見出し画像

Vol.42 厳しくも優しい眼差し。

「石原さとみの演技が凄い!」…という誉め言葉が常套句と化しているのが、映画「ミッシング」に関する反響。
ちなみに、映画「ミッシング」は吉田恵輔監督作品で、幼児失踪事件の当事者家族や、その家族を報道するTVマン達が織りなす群像劇です。

※下記、予告編(約30秒)↓

確かに、「本人自ら吉田恵輔監督作品への出演を熱望していた」というだけあって、石原さとみさんの演技には鬼気迫るものがありました。

※ただし、「本人自らの志願」とか「覚悟を決めた役作り」という今作にまつわるエピソード自体は、素直に ” 凄い ” と感心するのですが、その根底にある『10代後半~20代前半にかけて主演作が続いた(特に)女性の俳優が、30代以降に差し掛かると、主演作のオファーが減ってキャリアが低迷しがち』という ” あるあるな現状!? ” を考えると(いくら人気商売と言っても)なんとなくモヤモヤしたものを感じてしまいます。

閑話休題(話が脱線したので本筋に…)。

視点を変えて、作品全体として見た場合の ” 本作品の凄み ” は(他の吉田恵輔監督作品にも共通しているのですが)「それぞれの登場人物に感情移入できるような、もしくは身近に実在しているような ” 厚み ” がある所」だと思います。
そんな登場人物達は、それぞれに ” 弱い所 ” や ” 醜い所 ” も持っている訳で、劇中 不意に映し出される ” 弱さ ” や ” 醜さ ” は、「観客自身の嫌な部分を映す鏡」の様にすら感じます。
{『いや、私は自他共に認める清廉潔白で公明正大な人間なので、そんな風に感じない!』と異論を唱える方がいらっしゃるかもしれませんが(笑)、少なくとも私は登場人物の振る舞いに、私自身の「見たくない影」を見た瞬間がありました。}
時おり、” 醜悪さ ” の度が過ぎて、滑稽に見える場面すらありましたが(『 ” 捨てられたチラシ ” を撮ろうとするカメラマン』、『急な誕生日パーティー』、『「虎舞竜…」のセリフ』等々)、そんな反面(特に中村倫也さん演じる ” 砂田 ” や、森優作さん演じる ” 圭吾 ” の描写に)一方的な断罪だけでは終わらない、作り手の優しい眼差しも感じました。

正直、重たいテーマを扱った作品なので『気楽に楽しむ一本』という訳にはいきませんが、かすかな(それでいて確かな) ” 希望 ” や ” 温もり ” を味わえる作品でもあるので、ぜひ鑑賞して頂きたい所です。

それでは、今週の締めの吃音短歌(注1)を…

ぎこちない 喋りを笑う あなたでも 家に帰れば 親を演じる

※「人には多面性がある」という訳ですが…我ながら皮肉が強すぎる(笑)

【注釈】

注1)吃音短歌

筆者のハンディキャップでもある、吃音{きつおん}(注2)を題材にして詠んだ短歌。
この中では『「吃音」「どもり」の単語は使用しない』という自分ルールを適用中。

注2)吃音(きつおん)

かつては「吃り(どもり)」とも呼ばれた発話障害の一種。症状としては連発、伸発、難発があり、日本国内では人口の1%程度が吃音とのこと。


この記事が参加している募集

#映画感想文

66,776件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?