正義の宇宙怪人アンディ:前編
「怪人がでたぞー!」
走る俺の姿を見て連中は口々にそう叫ぶ。その通りさ。俺は怪人。宇宙からやってきた鼻つまみ者さ。気安くアンディって呼んでくれていい。俺の脚は1つ跳びで5メートルの地を駆ける。おっと目の前に建物だ。俺は両足をぐっと踏ん張って、思いっきり伸ばす。建物の上を優に飛び越える。耳を切る風の音が鳴る。最高に気持ちがいい。俺はスパイダーマンのように華麗に着地を決めると、再び駆け出す。
まったく、怪人ってのは厄介な存在だよな。俺みたいなとんでもない奴らが悪いことをしようってんだから、質が悪い。でも俺は違う。俺の体にみなぎるこのパワーを、俺は救うために使うんだ。
「そこまでだ、怪人!」
到着した俺は息も乱さず言い放つ。昼のニュースでやっていたんだ。街のどこそこで怪人が周囲のものを破壊しまわっていると。
「なんだ貴様は……おっと、同類様じゃねえか」
破壊の限りを尽くしていた怪人は俺に笑いかける。怪人の見た目はみんな似通っている。こいつは俺ほどハンサムではないが、なかなか見た目のいいやつだ。
「お前も一緒にどうだ? ここの連中たちはみなへなちょこだ。何をしてもおれは止められない。こんなに気分のいいことがあるか?」
「何を言っている? 理由があろうとなかろうと、そこに住む人々に迷惑をかけるのはいけないことだ。俺は今からお前を止める!」
「なんだと!」
激昂した怪人が両腕を振りかざしてこっちに向かってくる。へっ、こいつはとんだ素人だ。己の武器の使い方ってもんをわかっちゃいねえ。俺は怪人の繰り出したパンチを避けて、小さく相手の額を突く。ひるんだ隙に、俺は距離をとって、左腕をまっすぐに伸ばして相手に突進する。スタン・ハンセン顔負けのウェスタンラリアットだ。怪人の首元に左腕が激突する。ぎぃと声にならない声を上げて、怪人は倒れた。カウントいらずの失神K.Oだ。
「怪人め! この世から失せろ」
俺の渾身のパフォーマンスもなんのそので近くの住民たちは罵声を飛ばしてくる。遠くからサイレンの音が聞こえる。軍隊のお出ましか。さっさとこの場を離れねえと面倒なことになっちまう。
「よいしょっと......」
俺は気絶している怪人を肩に担いで、疾風のごとくその場からエスケープする。
正義のヒーローは自分のしたことを誇らないもんだ。今の俺って最高にクールだろ?
後半に続く
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