必要条件と十分条件の話

　ビーフカレーとは何かを考えます。
　ビーフカレーならば食べ物です。牛肉が入っています。カレールゥまたはスパイスの調合が必要です。そう、必要です。これらを必要条件といいます。
　しかし牛肉とカレールゥが入っていても、火を通さずにナマ出てくる食べ物があったら、それはビーフカレーとはいえません。つまり「食べ物・牛肉・カレールゥまたはスパイス」はビーフカレーの成立する条件として十分ではありません。
　過不足なく説明されたビーフカレーのレシピがあれば、その説明文の内容はビーフカレーの条件として十分であるはずです。これを十分条件といいます。

　論理学は便利です。
　日常に溢れる論理の破綻に気づきやすく、擬似科学や詐欺にひっかかりにくくなることが期待できるからです。また自分の思考を整理する上でも役に立ち、混乱する頭を冷静に回復させることも期待します。

　必要条件と十分条件の話をしましょう。

　高校数学の範囲ですが、数式は出しません。

　命題：渡邊惺仁は人間である。

　日本語の「は」が厄介ですが、論理学で使われる「ならば」にすると堅苦しくなりますから、敢えてこのままいきます。この場合の「は」は「⇨」と同義です。
　この命題は真実ですね。…真なんですよ。
　この場合、人間であることは渡邊惺仁にとって必要な条件です。そして渡邊惺仁はただ渡邊惺仁というだけで、人間であることに十分な条件です。

　では逆はどうでしょうか。

　命題：人間は渡邊惺仁である。

　何か変です。これじゃあ人類すべて渡邊惺仁になっていまいます。キモすぎます。この命題は偽物です。

　ここまで極端な例だと分かりやすいものの、世の中には必要条件と十分条件をごったまぜにした論調が散見されます。
　前後を入れ替えても成立するのは必要十分条件であって、それは稀なことです。なんなら必要条件でも十分条件でもないようなことが、まことしやかに浸透していく社会に私は恐怖を抱きます。

　真偽は自分の目で確かめる必要があります。

　迷う時には複数人の意見を問うのもよいでしょう。できれば利害関係のない第三者がいい。

　さて、夕飯はカレーにしましょうか。

　拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の思考が秩序を取り戻し、真偽の迷路を踏破できますように。

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#まとめるとカレーが好きという話です
#好きなカレーは何ですか
#私はサグチキンカレーが好きです
#家ではトマトと玉ねぎと肉の無水カレーが定番です