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ドーナツとホットチョコレート 《詩》

「ドーナツとホットチョコレート」

ドーナツの穴が

宇宙の空白を飲み込んだ時

底知れぬ虚無を満たした
ホットチョコレートを

ウェイトレスが

僕のテーブルに運んで来る

水の足りてない向日葵の花からは 

より一層 危険な匂いが漂う


メロンパンとクロワッサンが
雲間から夏の日差しを運ぶ

新しいテーゼが誕生した瞬間だ

共産主義者が
ジョンレノンの歌を口ずさみ

僕はウェイトレスの

ミニスカートから伸びる

生足に見惚れていた

不自然だ何かがおかしい 

決して

同系列に並ぶ事の無い相反する
思想が共に地獄を彷徨う

そして天国のドアを開ける 

ドストエフスキー的な言語が

対向車線から
クラクションを鳴らして走り去る

すれ違い様に目が合った  


暗黒大陸の宣教師は

同情も恵みも要らない

そう 演壇から力強く熱弁を繰り返す

僕等の書き上げた文学史上に燦然と輝く 

欠く事の出来ない重要な作品は 

昨日 誤字脱字が多いと言われ
編集部から送り返されて来た 


そして僕等は悪へと走った

理由は明確だ  

ドーナツの穴が宇宙の空白を
飲み込んだからだ

僕は二杯目のホットチョコレートを注文した

ウェイトレスは ふたりの愛のモチーフ

そう僕に言って微笑んだ

僕の中にある虚無感は徐々に消え去り 

想像力に満ちた美しいテーマが
今 ゆっくりと溢れ出す

僕の恋人になってくれないか…

其の一行の言葉から 
新しい物語の書き出しは始まる

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