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無自覚こそ狂気なり

 むかしむかしあるところに、それはそれは勤勉な医者が居りました。彼は口下手ながら献身的に患者に向き合って、誰に認められずとも直向きに診療を続けていました。

 ところがある日、その医者は深刻な脳の病を患いました。見た目には分かりにくいものの、彼の高次脳機能に重大なエラーが生じていることは明らかでした。

 人が変わったようにスタッフを怒鳴り散らし、患者を叱り飛ばし、非情な告知も平然と突きつけるようになりました。

 患者の取り違えは当たり前。
 処方の間違いも当たり前。
 自分の言ったこともすぐに忘れてしまいます。
 コーヒーを溢した後に拭き方が分からず呆然と立ち尽くしてみたり、印刷機の使い方が分からなくなってスタッフを呼びつけたりしていました。
 誤診と誤治療が頻発し、まともなカルテも書けなくなりました。
 これでは医療事故になってしまうと、組織は必死になって隠蔽とサポートに手を回しました。スタッフが彼を全力で支え、カルテを代行記載し、すべてのオーダーをチェックします。そんなスタッフに対して彼は感謝のひとつも示さずに、皮肉や恨み言を浴びせる日々が続きました。
 自損事故を起こして社用車を廃車にしても平然としています。アクセルとブレーキを踏み間違えたそうです。

 それでも彼は医者を辞めません。

 自分は異常ではない。

 そう言い聞かせるように怒りの矛先を周りに向けて当たり散らしながら、彼は医者を続けました。


 彼が一言、素直に助けを求めたら、物語の結末は変わっていたかもしれないのに。

 医師免許には期限がありませんし更新制度もありません。譬え法に触れるようなことで罰を受けても、よほどのことでなければ失効されることもありません。

 これがどれほど危険なことか。

 運転免許証でさえ更新制度があって高齢者の自主返納が叫ばれているにも関わらず、遥かに難しくて人の命に直結する医療行為を合法化する医師の資格がこんなことでいいのでしょうか。

 …などと声をあげたところで老獪たちに揉み消されるのが関の山でしょう。この国は高齢者を過剰に厚遇する政策によって崩壊していくのですから。


 斯様な現実が罷り通る社会において、狂っているのは私の方かもしれません。


 今宵は中秋の名月。
 古来、月は人を狂わせると云われております。

 狂人は正気を失っているから狂人です。
 狂気に自分で気付くことは叶いません。
 無自覚こそ狂気の本質といえましょう。


 そう、これは御伽話に過ぎません。

 ただし、史実に基づいた告発です。

 資格や肩書きを盲信するのは危険です。曇りなき眼で見定め、決めなくては。自分の身を守ることのできるのは、他ならぬ自分自身です。


 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、今宵の月がただ美しく輝いて、人を狂わせることのありませんように。




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