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子どもの創造性:心がけていること3つ

子どもたちとアートクラスで楽しい時間を過ごしています。1対1のプライベートの時もあれば、グループでやることもあります。それぞれメリット・デメリットがありますが、子どもにとって「楽しい!」ことに変わりはない、と信じています。

わたしがクラスの中でいつも心がけていることがあります。何よりもまず楽しいと感じられること。それが大前提ですが、今回はその他に意識していること、3つを選んでみました。

・「やりたい!」気持ちを尊重します。
・気分が変わっても流れを止めません。
・ルールはなし。

一つ一つ説明します。まず、子どもの「やりたい!」気持ちを尊重するということは、その子の希望を叶えてあげるということです。好き勝手にさせる、とも言います。例えば、家から持ってきたぬりえブックがカバンの中に入っていて、「ぬりえしたいなぁ」と言えば、「じゃあやろうか。色鉛筆?クレヨン?それとも絵の具で塗っちゃう?」となります。お父さん・お母さんの気持ちを考えると、もしかしたら「それは家でできるから、違うことやってほしいな」と思うかもしれません。でもあえて、「お教室はコレをやるところ」「おうちでできないことをしなくちゃ」とは、わたしは考えないようにしています。

というのも、子どもにとってはあらゆる創作活動が生活の中に散りばめられていて、それが習い事であろうが、幼稚園のレッスン中であろうが、おうちでママの横にいる時であろうが、全てが「遊び」の一環です。遊びの中で考えたり、悔しかったり、学んだり、嬉しかったり。そういう感情を体験することが成長の上で本当に、本当に大切だと思うからです。「おうちでできること」であっても、「おうちでやる時とは異なる関わり方、ちがうやり方」を心がけています。ぬりえに絵の具で色をぬったら、それをハサミで切って立ち上がるようにしてみたり。

こんな風に「やりたいことをやれる時間」は、言い換えれば「本人が自分で考え、工夫し、邪魔されずに創造性を膨らませている時間」であるので、「こうした方がいいよ」なんて「助言」や「指導」というものは全く必要ないことだと思っています。(一般的な絵画教室とは少し違った考え方です。もちろん技術習得が目的の場合は「指導」が必要になることもあるかと思います。)

そして、そんなぬりえを楽しんでいる姿を全力で観察して、どんな色が今は好きかな?その色にどんなイメージを持っているのかな?どうしていつもこういう描き方をするのかな?など考えます。考えながらじっとその子を見ていると、「おうちでの出来事」「友達との会話」「最近泣いちゃったこと」などいろいろなお話をしてくれます。そんな時間が、まさに「おうちではできないこと」と最近はなってきてしまっているのかな。そこで、その会話や観察を通してわたしが感じたことを毎回レポートにして保護者の方にお渡ししています。

二つ目に、子どもの気分が変わっても流れを止めません。流れというのは、例えば、さっきぬりえをしていたのだけど、いきなり「絵の具したい!」となった時は、「それを終わらせてからね」なんてことはしません。「おお!じゃあ、まず何を準備すれば良いかな?パレット?画用紙?お水?」と一緒に考えはじめ、興味があるうちにすぐに筆に絵の具をつけられる状態にもっていきます。もしかしたら天才的なインスピレーションで、未来の社会に役立つ発明につながるかもしれません(過剰な期待は良くないのでもちろん、言葉には出しません)。

後片付けは「後」でいいのです。全ては流れにまかせ、最終的には「ママのお迎え」時間になってしまい、その無念さで泣いてしまう子もいますが、とにかくわたしと過ごすその時間だけは「気持ちを止めない」「我慢しなくていい」時間にさせてあげたいのです。この気持ちの開放感が、本当は毎日あれば、子どもはどんどん自らの力を発揮するだろうなと思うのですが、今の現実社会ではなかなかそんな時間も取れません。せめて週1回、と祈るような気持ちで子どもたちと向き合っています。

三つ目に、わたしのアートセッション中はルールなしです。と言っても、「絵の具を口に入れない」「筆やバケツを投げない」など危険に関する多少(暗黙の)ルールはあります。例えば、教室に入った途端に(特に男の子はなぜか)靴下を脱ぎます。机を一緒に出しますが、どんな向きでも構いません。今日は横向き?窓につけちゃう?斜めに置いてみる?机はやめてピクニックスタイルにしようか。

また、クレヨンは画用紙に何かを描くものとは限りません。水の入ったバケツの中に入れて、色は出てくるのか?と子どもたちが不思議に思えば、一緒にクレヨンを水に浮かべてみます。パレットが何のための道具なのか知らない子どもたちは、チューブから出てくる絵の具をそのまま画用紙に押し付けてみたり、クレヨンにつけてみたり。全てが実験です。(3歳〜6歳の子どもたちを対象のクラスです)

文字が読めるようになった5歳の男の子は、クレヨンの箱に「水でおとせるクレヨン」と書いてあるのを見て、クレヨンが果たして水で落とせるのか?と疑問に思い、クレヨンで線を描いた画用紙を水道の蛇口に押し当てていました。紙がぐちゃぐちゃになってしまっただけだ、と水では落とせないことにがっかり。でもその後、プラスチックの折り紙ケースにクレヨンでお絵かき。そこに水を垂らしてこすると・・・消えた!「水でおとせる」の意味がわかりました。だけど、どうして「水でおとせる」ことがアピールされているのだろうね?大人の都合かな??

ルールは、子どもたちの自由な心を縛り付けることもあれば、時には逆に自由にしてくれることもあります。隣の部屋にある風船でどうしても、どうしても!と遊びたいSちゃんに、「じゃあ、その風船はわたしとSちゃんだけの秘密というルールを守ってくれるならいいよ」大喜びで自由に遊び出しました。そこに「トン・トン・トン・・・」と鼻歌まじりに階段を登ってくる幼稚園の先生の気配が!

唯一のルール「秘密」を守るために、ハッと息をのんで風船を抱え、机の下に隠れるわたしたち。ルールを守って自由に遊び、大興奮→大満足→次の遊び(風船の絵を描いてみた)へとつながっていきました。単なる「イスに座りましょう」という欲求を押さえつけるルールでは、子どもはなかなか納得してくれません。臨機応変に、常に工夫して良いアイデアを探すこと。そんなことを伝えていきたいと思っています。その後、ママがお迎えに来た時は、「あ!内緒!内緒!風船もどしてくる!」と風のような勢いでお片づけしてくれました。秘密や内緒が大好きなのは大人だけではありませんね・・・。

ひざの上に乗って、わたしの手をさすってくれる子。わたしのことを「おかあさん」「母ちゃん」「ママ」と親しげに(笑)呼んでくれる子。わたしは彼や彼女たちのお母さんではないけれど、ほんのいっとき、目を合わせて一緒に手を動かし関わり合うことで、安心感はもちろん、想像力、創造性の力を信じること、ありのままの自分を好きになれることにつながるのでは、と信じています。

幼稚園や保育園の集団の中で学べることはたくさんあり、子供にとってとても尊いものです。そして家庭での関わりはもっともっと大切なものです。そんな日常の中、ほんのひとときを一緒に過ごし何ができるかな?といつも考えています。忙しい現代の子どもたちにとって、ちょっとした休憩、息抜きであったらいいなと思います。

ここに書いていることは、わたしが常に心がけていることであり、もちろん全てがうまくいくわけではありません。それを予想しておくことも、楽しみの一つです。今日はどんな発見ができるかな。今日はどんな事件が起こるかな。一番ワクワクをもらっているのはわたしなのでした。


今日のイラスト:ゲンロクダイ

サポート頂けたら嬉しいです!自分の世界をどんどん広げ、シェアしていきたいです。コツコツ階段を登り続け、人生を楽しみ尽くします。