見出し画像

知識の幅が強みになると教えてくれた本【徒然読書55】

勉強って何のためにしていますか?
こう聞かれたらあなたは何と答えますか?

個人的に真面目に答えるならば、「何かをやりきった経験を得るため」「自分の視野を広げて多様な価値観を包含できるようになるため」

ちょっとラフに答えるならば、「語れる分野を増やしていろんな人と話すため」「遊びの範囲を広げるため」

じゃあどう勉強すればいいのかな、広げる勉強でもいいのかなともやもやしていましたが、この本を読んで少しすっきりしました!


タイトル通り、1つの分野に特化したスペシャリストではなく、幅広い経験や知識が今の時代には必要だという本です。

著者は早めの専門特化こそがうまく生きるためのコツであるという潮流に「あちこちに寄り道をしながら考え、実験する方が、特に不確実性の高い現代では力の源になる」と一石を投じるために書いたと言います。

事例や研究紹介が多いので、抽象的にまとめにくいところはあったのですが、心に響いた部分をまとめてみようと思います。

1.紹介されていた思考や用語ピックアップ

①「遠い移転」
⇒「知識の構造がとても柔軟で、新しい領域や全く新しい状況にその知識を効果的に適用する」
②「アウトサイド・イン」の思考(アルフ・ビンガムら)
⇒「対象となる問題から遠く離れた分野の経験をもとに、解決方法を見つける」
③「未発見の公的知識」(スワンソン)
⇒「人間の知識が拡大し、それにアクセルしやすくなるほど好奇心のあるアウトサイダーが最先端の分野で知識を結び付ける」
④「ポリマス(博識家)」(アウダカークら)
⇒「少なくとも一つの分野で深い知識を持っているが同時にレンジも広い人材」
※スペシャリストよりは浅く、ジェネラリストよりは広い人材
⑤「シリアス・イノベーター」(アビー・グリフィンら)
⇒「複数の専門領域に飛び込み、飛び出していく「π型人材」」
仕事とは直接関係しない技能や趣味を複数持っているか?

『RANGE』より抜粋

ポリマスに憧れますね……

ほかにも、テイラーとグレーブの研究結果で、クリエイター個人の経験が広いほど大ヒット作が生まれる傾向にあると出ていることも面白いと思いました。

【9月7日追記】
企業の人事制度の変化を見ていると、最初は幅広く対応できるようなジェネラリストが求められていて、それでは高度人材が育たないということでジョブ型のようなスペシャリストが求められるようになってきたと思います。

だけど、スペシャリスト集団ではメンバー次第では横の広がりが逆に狭くなっていく可能性もあります。

その集団だと上に挙げたような思考は生まれないのでは?

今の人事採用に合致するかどうかは未知数ですが…


2.多様な経験をするためには「後れをとったと思わないこと」

ではどうすればレンジを広げることができるのでしょうか?

それに対して著者は「後れを取ったと思わないこと」と答えます。

よく言われているけれど自分自身と比べるということですね。

隣の芝生は青く見える、という慣用句があるぐらい、他の環境は輝いて見えるものです。

だけど逆に自分の環境も周りからすれば輝いているところがあるのかもしれない。

現代の教育は専門性を求めたり画一的になっていることが問題視されます。
知識はあっても知恵がない、抽象的なことになると弱くなる。

だからちょっとした寄り道をして、「ハリネズミ」のように自分の説に固執しないで「キツネ」のようにずる賢くても、その時その時で最適な一手を考えられるようにレンジを広げていく。

本書にあった「ハリネズミ」と「キツネ」のたとえ話を少しアレンジしてみました。

無理に広げよう深めようとするのではなく、目の前にあるものをひとまず受け入れる包容力が必要なのかなと思います。


勉強は何のためにするのか、から拡がってしまいましたがVUCA時代を生きるツールとしての勉強、幅広い知識があるのかもしれません。

賛否両論ありそうですが、ひとつの示唆として読むと面白いと思います。

一通り読んでみて連想したのがタレブの「反脆弱性」と帚木蓬生(ははきぎほうせい)の「ネガティブ・ケイパビリティ」。
本書でも少し取り上げられていました。

※帚木の読みを間違えていました、ははぎきではなくてははきぎでした🙇‍♀️
源氏物語の帚木から取ったようです。

次はこれらの本に挑戦してみたいと思います!



この記事が参加している募集

学問への愛を語ろう