忘却 《詩》
「忘却」
濃密な暗黒の中で
僕は正確な言葉を探した
何処にあるかもわからない
その亀裂の隙間が
僕の目には はっきりと浮かぶ
冬の小さい月に似た僅かな光
それだけを頼りに手を伸ばした
大丈夫だよ
君は僕の腰に手を回して
強く抱きしめてそう言ってくれた
静けさの中で耳を澄ませば
秋の光りが
君の髪を照らし振り返る
揺れる髪先が描いた小さな約束
覚えていてね 君はそう囁いた
忘れないよ
忘れてないよ
忘却の彼方から君の声が聞こえる
覚えているよ
今でも僕は
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