金田アツ子｜Halmes & Moppetson シリーズ

2021年6月19日 19:48

Text｜KIRI to RIBBON

　モーヴ街・7番地《スクリプトリウム》内「金田アツ子の温室」は、四季折々の植物や薬草が咲き乱れる場所——名探偵たちは、8番地《ヴィヴィアンズ百貨店》で出会った暗号が記された植物標本の調査のため、温室の扉をノックしました。

　するとどうでしょう。扉をくぐったその先には、見知った霧の都ロンドンが——モーヴ街からロンドンへ、時空を超えてつながる秘密の扉が《スクリプトリウム》には隠されていたようです。

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　ロンドンに舞い戻った名探偵たち。
　しかし、其処此処に、違和感を感じます。ベイカー街も見た目は変わらずとも、外壁の手触り、たちこめる霧の湿度、行き交う人々のテクスチャーが探偵たちの鋭敏なセンサーにひっかかるのです。

　しばらく散策して、ふと足を止めた探偵の瞳がキラリと光りました。以前、ベイカー・ストリート・イレギュラーズから入手した「ある噂」——そうなのです、ここはひそやかに存在が噂されていた「モフ界のロンドン」だったのです——

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　夜霧にけぶるモフ界のロンドン、ビッグ・ベンを背景に堂々と闊歩する、潜入捜査バレバレの探偵コンビに出くわしました。

　装いに威厳はあるものの、虫眼鏡を持つ手やパイプをくわえている口、山高帽やディアストーカーから覗くお顔がモフモフの質感。そのシュールな光景に釘付けです。

　その名は、ハームズとモペスン——人間の名探偵たちは颯爽と、モフ界の探偵コンビの謎に迫ることにしました。

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　衝撃の事実——モフ界にも221Bが！　大家は何夫人？　果たして探偵業は繁盛しているのか——？　

　謎が深まるばかりのハームズ＆モペスン。戸口で記者に囲まれて、やれやれとばかりに（しかしちょっと嬉しそうに）ポーズを取る探偵コンビ。

　そののち、ペルメル街へ向かったふたり。道中の会話を盗み聞きしたところによれば、そもそもディオゲネス・クラブ（猫会議場）はモフ界発祥との衝撃の事実がふたたび！　モフ界に潜入捜査に来た人間（マイクロフト！）が猫会議の様子にたいへん感銘を受け、適度な距離を保って集合、しかし私語厳禁でひとり時間を楽しむ理想郷を人間界に導入したとのこと。

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　ハームズは高貴な生まれ。ノブレス・オブリージュにより、探偵業を営んでいることが判明。おおらかさ、心の広さは宇宙大。モフモフで依頼人を包み、モフモフで捜査、モフモフで犯人へとたどり着く手法はモフ界に名を轟かす。
　相棒のモペスンはワーキング・クラス出身。クールな不良たちが住む地域で、オドオド震えていたところを騎士ハームズが心を寄せ、探偵業の相棒としてヘッドハンティング。モフ界の名探偵コンビが爆誕した。

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　ふたりの毎日は、寝ることと食べることで大忙し。探偵業はその合間に引き受けている模様。起きたばかりのハームズですが、もう寝ることを考え、新聞も手から落っこちそう。モペスンは大のミルクティ好き。濃い紅茶にたっぷりのミルクでご満悦。スコーンも食べ終えました。さて、夕食はどうしましょうか？

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　そろそろモーヴ街に戻る時間。潜入捜査を終えて、人間の探偵たちは謎深まるモフ界の精鋭コンビにいっそう興味シンシン。
　モフ界はふたりがいれば安泰。また会う日まで！

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　「金田アツ子の温室」に戻ってくるとそこは、いつもの植物や薬草が咲き乱れる場所に。植木鉢と共に絵筆が並ぶ机には、例のモフ界探偵コンビのこけしが！
　今見てきたハームズとモペスンの活躍ぶりが生き生きと描かれ、威厳ある装いとモフモフ感も完璧に写されています。

　その横には人間の探偵たちの物語を記した書物と共に、一枚のメモが置かれていました。「Halmes」「Moppetson」——どうやら、扉の奥に広がっていたモフ界は、温室の主の綴りの間違いから生まれた世界だったようです。

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