《7》観光業の事例(星野リゾート)
今回は「観光業」の事例をお伝えします。
紹介するのは株式会社星野リゾートです。
長野県軽井沢で最初の旅館を開業して今年で106年目を迎える同社は、「ホテルと地域は一心同体。地域の魅力が高まることはホテルの業績に直結し、逆にホテルは地域の魅力を発信することで地域ブランド力を高めることに貢献できる。こうした地域との信頼関係に根付いた活動は持続可能な企業競争力の一つである」という考えの下、地域資源を活用した様々な取り組みをされています。
特にコロナ禍においては、全国各地の産業や文化を支える事業者や職人からお祭りの中止やフードロス問題など、様々な困難に直面しているという悩みが同社に寄せられたそうです。
そこで、少しでも地元の人々の心を和ませ、笑顔が戻る道を見いだしたいという思いから、「星野リゾートの地域連携プロジェクト」と銘打ち、地域の事業者間で互いに連携し、新たな魅力を創出するプロジェクトを各施設で開始されました。
例えば、青森県にある「界津軽」においては、中止になった伝統行事「弘前ねぷたまつり」に携わる人々の思いをつなぐ「ねぷたのかわりまつり」を、温泉旅館と津軽錦絵作家協会(弘前ねぷた絵師を束ねる協会)がコラボレーションし、ねぷた絵展示ギャラリーと本格的なねぷた絵付け体験を中心に実
施。お客さんは温泉旅館での滞在とともに今年しか味わえない特別な「ねぷた」を楽しみながら、これまではあまり知ることができなかった舞台裏を垣間見ることができ、ねぷた絵師は絵の売り上げや体験の参加費から収入が得られ、双方にとってメリットのある取り組みとなりました。
また、栃木県にある「リゾナーレ那須」では、那須町の牧場「森林ノ牧場」で起こる牛乳のフードロスを防ぐための活動として、搾乳した牛乳をより長期保存が可能な「ミルクジャム」へと加工し、行き場を失う生乳の廃棄の減少を実現しています。
さらに、栃木県内の「界鬼怒川・日光・川治」の3施設では、春に中止になった「益子陶器市」に携わる人々の思いをつなぐ「リモート益子陶器市」を開催。益子町の作家・販売店と特別チームを組み、あたかも陶器市を散策するような楽しさのある館内展示や客室の空間づくりを行い、展示作品の中で気に入ったものは特設ウェブサイトで購入できるようにしました。
このように、同社の施設が位置する各地域においての困り事に目を向け、その解決にあたり地元の事業者や職人とパートナーシップを組みながら挑戦を続けておられます。
星野リゾートのような有名なホテルは全国各地から旅行者が訪れると思いますが、このような厳しい状況の時こそ「地域」に目を向け、共に困難に立ち向かうことで、長きにわたり地元の方々から信頼され、大切にされる結果につながるのだろうと感じさせられます。
このほかにも同社は、SDGsの主要課題の一つである海洋プラスチックごみなどによる環境汚染や気候変動、エネルギー利用に関して、産地の技術、農林水産物、観光資源などの地域資源を活用した取り組みにいち早く着手されていますので、後記のウェブサイトをぜひご覧になってみてください。
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