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中国の西の西、敦煌を舞台にした歴史小説【徒然読書64】

敦煌とんこうについてご存知でしょうか?

シルクロード展などで名前だけは聞いていました。
世界遺産の莫高窟ばっこうくつがあるところです。

莫高窟の別名が千仏洞です。
場所は中国の西の西。西安よりも西です。
中央アジア寄りですね。

そこから敦煌文書が1900年代に発掘され、3世紀から5世紀の文献からヘブライ語西夏語ウイグル語ソグド語などで書かれた文献が見つかり、現在では大変貴重な史料になっています。

前置きが長くなりましたが、敦煌を舞台にした小説があります。

それがこちら。

発行年が1959年と古いですが、毎日新聞賞を取得されています。

著者は井上靖さん。
已に故人となっていますが、たまたま新潮文庫を眺めていた時に敦煌が目に入り知った作者です。

有名どころだと大河ドラマの原作にもなったという『風林火山』でしょうか。
西域物と呼ばれる、中国を舞台にした歴史小説も書かれています。


少々難しい感じが多いのと、宋や西夏、回鶻ウイグルなど聞きなれない国が舞台なので、取っ掛りにくい部分もあります。

時代は11世紀。
偶然出会った西夏人女性を通して知った、西夏文字に惹かれた宋の主人公が官僚の道を捨てて西へ西へ旅をするストーリーです。

西夏とは、国の名前です。
北方民族、つまり遊牧民のタングート族が建国した国。
11世紀初めでは敦煌の西にありました。

建国したと言っても、もともと西夏のトップが宋の節度使なので、宋の一部だったんです。
そこからまあ反乱起こしたりして独立志向を強めていき、最終的に独立というわけです。

独立は敦煌を滅ぼしたあとで、1038年から1227年の約200年存在しました。

なぜ滅んだかと言ったらチンギス・カンです。
マジで強すぎる、世界地図半分塗り替えましたからね…(おっと口が少し悪くなりました)

主人公がいる時代は、西夏が敦煌に攻め入るその時期です。
この時の敦煌は宋の範囲に含まれていました。
宋と西夏がバチバチやってる間に経典を西夏文字へ訳したり、西夏軍に入ったりします。

その主人公が西夏の侵略から敦煌(小説では沙州)の文書を隠したと設定しています。

西夏軍の人がなぜわざわざ敦煌守るんかというのは本書を読んでの楽しみということで。

※ちなみに主人公含め架空の人物が多く登場するので、実際かどうかは確認してください。
主人公が架空とはどういうことやねんとなりそうですが、そういう小説です。

戦というよりはいろんな民族との関わり、文字への関わりに重きが置かれています。

巻末の用語集をパラパラ確認しながらでしたが、厚さ自体は薄い方なので、比較的読みやすい本です。

歴史小説だと用語調べたり地図確認したりしないと話が頭に入らないことがありますね…

もし、シルクロードに興味がありましたらさらに楽しめると思います!