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【小説】黒く塗れ(7/13)

 1週間が過ぎて僕は仕事に戻された。けれど、その後も僕に対する仕打ちは続いていた。僕は仕事に集中する事ができず、身体にも力が入らなくなっていた。そしてもちろん成績は以前より落ちたままになっていて回復する兆しはどこにも見出せなかったし、そんな事を考える気力も無くなった。982731や625749が毎日交代でやってきては、僕がやっている作業も僕の存在自体にも意味が無いと言って罵った。グループの他のメンバーも僕の事を無視したり悪く言うようになっていた。

 「そうなの。困ったわね。でも大丈夫よ。あなたには私がついているんだから。」

 そうだ、僕には彼女がいてくれる。こんなダメな僕でも、最後には彼女がいてくれる。それだけが今の僕の支えだ。

 けれど、僕の生活は暗かった。朝、目覚ましが鳴っても起きられなくなった。常に胃がむかむかしていて吐きそうになったりするし、食べられる量も減った。通勤の足取りは重く、歳をとってしまったように感じた。街を歩いていると人が僕の事を見て笑っているように思えたし、僕の噂をしている気もした。寝る前には、このまま明日の朝に起きないでそのまま死んでしまえば楽になるかもしれないと、いつも思った。

 「101862、朝よ! 起きて、朝よ!」

 それでも何とか僕を正気に保たせてくれたのは彼女だ。これが、この状態でいる事が正気と言うものであればだけれど。

 「101862、朝食はできてるわ。さあ、食べて食べて。」


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