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魔は死角に来訪する話

 予想外の人物が入院したという知らせを聞いて、私は心底驚きました。何かの闘病中であったという話も聞いたことはありません。数ヶ月前にお会いしたときには元気そうでしたが、疲れた顔をしていたことは気がかりでした。

 すぐ会いに行ける距離ではありませんし、病状のことも何もわかりませんが、どうやら体調を崩して療養が必要な状態であるということだけは確からしい事実です。

 不思議なことに、心配事は心配しているうちには的中しづらく、ふと気が緩み安心した角度から来訪します。意識外から齎される不意打ちは得てして深刻な打撃になりうるものです。

 私に何かできることはあるだろうか。

 色々と考えた末の結論は、変わらぬ日常を送るということでした。この数年間、奇妙な縁の織り成す運命の変化に身を任せるうちに、これもまた大きな流れの一部であろうという想像がつくのです。

 前兆。

 きっと本格的な事が起こるのはこれからです。

 導かれるままに、私は私を続けます。

 思うままに古典から学び、人に対峙し、医術と占術を研鑽する日々は、私にとって快適で充実した瞬間を集積していきます。幾度か彼岸に誘われて、その度に此岸に引き戻された私の人生には、まだ為すべき使命があるのでしょう。


 祈りを。

 譬え何があろうとも、私は進みます。



 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の歩む道が険しくとも明るく晴れ渡り、穏やかな風に癒されますように。




#忘れられない先生
#眠れない夜に
#エッセイ #恩師 #遠きにありて思ふもの

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