奥出雲周遊と簸上清酒訪問記【正調ミステリーハンター in 島根(3/5)】

調査報告も第3回目となりました。(第2回はこちら)
今回の内容は酒ネタ少な目、ほぼ旅行記となります。

■木次の楽しい夜

ローカル列車に揺られて山間部へと向かった調査隊(ソロ)は、木次(きすき)駅で下車しました。
夕暮れの木造駅舎は旅情満点。。。

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駅前通りを5分ほど歩いて、旅館「天野屋」に投宿。
オーセンティックな日本旅館、こういうの大好物です。

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素泊まりプランなので、夕食&飲みに出かけましょう。
旅館までの道中で気になっていた「大衆居酒屋かもと」へ入店。

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カウンターの一番奥にお邪魔します。
目の前はおばんざいの絶景。早くも当たりの予感。

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地元・木次酒造の日本酒「美波太平洋 上撰」の熱燗から始めましょう。

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寛ぎのひと時。。。

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熱燗を「うまいうまい」と飲んでいたら、お店の方が「佳撰も評判が良いので、飲み比べてみませんか?」という嬉しい提案。
断る理由があろうか。いや、ない。

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有り体に言って最高ですね。
味は、、、正直言って覚えていない!
素晴らしい空間を満喫することに夢中で、それどころではなかったのだ!

この「大衆居酒屋かもと」は、女性三名で切り盛りされている、地元の方々で賑わうお店です。
家庭的な味付けの串焼串焼き&おばんざい、地元の普通酒やビール、サワーなど気の置けないお酒たち、そして何より日常が息づく空間の素晴らしさ。。。

なお、翌日に「吉田類の酒場放浪記」で取り上げられたお店だと教えてもらいました。さもありなん。。。

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ところで、飲み食いの最中、隣の席のおじさまと意気投合し、色々と会話を楽しんでいました。
そろそろ会計してお店をでようかという時、おじさまが「雨が降って田んぼの作業ができなくなって暇だから、車で行きたいところに連れて行ってやるよ!」と。

ちょっと迷いながら「じゃあ一応…」と連絡先を交換すると、なんと苗字が同じ「カワシマ」という偶然。
こりゃあ「縁」だなということで、翌朝の再会を約束して旅館に帰り、すこぶる良い気分で床に就きました。

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■奥出雲は雪景色であった

酒パワーで熟睡した翌朝。
待ち合わせはやや遅めの8時ということで、広縁でゆったりお茶を飲みます。

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この旅館「天野屋」さん、古くて味わい深い建物ながらも、風呂やトイレなどは綺麗に改装され、無料Wi-Fiも完備するなど、すこぶる快適に過ごすことができました。

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ここで一つ、懺悔しておかなければならないことがあります。
昨晩、おじさまはかなり酔っぱらっていたので、「本当に待ち合わせに現れるのだろうか…」という一抹の不安を持っていました。

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実際は、時間ピッタリに迎えに来てくれました。
すみません、すみません、疑って本当にすみません。。。

という訳で、奥出雲ドライブに出発。

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行先の希望を聞かれたので、正調粕取焼酎を造っている「簸上(ひかみ)清酒」と「出雲湯村温泉の元湯」だけお願いして、あとはおじさまに委ねます。

木次(標高約40m)は全く雪が無かったのですが、山深くなるにつれて雪が増えていき、簸上清酒がある横田(標高約330m)に到着したころには完全な雪景色。

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ちょっと時間が空いたので、おじさまおススメの場所に寄り道。
最初は「JR出雲横田駅」。昭和9年に建てられた本格的な「宮造り」の木造駅舎で、大きな注連縄がシンボルです。
近所にある稲田神社にちなんで、このような立派な駅舎が建築されたとのことです。

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次は、横田のシンボルである「稲田神社」へ。
祭神のクシナダヒメ(稲田姫)は、ヤマタノオロチの生贄として差し出されそうになったところをスサノオノミコトに助けられ、後にその妻となった女神です。

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ちょっとマニアックですが、本殿は見事な「大社造」(掘立柱・切妻造・妻入)ですね。
このように本殿がむき出しになっているケースは稀なのですが、たまたま前に経っている幣殿が建て替え中ということで、全体をまじまじと見ることができました。

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なお、境内に出雲の「在来ソバ」を食べられる蕎麦屋さんがあるそうなのですが、開店前かつ休業日(火曜休業)でした。。。

■簸上清酒(正調粕取焼酎「簸上」製造元)

そして、いよいよ目的地の簸上清酒へと訪問。
一般的には、粕取焼酎よりも日本酒「七冠馬」「玉鋼」で広く知られています。

実は、朝いちで電話&訪問していたのですが、「いま担当者は会議中ですが、1時間後なら…」とのご案内を頂き、先に駅と神社を回ってきました。
(ご丁寧な対応ありがとうございました。)

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蔵元さんと製造の方にわざわざ出て来て頂き、10分ほどお話を伺うことができました。

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<製造暦>
日本酒の製造シーズンが終わる春に、酒粕を足で踏み込んで空気を抜き熟成させる。
・酒粕(踏み粕)は、夏の間に漬物(奈良漬)用として販売し、残った粕を蒸留する。
・蒸留は日本酒製造が行われていない夏場に実施する。毎年実施する訳ではなく不定期である。
・出来上がった粕取り焼酎はしばらく熟成させ、頃合いを見て出荷する。

<蒸留の方法>
・蒸留に使用する常圧蒸留器はアルミ製で、角型蒸篭と冷却器が横に並び、パイプで接続されている。
・熟成した酒粕(踏み粕)とフスマ(出雲弁で籾殻のこと)をスコップでかき混ぜて蒸篭にセットし、蒸留が終わったら蒸留粕を取り出す
蒸留の時期以外は器械を分解して片付ける(なので、この日は残念ながら器械を見ることができなかった)。

<焼酎粕の農地還元>
・焼酎の蒸留粕は牛の餌として農家が利用している(和牛は奥出雲地域の伝統産業)

<粕取り焼酎の需要>
・粕取り焼酎は、ほとんど家庭の奈良漬の製造に使用される。
・昔は飲用されたようだが、いまはほとんど聞かない。

<今後の見通し>
・近年は蒸留の頻度が減少しており、次がいつになるか分からない。先行きは不透明。
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このほか、日本酒の「泡無し酵母」(簸上清酒が発祥)のことなどもお聞かせ頂いたのですが、ここでは割愛いたします。
ご多忙のところ親切にご対応頂き本当にありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。

簸上清酒がある奥出雲地域は、山間部にも関わらず全国屈指の稲作好適地として知られており、横田の隣町で作られる「仁多米」は新潟の「魚沼コシヒカリ」に匹敵するブランド米として近年脚光を浴びています。
また、上記のお話しで「牛」の話題が出てきたように、古くから稲作と連携した畜産業も盛んであり、その歴史は「奥出雲和牛」や、6次産業化の先進事例として知られる「木次乳業」の牛乳・チーズなどに継承されています。

そして、興味深いことに、これらの「稲作と畜産を組み合わせた複合農業」は、それ以前の1300年以上前に行われていた「たたら製鉄」の跡地再生として発展してきたそうです。
(以下、奥出雲町のホームページを引用させて頂きます。)

「たたら製鉄と奥出雲の農林畜産業」
1300年以上の歴史をもつ「たたら製鉄」(=日本古来の製鉄法)は、単に良鉄をつくり出しただけでなく、鉄穴流しによる砂鉄採取法によって山々を切り崩し、その跡地を棚田に再生しました。
そして、たたら製鉄を背景に、鉄製品の運搬、農耕用の牛馬振興と和牛改良を重ね、現在の「奥出雲和牛」の基礎を築きました。優秀な系統を引き継ぐ和牛改良にあわせ、牛ふんや山草など有機質堆肥を水田に施用する耕畜連携により、地域ブランド米『仁多米』を生産し、資源循環型の農業システムが営まれています。
かつてたたら製鉄の燃料である木炭生産の薪炭林から、現在ではシイタケ等の原木供給林として森林資源を循環利用し、伐採跡地の焼畑や鉄穴流し跡地で栽培された在来ソバが保存・継承され、奥出雲地域では自然と共生した農業を通じ、高品位な農産物を育んでいます。
 こうした、たたら製鉄によって築かれた棚田をはじめ、砂鉄採取のために導いた水路やため池を再利用するなど独自の土地利用により稲作や畜産を中心とした複合的農業が営まれ、四季折々の棚田景観を形成し、これらの里山環境には多様な動植物が育まれています。

ここでは粕取焼酎については紹介されていませんが、山間部における貴重な肥料製造の一環、そして何より人々に楽しみや癒しを与える飲料の一つとして、地域の生活・生業の一翼を担ってきたであろうと推測されます。

そして、正調粕取焼酎の調査に訪れたことで、道中に接した「米」「酒」「和牛」「在来ソバ」「漬物」「焼酎」などの食品の関係性が見えたことに、静かな興奮を感じます。

■おじさまと巡る奥出雲マニアックツアー

さて、ここからは完全に旅行記(というかほぼ写真集)になります。
まずは車を島根・広島県境に走らせ、日本最大級の二重ループ橋である「奥出雲おろちループ」を上り、引き返します。

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お次は、三段スイッチバックで有名な「JR出雲横田駅」と、構内の湧水。

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さらに、日本初のアーチダムである「三成ダム」
(ここまで交通関係ばかり。。。)

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その後、リクエストしていた「出雲湯村温泉 元湯」で、ゆったり休憩。

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川沿いのロケーション、柔らかなお湯、そして地元率100%の客層が最高でした。

なお、以前は河川敷に野湯があったそうですが、台風の被害で使えなくなってしまったとのこと。

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お茶を飲んで一服した後、「兄ちゃん神社に興味ありそうやな…」ということで「温泉神社」へ。
クシナダヒメ(稲田姫)の父「足名椎」と母「手名椎」を祀る神社だそうです。

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柄杓ではなく、サカキの枝で手を清めます。これは初めての体験。

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しかし、素晴らしい雰囲気ですね。

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いい…(恍惚)

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この神社はむちゃくちゃ気に入りましたね。
建物は稲田神社ほど立派ではありませんが、杉の巨木に抱かれた境内の雰囲気が本当に最高でした。

続いて、「せっかくだから奥出雲ワイナリーにも…」と。

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知ってた!ハハハ!!

「それなら木次乳業でお土産…」ということで移動。
おじさまは切り替えが早い。

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写真はありませんが、無事にチーズやプリンを買って自宅に発送。
ここのチーズ、大好物なのです。

そして昼食は、ショッピングセンターに入居している喫茶店に連れて行かれて…

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え?何これ?美味しい…!!!
明らかに店の雰囲気にそぐわない本格的な蕎麦でした。
さすがは「出雲そば」の本場。。。

最後に「古い建物が好きなら、良い駅舎があるで?」
ということで、「JR加茂中駅」へ。

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いい…(恍惚)(本日二回目)
これは超A級のレトロ駅舎ですね。。。

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フットワーク軽くあちこち連れまわして頂いた挙句、最後は山麓の宍道駅まで送って頂きました。

最後に「おじさん…もしかして鉄道好きですか?」と聞いてみたら、案の定、農閑期には18きっぷを使ってあちこち巡る「乗り鉄」だそうです。
どうりで訪問場所のチョイスが渋かった訳だ。。。

兎にも角にも、むちゃくちゃ楽しいツアーでした!
本当にありがとうございました!!!

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奥出雲の人情、酒、食、そして風景を満喫した調査隊(ソロ)は、県境を越えて鳥取県米子市に向かいます。

(第四回へ続く)


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