Vtuber羽読誠考の現界録:前編
明進歩社はバーチャル京都に設立された小さな、小さな出版社である。どのくらい小さいかというと、会社員が社長と、編集者1人、そして契約小説家がわたくし一人という惨憺たるありさまである。どのようにして会社に利益が及んでいるのか見当もつかないが、バーチャルという情報生命体に金銭的な利益などというものはみそっかすなものなのだろう。
わたくしの名前は羽読誠考、バーチャル小説家である。頭にバーチャルとついているのはわたしが実態としてこの世に存在していないことを意味する。いわゆる情報生命体