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高いところがスキ -心歌-

わたし
高いところがスキ


ジャングルジムの
てっぺんまで登り切った
達成感
爽快感

震える足に力を入れて
がんばって
ふんばって
両手を天に向けて仰ぐ

「風よ吹け」

心で念じれば
どこからともなく
風が吹き荒れて

柔らかな茶色の髪を
ふわっとなびかせた


わたし
幼いとき魔法が使えたのよ

優しく隣で笑うあなた

もう、あなたに手を握っていてもらわなくても
今はひとりで立つことができる




わたし
高いところがスキ

虚栄を張った自分自身の存在も
今死にたくなるほど
苦しいって思える悩みも

まるで魔法みたいに
不思議なくらい

全部全部小さくなるから

青い澄みきった空に
少し吸いとってもらって

ようやく息ができる感じ



そっと視線を落とす

タワーの裾元には
小さくなった生命が
かすかに動いているのが見えるだけ

わたし
きっと飛べると思うわ

あなたの笑顔が曇る



楽しいことも
新しい出会いも
いっぱいあったけれど

すべて霞がかっていて
夢を見ているようで

すぐ消えてしまう
儚い幸せばかりで

心から笑えた日なんて
あったのかしら


せめて自分にだけは
素直な気持ちを出せるように

ひとり向き合う時間を
たくさん作っていきたいと

空に向かって
吐き出した


澱んだ暗灰色の空は
今日も変わらず

わたしを大きく吸い込もうと
してくれるから





「高いところがスキ」


~END


>>> こちらの作品は、お一人お一人に向けた心の手紙です。心歌として吐き出しています。


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恋し続けるために顔晴ることの一つがnote。誰しも恋が出来なくなることなんてないのだから。恋しようとしなくなることがわたしにとっての最大の恐怖。いつも 支えていただき、ありがとうございます♪