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道化のグラス 《詩》

「道化のグラス」

僕は其の限り無く純粋な水を

道化と言う名のグラスに注ぐ

華麗な結晶が輝くとか

輝かないとか

僕等は瓦礫の山の
赤茶けた地面にトンネルを掘り

銀行を襲う計画なんだ

僕は才能の枯れ尽きてしまった

作曲家と写真家と絵描きを誘った

才能の枯れ尽きた
詩書きなら此処に居る 

そう言って笑った


失われた音符と失われたフィルム

失われた絵の具と失われた言葉

それでも其処には100パーセントの
完璧な朝と夜がある

運命の経緯と其処に眠る充ちた秘密


誰かが

誰にも聞いてもらえる見込みの無い

演説を永遠に続けている

カメラのフラッシュが
幾つもたかれた


其処に山があると思えば山はある

無いと思えば山は無い

どっちでもいいよ 

山に登るつもりは無い

僕等はトンネルを掘り続けていた

何歩か歩いて振り返った時 

皆んなの姿は其処には無かった

失われた記憶の中の微かな光

僕は其の限り無く純粋な水を

道化と言う名のグラスに注ぐ

僕はまだ渋滞した道路の上で
独りタクシーに閉じ込められている

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