何のために結婚

26歳ともなると、旧友たちの中で結婚する人が出てくる。先月は中学時代の同級生が結婚した。彼を含めた集まりがあり、話題はおのずと結婚の話に。「結婚する奴が出てくる年齢になったんか」と皆が言っていた。

正直、僕はあまり焦っていなかった。けれど、他の友人たちが焦っているのを見ると同じような気持ちが出てきそうになる。いやいや、平均初婚年齢って30歳前後でしょ?と思う。でも、その平均年齢に着実に近づいている。先の話だと思っていたけれど、すぐそこまで来ているのかもしれない。

僕はいずれ結婚したいと思っている。けど、それが結婚「したい」なのか、結婚「しなきゃいけない」なのかなんなのか分からなくなってくる。少なからず世間体への考慮が混じっていると思う。周りの人から結婚しろと言われてないし、親からもそんな話はされないけど、社会に広がる結婚「すべき」幻想的なものをすくいとった上での結婚したい、なのかもしれない。

現時点で結婚相手候補がいない僕にとって、急務なのは相手を探す努力なのだろう。が、それは一旦脇に置いておくとして、結婚はなんのためにするのかを考えたい。

結婚は何のためにするのか。幸せになるため?それもあるがそれだけが全てではない。ただ、SNSにおける結婚報告ツイートなんかを見ていると幸せのために結婚するんだと思えてくる。

結婚=幸せと考える背景にはきっと、ロマンチックラブイデオロギーがある。「一生に一度の相手と恋に落ち、結婚し、子どもを産み育てる」という物語で、『愛と性と生殖』が結婚を経由することによって一体化したもの。それがロマンチックラブイデオロギー。(『ジェンダー論をつかむ』千田有紀 他より)。日本ではロマンチックラブイデオロギーが強固なのだという。
否定するわけではないけど、それが肥大化すると、結婚後に訪れるであろう様々なトラブルのことを考えられなくなる。ロマンチックもいいけど現実のことも考えないといけない。


じゃあ何のため…。結婚は生存戦略のため、と先日読んだ『困難な結婚(内田樹)』には書いてあった。引用する。(「困難な結婚」は武道家・思想家で神戸女学院大学で教授もされていた内田樹氏の、結婚をテーマにしたエッセイ集のような一冊)。

率直に申し上げて、ご自身が「健やか」で「富める」ときは別に結婚なんかしなくてもいいんです。その方が可処分所得も多いし、自由気ままに過ごせるし。健康で豊かなら独身の方が楽なんです。結婚しておいてよかったとしみじみ思うのは「病めるとき」と「貧しいとき」です。結婚というのは、そういう人生の危機を生き延びるための安全保障なんです。結婚は「病気ベース・貧乏ベース」で考えるものです。

24ページより

先ほども申しましたように、結婚という制度は「幸福になるため」の仕掛けではなくて、「リスクヘッジ」なんです。せっかく結婚を前にして、幸福な未来を思い描いている人に対して気の毒だとは思うんですけど、にべもない言い方をすれば、「一人で暮らすより、二人で暮らす方が生き延びられる確率が高い」から人は結婚するんです。発生的には「幸福になるための制度」ではなく、「生存確率を高めるための制度」なんです。

77ページより

生き延びるために結婚するなんて…と思わなくもないけど、実際問題そうなのかもしれない。しかし、「この世界で生き残るために結婚しよう」というプロポーズに頷いてくれる人はいるのだろうか。

結婚に何を求めるかで結婚観は大きく変わる。自分と同じような結婚観を持った人と出会えることが、幸せにつながるのかもしれない。


まぁ努力しろって話です…かね。

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