序曲 《詩》
「序曲」
暗闇に混じった不透明な光の筋
少しずつ静かに光力を増す
光には確実に力がある事を知った
深い眠りの後の鮮明な覚醒の様に
アイスペールの中の氷が
溶けて行くのを見ていた
もうウィスキーは
半分以上無くなっている
指先で触れた君の唇
僕は街の喧騒の音を聞き
乾いた風を感じていた
其処にあるはずの無い
深い森の中を彷徨っていた
同じところを
ただぐるぐると回っている様に
何もかもが同じだ
時間が逆流しているのを感じる
序曲は繰り返される意識の渦の中で
僕はますます無口になって行った
凪の様な穏やかな日々は
余計に悲しみを深くさせ
明確に輝き始めた光は
失われた蜜月を呼び覚ます
僕は君の唇の感触を思い出していた
君の唇の感触を探していた
終わる事の無い序曲の中で
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?