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対立する世界を描くキーになっている言葉とは?〜"This is Me" 歌詞解説⑥〜

映画『グレイテスト・ショーマン』の代表曲に "This is Me" があります。

この曲↓ですね。


"This is me" の歌詞のストーリーは、”I'm not a stranger to the dark" (私は暗闇に慣れている)から始まって、"I know that there's a place for us. For we are glorious."(私たちのための場所があるのは分かってる。だって私たちは輝かしいのだから)と希望の方に行って、辛辣な言葉を言われても、洪水で押し流す、という心持ちになっていく。

そこから、私は傷はあるけれど勇敢。私はそうなるように生まれたの。これが私。という力強いメッセージになって、暗闇から太陽の方に手をのばしていくストーリー、影の世界からヒカリの世界へ移動していく物語でした(解説第1回第2回第3回第4回第5回)。

こうしたストーリーを考える際に大切なのが「対照ペア(contrastive pair)」という考え方です。

たとえば、「あなたたち」と「私たち」という2つは「対照ペア」です。2つの対照的なものを指し示すことばですね。あるいは、「山」と「川」、「おじいさん」と「おばあさん」もそうです。

おじいさんは山へ芝刈りに
おばあさんは川へ洗濯に

これは対照ペアがわかりやすく使われている例です。

その対照ペアが会話や文章や詩を読み解く上で大切になってくるのですが、なぜ大切なのかと言えば、その対照ペアの使い方にその人の考え方、価値観などが現れるから。

「あなたたちに私たちの気持ちは分からない」

この対照ペアの使い方は、「あなたたち」と「私たち」を分断して分かり合えないものとして考えていることを表しているわけです。

「私たちは違うところもあるけれど、通じ合うところも多いよね」

という風に「私たち」と一括りにして言うこともできますよね。ことばの使い方を見ることによって、その人がどう考えているのかが分かる。

なので、コミュニケーションにおいて、対照ペアがどう使われているかを見てくのは他者を理解する上で、とても大切。

”This is Me"の歌全体を貫いている対照ペアは "we/they" の2つの対比です。「私たち」と「あなたたち」。

例えば、

I won't let them break me down to dust
(彼らに私をゴミ扱いはさせない)
I know that there's a place for us
(私たちのための居場所があることは分かってる)
For we are glorious
(だって私たちは輝かしいのだから)

「私たち」をゴミ扱いする「彼ら」と、それでも「私たちは輝かしい」と言う「私たち」。その人たちが見ている世界が全く違うものになっている。2つの別世界。それを表現しているのが "we/they" (私たち/彼ら)の対照ペアです。

そして、もう1つの対照ペアは "This is Me" のストーリーの始まりと終わりを見ることで分かります。冒頭にあった一節は、

"I'm not a stranger to the dark."
(私は暗闇(の世界)をよく知っている)

後ろのほうの歌詞にはこんな一節があります。

"Reaching for the sun."

(太陽に向かって手をのばす)

"the dark"(暗闇)、 "the sun"(太陽)の2つがこの歌のストーリーの対照ペアと考えられて、「暗闇/太陽」を2つの世界として見ているんだと思うんですね。

そういうわけで、私は「暗闇」から「太陽」へ、影の世界からヒカリの世界へ向かっていくストーリーと解釈したのでした。

そういう視点で、もう一度、歌詞を眺めてみてくださいね♪

洋楽の歌詞解説のXもやっています。


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