駅 《詩》
「駅」
蜘蛛の糸がある種のバランスを失い
入り乱れ重なり合い交差する
何度も道行く人に
道を尋ねてみたが
その人達が
指差す方向には何も無かった
僕は不味い
インスタントコーヒーを飲んで
時計仕掛けのオレンジの
小説だけを持ち駅に向かった
ベートーヴェンは嫌いじゃない
別に何の小説でも良かった
ただ ライ麦畑でつかまえて
そんな気分じゃ無かっただけだ
蹴りを入れたら全てが崩れ去る
そんな世界の片隅で君を探していた
そして
僕は降りるはずの駅を見失う
Photo : Seiji Arita