第563回【筋トレ日誌 その他日々是】554(2022/12/3)▲▲熱狂人生・山野井泰史編(『人生クライマー』より)▲▲

生死をかける、没頭・没入の人生の男


先日も映画・『人生クライマー』

ご紹介させていただいた。



世界的クライマーにして、

登山界の最高の勲章

ピオレドールを昨年受賞した

山野井泰史のドキュメンタリー映画作品である。


ちょうど本日は

地元映画館で監督の武石浩明さんの

舞台挨拶も催されるとのことで、

映画館へと足を運んだ。


以下は

ネタバレにならない程度の映画の感想や、

山野井泰史について改めて感じたことなど。


クライマーの映画といえば、

断崖絶壁をロープを頼りに登り詰めていく

スリリングなシーンを予想するものだ。


もちろんそういったシーンが無いわけではない。

しかし底流に流れるのは、

山野井泰史の内面というか

『人生観』である。


クライマーの世界に身を投じて40年以上、

仕事のかたわらにクライマーを続けているのではない。

クライマー一本の世界で生きる男・山野井泰史。


その道一本で生きることは

羨ましくも大変なことだと言われるが、

山野井はまさに没頭・没入の人である。

少なくとも山を前にした場合には。

山以外では、普通のおじさんであることに

少々安心してしまった気もするが。


沢木耕太郎氏の『凍』をきっかけに

山野井泰史を知ったものとしては、

生死をかけたギャチュンカン北壁の

エピソードが頭に浮かぶ。


本作品では、

ギャチュンカン登頂の話には

触れられていない。


むしろ、

山野井が憧れと試練の対象と選び

しかも達成し得なかった

マカルー西壁のエピソードに

焦点を当てられていると言っても良い。




1996年のマカルー西壁は

山野井にとっては『敗退』である。

落石に当たったことが主な原因だが、

今の自分にはマカルーは困難と判断し

撤退の道を選ぶ。


しかし、

山野井泰史というクライマーは

私が思っていた以上に慎重な人である。

これは、今回の意外な発見。


私はクライムをしないので分からない部分もあるが、

手が届きそうなところにある頂きならば

多少の無理をしてしまうのが人間の性だと思う。

その性が仇になり、

命を落としたクライマーは数多くいるのも事実。


その逆らい難い欲望を抑えながらも

ソロの世界を極めてきたのが、

山野井泰史の唯一無二の特徴なのだろう。


それでも山野井が自分自身を

『いい人生を送っている』

と評する箇所は印象的だ。


結局死を目の前にした時に、

自分に対して同じ言葉を掛けられるか。


いい人生を送っている、と

思えないのであれば残念なことだ。


一生懸命諦めずに頑張りましょう、

とか、

そんなありきたりの言葉ではなく、

自分の人生観の方向をどこに向けるのか。


そんなことを思わず自問してしまう

作品だったと思う。


素晴らしいドキュメンタリー作品と

巡り会うきっかけをくださった、

武石監督には改めてお礼申し上げたい。


そして、

皆様もぜひ劇場で熱くなっていただきたい。

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