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17才


朝6時に半強制的に目をこじ開けて、

冷水で顔を洗い、

どうせ癖毛なんだから無意味だと思いつつも

髪を二段に分け、丁寧に髪に熱を通す。

おにぎりくらい食べなさいよ、という母の声を無視して

慌てて父の車に乗り込む。

化粧をしている姿を見られたくない、という謎のプライドから、

後部座席に隠れてメイクポーチを取り出す。

誰にも見られない褒められない顔を飾る。

校則に反する緩さでネクタイを結ぶ。

緩く結べるのが一軍女子のステータスだと、

なんの意味も成さないステータスで着飾る。

電車に乗ったら、恋人に「おはよ」の一言を送る。

愛情が篭っている篭っていないではなく、

その行為に意味があると自分に言い聞かせて。

学校まで歩く。

だれも知らない、だれも聴いたことがない音楽で目と口と耳を塞ぐ。

五感を縛る。閉じ込める。

イヤフォンさえすれば、誰にも話しかけられずに済むから。

昔だれかがそう言っていた。

学校では、必ず誰かと共に時間を過ごす。

心が通じ合う、通じ合わないなんて関係ない。

ただ、誰かと話す。群れる。
 

ただ、弱いから群れる。

周りにどう思われているのか、知るのが怖くて

ひとりになれないから群れる。

誰かと心を通わせるなんて到底無理だと、

その原因は全部自分なのに。

日暮れ時、カラスが鳴く。

家で誰かが待ってくれてるんじゃないの。

帰りなさい。と知らせるように。

カラスは楽なんだろうな。

カラスは集団で群れて、やっと生きられる動物。

遺伝子レベルでひとりで生きられないように、

群れないと生きられないようになっているのだ。

だから「孤独」という概念がない。

人間は、ひとりで生きていける。と言う人もいれば、

人間は、ひとりでは生きていけない。と言う人もいる。

ひとりで生きていくことも、

誰かと生きていくことも選べるからこそ、

このグルーでブルーな「孤独」という感情が芽生えるのだ。



空腹と 精液と 孤独が 踊っている



何しろ僕らは 17才だった








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