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金田アツ子の温室

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清廉な抒情を少女と花に託す画家・金田アツ子の小部屋。馨しい植物画を中心に、やさしい視線で描かれた作品を発表します。
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#アート

スクリプトリウムvol.3|金田アツ子 & 霧とリボン & レミーのアトリエ|温室と薬草のティタオル

Text霧とリボン  ここスクリプトリウムには金田アツ子さまの温室があります。  本展ではヨネヤマヤヤコ様の素敵なご案内で、月を待つ聖なる温室がひらかれました。  「小さくとも思い高く」咲くアツ子さまの花々を、日々の暮らしの中で、お花を一輪活けるように愛でてみたい——そんな思いから、一枚のティタルが生まれました。  2020年秋、オンライン開催した霧とリボン企画 金田アツ子 & Belle des Poupee 二人展——香り高い日々を今でも鮮やかに思い出します。

スクリプトリウムvol.3|金田アツ子《2》|聖なる名前の植物

Text|ヨネヤマヤヤコ  マドンナリリー。月あかりを受けて花弁はいっそう白く輝き、静謐な美しさをたたえています。 クレルヴォーの聖ベルナルドゥスは「マリアは謙譲のスミレ、純潔の百合、慈愛の薔薇」となぞらえました。  葉に白い斑模様があり、それが聖母マリアのミルクがこぼれたように見えることからマリアの名前が付けられたアザミ。幼子イエスに授乳する聖母の高潔な魂が宿っています。  ちいさな花たちの囁きを聞き逃すまいと繊細に描かれたアンジェリカ。守護天使ミカエルの記念日に

スクリプトリウムvol.3|金田アツ子《1》|修道院の薬草

Text|ヨネヤマヤヤコ  こじんまりとしたガラス張りの温室には煌々と月明かりが差し込んでいます。金田アツ子さまの温室のこちらの一角では、主に薬効を持つ植物と聖なる名前を持つ植物が育てられています。馨しき植物療法へと参りましょう。  蜂蜜色と菫色が鮮やかな三色菫。凛と顔をあげたアツ子さまが描かれる清冽な少女たちの佇まいを宿しているよう。  甘く濃厚な香りを辿ってみればハート型の葉の間から花のシャンデリア。菩提樹の花のお茶は悪夢を払い安眠を誘います。  アツ子様が映

金田アツ子|Halmes & Moppetson シリーズ

TextKIRI to RIBBON  モーヴ街・7番地内「金田アツ子の温室」は、四季折々の植物や薬草が咲き乱れる場所——名探偵たちは、8番地《ヴィヴィアンズ百貨店》で出会った暗号が記された植物標本の調査のため、温室の扉をノックしました。  するとどうでしょう。扉をくぐったその先には、見知った霧の都ロンドンが——モーヴ街からロンドンへ、時空を超えてつながる秘密の扉が《スクリプトリウム》には隠されていたようです。  ロンドンに舞い戻った名探偵たち。  しかし、其処此処

レース模様の図書室、再訪|金田アツ子《2》|Rosa damascena

TextKIRI to RIBBON  図書室の終幕が近づいてきました。  名残惜しい気持ちで書架の間に佇んでいると、少女たちがひとりまたひとりと、閲覧室の方に集まってゆくのが見えました。図書室の少女たちに、贈り物が届いたようです。    また会う日までのはなむけとして、植物を愛するこころやさしき温室の主が届けてくれたもの——  薔薇色の薄紙をそっと開封してみましょう。 * * *  レースを編むように、少女たちとの美しい思い出を花びら一枚一枚に編み込んだ金田アツ

レース模様の図書室、再訪|金田アツ子《1》|夕ぐれの色、薔薇の色

 新しい緑の眩しさが落ち着きを見せる晩春の夕暮れ——図書室の菫色もうっすらと翳りを帯びてきました。暖かだった室内にも冷気が少しずつ流れ込み、昼から夜へと移ろうはざまの刻が訪れます。  何度も読み返してきた書物が、ふと哀音を奏でる時間帯。時のはざまで揺れる少女のこころに寄り添うことができますように・・・ * * *  レースブラウスを折り目正しく纏い、髪をきっちりと結い上げたひとりの少女。熱心に紐解いていた書物からふと目を上げ、夕暮れの諧調が差し込む窓辺に近づいていき

温室の別扉《1》|エミリーの温室のティタオル

* * * * *  毎回ご好評を頂いている霧とリボン & レミーのアトリエのティタオル・コレクション。この度、画家・金田アツ子さまとのコラボレーションが実現しました。  金田アツ子 & Belle des Poupee二人展《エミリー・ディキンソンの温室》にて発表された植物画とエミリーの詩の一節を配した馨しいコレクションを発表致します。  ティタオルは英国ティウェアの定番アイテム。渡英のたびに老舗紅茶店や博物館・歴史的建造物のショップなどで買い求め、私自身、

金田アツ子&Belle des Poupee二人展|DAY 6

 アメリカの詩人・園芸家、エミリー・ディキンソンにオマージュを捧げ、六日間に渡りお届けした金田アツ子 & Belle des Poupee二人展《エミリー・ディキンソンの温室》は、本日無事閉幕致しました。  オンライン上にひととき花ひらいた馨しい温室へ、訪れて下さいました皆様に心より深く感謝申し上げます。  菫色の小部屋を2015年にオープンして以来、折々の展覧会でご活躍頂いてきた二人の敬愛する霧とリボン常設作家、画家の金田アツ子さまとアクセサリーブランドBelle

金田アツ子&Belle des Poupee二人展|作品集より《520番》

 本展にて同時刊行される新訳付作品集『Emily’s Herbarium』には、翻訳家・維月楓さまによるエミリー・ディキンソンの詩六篇の新訳と、各詩を題材に制作された金田アツ子さまの絵画、Belle des Poupee様の布花アクセサリーが掲載されています。*作品集の詳細は11/1〜2に発表します  本コーナーでは、六日間に渡り、それらを一篇ずつご紹介していきます。エミリー・ディキンソンの詩にはタイトルがありません。通常タイトル扱いとして、詩番号(本展ではフランクリン版)と

金田アツ子&Belle des Poupee二人展|温室の風景|DAY 6

 ディキンソンの織りなした詩はアメリカ詩の中で永遠に生き続け、彼女が語った言葉や強い信念に基づいた独特な生き方もまた何度も復活を繰り返し、わたしたちに生死や孤独について考える新しい種を与えてくれています。 .....維月 楓(新訳付き作品集『Emily’s Herbarium』収録エッセイより抜粋)  初冬の足音が聞こえてくる頃、ひととき扉を開いた美しい温室。  一冊の詩集に眠る花々を、ひとりは絵画に、ひとりはアクセサリーに、そしてひとりは訳詩として摘み、新しい生命を吹き

金田アツ子&Belle des Poupee二人展|DAY 5

 晩秋の美しさが降り注ぎ、内側から輝きを増しゆく温室の風景——  金田アツ子 & Belle des Poupee二人展《エミリー・ディキンソンの温室》DAY 5に訪れて下さいました皆様に深く感謝申し上げます。

   早いもので明日最終日。  美しい花々が咲き乱れる温室の終幕の時間が近づいてきました。 ★温室の別扉のお知らせ★  終幕を前に、秘密の小部屋へと続く温室の別扉が見つかりました♪  ご案内しておりました新訳付作品集『Emily’s Herbarium』と

金田アツ子&Belle des Poupee二人展|作品集より《92番》

 本展にて同時刊行される新訳付作品集『Emily’s Herbarium』には、翻訳家・維月楓さまによるエミリー・ディキンソンの詩六篇の新訳と、各詩を題材に制作された金田アツ子さまの絵画、Belle des Poupee様の布花アクセサリーが掲載されています。*作品集の詳細は後日発表します  本コーナーでは、六日間に渡り、それらを一篇ずつご紹介していきます。エミリー・ディキンソンの詩にはタイトルがありません。通常タイトル扱いとして、詩番号(本展ではフランクリン版)と初行が明記

金田アツ子&Belle des Poupee二人展|温室の風景|DAY 5

庭や温室に花を育てることは、自己の内面の世界で詩作を行うことと通じているようです。 .....維月 楓(新訳付き作品集『Emily’s Herbarium』収録エッセイより抜粋)  閉館まであとわずかとなった温室——エミリーが温室で内面と対話しながら植物たちを育てたように、画家、アクセサリー作家、翻訳家の仕事が静かに息づいています。  扉をあけて、どうぞゆっくりその息遣いをご高覧くださいませ。 * * * * * * 作家名金田アツ子 作品名|私の星はどこにも

金田アツ子&Belle des Poupee二人展|DAY 4

 金田アツ子 & Belle des Poupee二人展《エミリー・ディキンソンの温室》も本日より会期後半となりました。  秋晴れの健やかさが温室にも満ち満ちた一日。扉をぬけて、温室へ足を踏み入れてくださった皆様に、心より感謝申し上げます。  エミリーが頁の中に封印した花々たち。詩集を紐解くと同時に、その時代時代の空気に触れ、花々は咲き続けてきました。  私たちは、どんな花を咲かせることができるのでしょう?   本展は、現代に生きる三人の女性——画家、アクセサリー作家