高かったと思っていた。
なぜなら相当まとめにくいコメントがあったのではないか?と思っていたから。

私、子連れで美術鑑賞を17年ほど続けて来ました。

この件については語り始めると10時間ほどかかってしまいそうなので、今回はアンケートについて思ったこと、次の手を自分なりに整理してみたい。
長くなってしまったけど、よろしくお願いします。


1:こうだろうと思っていたこと、思ってたんと違うこと、そして書けなかったことを推測する

まず700人以上の方のコメントに感動。皆さんご意見あったのだろうなと。
そして各項目の数値が出ていない点に注目した。
 
事例が上がっているのは良いと思う。ちなみに「嫌な思いなどをした要因として挙げられたのは、ほかの鑑賞者の言動」で私の事例も上がっている。

せっかくなので思い出してみた。

こちら子供が幼稚園の時、東京国立博物館の「常設展」で子供と一緒に写真を撮っていたら「写真を撮ってはダメだろう!」といきなり怒られたのですね。ちなみにトーハクの常設展は基本撮影可です。その旨を伝えたところ、「あの団体に撮影を止めさせたかったのだ!」とのお返事。背後には大声で楽しむ外国の方の団体がいました。
だったら直接言えばいいじゃないか、と言いたくなりましたがここで喧嘩を買ってはいけないので「常設は基本撮影可能です。注意したかったら係員のところに行きましょうか」とお誘いしたら「もういい!」と怒って行ってしまいました。その間同行の女性は無言でした。

書き出しただけでもちょっとイラッとする。この時の男性は「外国人団体に気づいてもらうために私たち親子を利用した」わけだ。結果的にその行為は何の意味もなかったわけだけど。

もう少し読み進めてみよう。私は係員の方にマンツーマンディフェンスをされたことはあまりないが、マンツーマンディフェンスで嫌になった人は結構聞く。
 
そして日本の美術館での鑑賞において子供を連れた保護者が一番気にするのは「他の大人」であるのは私が初めて問いかけをした時から全く変わっていない。アンケートからも出てる。(このアンケート取ったの2016年よ!)

この様な寄稿もした。ここでサムネイルで登場しまくってる息子さんは現在大学2年生。。。そりゃ私も歳をとるわけだ。

息子は成長し、私は歳をとった。なのに子供を連れた美術鑑賞に関する見解はどうしてこんなに変わらないの。
 
そしてアンケートにて予想外だったのは具体的加害のエスカレートさ。加害に関しては二度見三度見してしまった。これって美術館に限らず公共の場で行われたら逮捕案件。美術館とか関係ないと思うよ。
同時にここには記載されていない「大声で注意される」「見知らぬ他人に急に怒られる」等は相当多かったのでは。
 
これは私の想像だけど、アンケートコメント自体は全体に記載できないような強いコメントが多かったのでは。だからまとめるのに苦労したのでは、と推測。
本当にありがとうございます😭。
 

2:鑑賞の環境は本当に良くなったと子連れ美術鑑賞老人会古参会員は叫びたい

ここで改めて主張したい。「私がベビーカーで美術館を訪れていた時」から子供や高齢者、ハンディのある人を迎える為の美術館は環境を確実に改善してきている。ここで昔の苦労話をするのではなく、私はこの改善されてきた点について強く言いたい。本当に良くなったのよ。気がつき辛いかもしれないけど。
でも気が付かないのもわかってきた。なぜなら、ベビーカーと共に美術館を訪れてきた人たちの存在は全然見えないものだったから。

子連れ美術鑑賞老人会(今作った)から言わせて頂けば本当に状況は良くなった。そしてそれは18年より前からずっと小さな声をあげ続けた親御さんたちの歩みである。(なぜ18年か。それは私が子育て18年目だから。そして私より前から活動されている人も沢山いらっしゃるから。)
その小さな活動は小さな声を発して、届けることから始まった。弱い立場の人でも美術館に行きたい、そのためには具体的に何が出来るか、出来ることから活動してきた。私はその活動に深い敬意を感じる。
私自身も今聞こえる声に耳を傾け、声を発した人が悲しい思いをしないように実現に向けて自ら実行したい。
 

3:対立構造を避ければ避けるほど見えてくる仮想敵

今回やはり気になるのは「怒られた」「怒られることが怖い」そして「子供や保護者に怒りたい」という怒りの視点。

私は美術が大好きだし、美術に救われたと思っている。だから子供と一緒に自分の好きな美術を観たいと思うことは自然なこと。
しかし、このアンケートから目立つのは「怒り」。悲しい。
でもここで悲しんでいるだけなら状況はわからないし、変わらない。この怒りを消すには、この怒りを分析せねば。
 
なぜ、そんなに子供連れに怒るのだ。一体何にそんなに怒るのだ。
あなたの仮想敵は一体誰ですか。

私は「日本で子供連れの鑑賞者に他の鑑賞者で怒る人は「子連れ鑑賞者は子供料金を払ってないからイラっとするから怒っている(高齢者は料金を払っていると認識している)からではないか。という仮説を立てたことがある。


「子連れの子供、もしくは保護者がなぜ怒鳴られたか」ではなく「怒鳴った側がなぜ怒ったか」。ここに注目すべきだと思う。まず状況を整理せねば。怒る側は誰の何に対して怒るのか。アンケートのコメントからの印象で理由を箇条書きにしてみた。

1:「公共の場において行ってはいけないこと」実施時を目撃したから子供または保護者を怒った
2:「公共の場において行ってはいけないこと」を目撃しそうになったから子供または保護者を怒った
3:公共の場において行ってはいけないこと」はやっていないけど別の視点から子供と保護者を怒った。

1、2は具体的な対処方法が見えてきそうだ。
 何故なら美術館とはいえ「公共の場で起きて良いことよくないこと」は標準化出来ているはず。触ってはいけない、走ってはいけない、大声を出してはいけない。これは別に「子連れ」に限ったことではない」。公共の場において行ってはいけないことは誰でもやってはいけない。
このような「公共の場において行ってはいけないこと」を実施された行為に関しては具体的対策を考えやすい。一番思いつくのは現場のスタッフに対応してもらうことではないかな。
 
問題は【3「公共の場において行ってはいけないこと」とは別の視点」】だ。3においては怒る側に「子供連れは美術館に来るべきではない」という大前提がある。何も起こってなくても、怒りたくなるのだ。ではなぜここで「子供連れは美術館に来るべきではない」という結論に達する為に「怒」が加味されるのか。それは「怒を与える正当性がある」と仮定されているから。

 
整理できてきた。つまり、「美術館に来た子連れは怒られてもしょうがない」という思考が3にはある。だって悪いことしてるんだもん。という思考。じゃあなんで怒られてもしょうがないのか。そこには「子供連れは子供のお金を払ってないのにずるい」という感情があるのかな。その無意識の「ずるい」から怒りに感情が動いてしまうと仮定すると、高齢者に怒りの行動が向かわない理由がつけられる。

整理はできたけどなんか落ち着かないなあ。
ずるいから怒ってるの。そうかなあ。


でも、ここを掘り下げないと問題は解決しない。
「美術館に子供は来るべきではない」という信念を持つ人達の思考プロセスはずっと変わってない。私も18年から10年前くらいまで同じ様なことを言われてきた。しかし、私が赤子、幼子を育てていた時を明らかに違う点がある。それは、SNS
 
 
SNSという発表の場を得た事により怒りの思考は明らかに攻撃的エネルギーを増す。SNS上はいくらでも声を大きくする事が出来るのだ。そしてその圧は対象になった人を深く、深く傷つける。

なので、この「美術館に子供は来るべきではない」思考に関して真剣に向き合い、気持ちを聞くべきだと思う。ここでその思考、そこから発生する怒りについて深く共に思考するのだ。そうしなければ、根本的な解決策は見えてこないと思う。だって、18年間全然変わってないじゃん。

あなたはどうして怒ってるの?うるさいから、行為が無駄って感じるから?

例えば騒音。それは高齢者や大人の大きな声のおしゃべりと何が違うの?
例えば経験。大人の趣味で美術館に連れてくるのがエゴなら親子連れのスポーツ観戦もそうなるの?

このように書き出すことで具体的な対策を考えたい。ぜひ、ぜひこの「美術館に子供は来るべきではない」思考を持った方とお話ししたい。あなたの気持ちに寄り添いたい。あなたをもっと、知りたくて。


これから日本の少子高齢化は止まらないだろう。そのような状況の中「自己選別」を強制するする環境は確実に衰退するだろう。
文化芸術鑑賞が限られる可能性高まる昨今自分が苦しい環境にわざわざ身を置く、自分の大事な子供を置く人などいるわけがない。(実際東南アジアでは美術館のお披露目よりアートフェアのVIPプレビューやギャラリーのプライベートビューイング等でのお披露目が多い)つまり、対象者を限っての鑑賞スタイルは出来つつある。
つまり、このままでは「美術鑑賞」は明らかに閉じた状況に向かいつつある。それって悲しくないですか。
 
私は美術がある場所、美術館に救ってもらったので美術館に行った人に笑顔で帰ってほしい。どのような方法でもいいので楽しんでほしい。
だからこそ、みんな笑顔でいてほしいのだ。
 
そのための一歩のひとつとして、このアンケートを活かしていきたい。
本当にありがとうございました。