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ジェットコースター☆マリッジ〈第1回〉

3年制の専門学校を卒業してから始めた都内での一人暮らし。
専門学校を卒業後は出版社で働き、漠然とこのまま専門学校時代から付き合っている彼女と、いずれは結婚するんだろうなあと思っていた。

が、好事魔多し。

今振り返ると当時の俺は完全にイケ好かない野郎だった。
出版社勤務とはいえ時給の契約社員だったし、男としても自分に自信を持てるタイプでもない。しかもひとりっ子の寂しがり屋という、どうしようもない面倒臭え男だったので、とにかく彼女を手放したくないあまり束縛しまくっていた。

4年付き合った彼女にフラれた

10代後半から20代前半の中の数年間を、当時の面倒臭え俺に縛られまくっていた当時の彼女さんには本当に申し訳なく思う。
ある日、そんな彼女から「好きな人が出来たから別れたい」と言われた。当時は晴天の霹靂だったが、まあ今にして思えば「むしろよくそこまで我慢してくれてたなあ」と思っちゃうよね。

こうして俺は4年くらい付き合った彼女からフラれた。
自分に自信がない割には「あと1、2年もしたら結婚するんだろうなあ」とか、ぼんやり考えたいたところから、突然その相手がいなくなった。急転直下だ。

時が経てばただの失恋なのだが、当時の俺はすべてを失ったような喪失感だったのを覚えている。もう俺に残っているものは仕事しかないと思い、出版社の仕事をガンガンやっていた。
全く興味のない競馬や実用書の編集やデザイン、大手出版社から外注されたタレント本のDTP、自分がやりたいプロレス本を作るために企画書を何枚も出し、夜は別の編集プロダクションでF1速報誌のDTPアシスタントまでやっていた。

当時のことは正直あまり覚えてないが、とにかく働きまくっていた気がする。とはいえ、その頃の俺はスキルが圧倒的に低かったので戦力になっていたかは甚だ疑問だ。

仕事仕事の毎日の中に見つけた癒し

そんな毎日の中、彼女がいない俺が見つけた楽しみというか癒しが、チャットだった。
Z世代よ、チャットって知っているか?

まあチャット自体は今でもあるから知っているか。今はカスタマーセンターにチャットで問い合わせて、AIが返答するみたいなものが“チャットの主流”だと思うが、当時は複数の人物が同時に、しかもリアルタイムでやり取り出来るチャットは、なかなか画期的だった。

今ならグループLINEや、同じハッシュタグでのTwitterが感覚的には近いか。
当時はTwitterねえ! mixiもねえ! ブログもそれほど流行ってねえ! って時代だ。2ちゃんねる(現5ちゃんねる)とかはあったと思うが、“平和なやり取り”が出来るようなイメージはあまりなかった。

そんな中で俺が夢中になったのが、さまざまなチャットルームのプラットフォーム的サイトで見つけた「真夜中に働いている人が集まるルーム」でのチャットだ。
文字通り日付が変わった頃から人が集まりだし、「まだバイト中〜」とか「夜勤の休憩中です」みたいなところから入室してきて、夜な夜なワイワイと盛り上がれるチャットルームだった。

真夜中に働いている人が集まるチャットの常連に

うろ覚えだが、俺はこのチャットルームに割と頻繁に入室していた気がする。1週間のうち3、4日は夜中に入室して、同じように真夜中に話し相手がいない者たちと文字での会話を楽しんでいた。
そうなってくると、わずか数ヶ月で“常連”になっていく。元々「今日は人が多いな」って日も10人前後しかいないようなルームだった覚えがあるだけに、俺以外の常連も数えられる程度しかいなかったはずだ。

それだけ頻繁にチャットしていると、「こいつとは気が合うな」と思えるヤツが出てくるものだ。
その中の一人がテレビ制作会社のADをやっているというコだった。

〈続く〉

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