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「理想郷」を信じていたい

小説、ひいては文学って何のためにあるんでしょうか。

多分、これは100人に聞いたら100様の答えが返ってくるものなんじゃないかな。


これに関して、先日、友人のnoteを読んでいて考えたことがあったのでシェアします。

ここで、

「綺麗事に反発したい」
「どうせ綺麗事を掲げたところで何も変わらない変えられないというのが人間の性だと思うので、それならばその黒い部分を嫌ってくらい見つめてみましょうよという学問分野が芸術とかなんじゃないかな…と思ってる そして人間は愚かなことにその黒い部分に美を感じ取ったりするのでは」

と、言っていたのを見て、私は

なるほどなああ、こういう見方もあるんだあ、って思った。

感心?感銘?とはまた違うかもしれないけど、すごく私の中で響いた気がして。


これは、私には今まであまり無かった考え方で、そこから転じて考えたことは、私は真逆に、本の中に「綺麗事」を求めているのかもしれないということだった。



たとえば毎日、現実世界のことばかり考えているとする。

「教育ってどうやったらより良くなるんだろう」「より多くの人が幸せに生きられるには、どうすればいいんだろう」

こんな大きな話題から、

「どうして頑張ったのに、この計画は上手くいかなかったんだろう」「どうしたらあの人と関係が良好に保てるんだろう」

こんな卑近で小さな話まで、いろんなことを考えているとする。

でもやっぱり現実、何でもうまくいくようにはなっていない仕組みで。
考えたりチャレンジしたりする中で、どうしても大きな壁にぶつかってしまったり、解決できなかったこと、後悔だらけで終わってしまうことも山ほどある。


現実世界は綺麗事が少ないし、それに気づいて虚しくなることだって多々ある。

でも、小説や文学、もっと大きくいうと芸術は、
「綺麗事の世界」をいとも簡単に作り出すことができると思うんだ。


私はきっと、現実世界を見つめて感じる理不尽さや虚しさなどの感情を、「小説を読む」という行為で発散させているのかもしれない

だから私は、ただただ美しいだけの小説や、努力が報われる系のストーリー、モヤモヤすることが起こらない小説なんかを好む傾向にあるのかな。

なんなら、疲れているときに読みたくなるのは、「絶対にハッピーエンドだとわかりきっている(もう何回も繰り返し読んだお気に入りの)小説」だったりする。

よしもとばなな、はやみねかおる辺りはまさにそう。


けど「変えられない人間の黒い部分に美を感じる」というのも、すごく分かった気がしたんだ。なんかね、それが出来ると、本当の意味で強くなれそう。


でもやっぱり、弱い私はどうしても小説の持つ「心の安全地帯」という性質から抜け出すことが難しい。

夢見がちだと思われても仕方のないことだけれど、私個人の考えとしては、
小説や文学はせっかく人間が好きなように作り込める虚構なのだから、夢くらい見させてよ、って思っちゃたりする。


(思ったけどこの考え方って、ディズニーランドが好きな人の思考と一緒?笑)


こう考えると、私が「いまだに児童書が好き」というのもすごく説明がつくな、と思ったりしました。

ここで、「児童書の魅力は、バットエンドがないこと」と言っていたのも、

「現実から一旦遠ざかりたいときに」小説を読む、って言ってたのも、そういうことなのかなあと。


つまり、私にとって文学(小説、あるいは芸術)は、ある意味では現実逃避のためのものなのかもしれない。


だから私、実は大学で学ぶような「文学」ってあんまり向いてないなと思っていて、実は前から「社会的背景と照らし合わせて読む文学」というジャンルの在り方に疑念を抱いていたりした。

でも文学の研究って、たぶんだけど大体が「そういうもん」で、

その時代の社会的文化的側面をどのように表現しているか?
作者は、作品を通して何を伝えたかったのか?
に焦点を当てることがすごく多い気がする。

もちろん、そうして掘り下げることで読みが深まるのがすごく面白いときもあって、それに気づかせてくれたのが大学での文学の授業だったりもするけど、

でも、どこかで「私は私なりの言葉と主観で自由に読ませてよ」って思っちゃったりする自分もいたりした。


と言っても、、私は「小説は100パーセント現実逃避のために読んでいます」というわけでもなくて、授業で扱うような、自然主義や写実主義の文学も面白いなとは思うし、頻度は少ないにせよ好んで読むときだってある。
ただただ「ことば」を摂取したくて何かを読むときだってある。

私が何かを「読む」目的は多々あるにせよ、人よりはその「綺麗事を見つめていたい」という気持ちが強いのかな、と思ったという話でした。


皆さんは、何のために小説を読んでるんですか?

良ければぜひ教えてください〜


それでは。

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