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くるはらきみ|いまも のちも とこしえに

Text|ヨネヤマヤヤコ

 冷え冷えとした石造りのスクリプトリウムにある一室《くるはらきみの画室》の扉を開くと春の温もりにあふれた油彩画に迎え入れられます。

 くるはらきみ様はクリスマスの慶びに相応しいテーマとして「ルカの福音書」の一場面を選ばれました。

 聖母マリアを歓待する聖エリザベツ。胎内の子もまだ見ぬイエスとの出会いを察し全身で喜びを表現しています。その愛らしい姿に顔がほころんでしまいます。彼はのちの洗礼者聖ヨハネ。聖霊に満たされた聖エリザベツは洗礼を暗示させる水色の衣を纏っています。

 天を示す青い衣を纏い、純潔を象徴する白百合を手にする聖母マリア。御御足を護るようにスミレが咲き、聖エリザベツの周りには聖ヨハネの薬草と呼ばれるセントジョーンズワートが銀河のように咲き乱れています。ふたりの間にはクリンソウ。幾重にも花が重なる様子から「幸福を重ねる」という花言葉が授けられました。日本原産の可憐な山野草が宗教画に登場するのは初めてかもしれません。自然の中で祈るように創作活動を行うきみ様ならではの花々の祝福。深く慈しむように紡がれた美しい油彩画です。

 暦の中でクリスマスは特別。24日を待ち望み、1日からひとつひとつドアを開けていくアドベントカレンダーがあるのはクリスマスだけです。きみ様の森のアドベント・カレンダーはモミの緑がつやつやと輝くよう。清々しくにおい立つよう。

 いままさに24個目のドアを開けたところです。現れたのは陽だまりのような蜂蜜色の光を纏った愛らしい天使。桃色に染まったふっくらとやわらかな頰、清楚な微笑みに凍えていた身も心もほどけ、慶びが湧き上がってくるようです。

 心踊るひとときを永遠へと変えるきみ様の筆致。どうぞ神様の祝福がみなさまにもありますように。

くるはらきみ|画家・人形作家 →Twitter
2002年ギャラリーノンク・プラッツで初個展「Moon Face」その後、ビリケンギャラリー、桐生とおりゃんせなどで個展をしたりグループ展に参加をしています。目にする景色や植物や部屋の壁などをモチーフに、心に浮かんだり沈殿したりしている物語を吹き込んで作品として表そうと試みています。

ヨネヤマヤヤコ|イラストレーター・ライター →Blog 香りの世界を偏愛するイラストレーター兼ライター。カルチャー・ソロリティ《菫色連盟》にてサロン「香水談話室」を主催。現在はモーヴ街6番地にあるブライオニー荘に隠匿中。 Twitter|@yoneyacco



作家名|くるはらきみ
作品名|マニフィカト

油彩・キャンバス
作品サイズ|18cm×14cm
額込みサイズ|28cm×24cm
制作年|2021年(新作)

作家名|くるはらきみ
作品名|森のアドベントカレンダー

油彩・キャンバス
作品サイズ|13cm×13cm
額込みサイズ|21cm×21cm
制作年|2021年(新作)

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